「本作を一言でいえば「女の人生、いろいろあるわ」です」愛と追憶の日々 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
本作を一言でいえば「女の人生、いろいろあるわ」です
名作です!
アカデミー作品賞はじめ数々の賞に輝くのは当然と納得の作品です
時系列を整理してみるとこうなります
オーロラの夫の葬式のときエマは10歳に見えます、ということは冒頭の赤ちゃんが息をしてないわ!騒動のオーロラはまだ20歳くらいでしょう
序盤のオーロラがエマの結婚を反対していた時の歳は多分40歳ぐらい
サムが仕事を得てヒューストンから1000キロも離れたアイオワ州デモインへエマ一家が引っ越した時、長男テディは2歳くらいです
なのでオーロラは43歳
その頃、元宇宙飛行士のギャレットが隣に引っ越しして来てオーロラと最悪の出会いをします
彼が元宇宙飛行士なんて特異な設定なのは、勘違いじじいであるということを一発で表現できるからだと思います
もちろん舞台はヒューストン
宇宙センターがある土地柄ですから元宇宙飛行士が登場してもおかしくありません
エマとサムが答案採点がどうたらで夫婦喧嘩するのは次男がまだ赤ちゃんなのでその1年後のこと
オーロラは44歳
このとき長男テディは3歳くらいですが、父親がすぐ帰ってきて母親と二階に上がると空気を読んでジャンパーを着て寒い外で時間をつぶそうとします
常に両親の顔色を伺うような子供になってしまうわけです
エマが3人目を妊娠したからお金を貸してとオーロラに電話してきた時は、オーロラは50歳のはず
というのも暗転して一番下のまだ新生児のメラニーが熱をだしたシーンで、長男テディ10歳くらい、次男トミーは7歳くらいだったからです
その後のシーンでオーロラは50歳の誕生パーティーをしていますが、本当は52歳だろとオーロラファンクラブの医者のおじいちゃんから指摘されています
ちやほやしてくれる男達に囲まれても、枯れたおじいちゃんばかりじゃ面白くもない
まだ脂ぎった男のままのギャレットの方が、いやらしくてもましかとため息がでるのです
その夜、結局もやもやしてギャレットの家にいって翌日ランチデートする約束をとりつけます
なんとそのランチデートの夜ベッドインしちゃってます
いくつになっても女には愛が必要なんです
とても幸せそうです
サムと女子大生ジャニスとの浮気疑惑でエマが里帰りしたのはその直後の夏です
エマはサムを責めますが、自分の浮気は棚に上げています
彼女の中ではそうなったのもサムのせいなのでしょう
秋にはデモインに戻って、家族でデモインから西に500キロのネブラスカ州カーニーに引っ越しします
その頃オーロラはギャレットから別れを告げられますから、3ヶ月くらいしか持たなかった訳です
ジャニスが、なんとカーニーにまで追いかけて来ているのを見つけたのはメラニーが1歳くらいの時
オーロラは53歳になっています
エマの病気が見つかって、ニューヨークに行ったときに友達の友達に見せたメラニーの写真は2歳くらいに見えました
ということは、その時オーロラは54歳になっています
ギャレットがオーロラがエマの看病で泊まっているホテルのプールに現れて、オーロラを抱きしめるのも、メラニーの成長をみるとそのすぐあとぐらいのことです
お葬式のシーンでメラニーは3歳ぐらいにみえます
本当に可愛い盛りです
目の中に入れても痛くないのはこんな姿の事です
長男テディ13歳、次男トミーは10歳くらい
テディはいっちょ前にスーツを着ています
反抗期にはいりかけのようです
トミーはとてもしっかりした優しい男の子に育っています
ということはオーロラ55歳です
オーロラの40歳から55歳の15年間
そして彼女の娘エマの20歳から35歳の15年間
この母娘の二人をオーバーラップして女性の人生が濃密に描かれています
夫が若く死んでしまい30歳から40歳はエマとの女二人の生活
エマが嫁に行ってからは女一人の淋しい生活
夫の遺産がかなりあったようで、彼女は働きもせず綺麗な庭園のある素敵な家に優雅に住んでいます
シャーリー・マクレーン 49歳
序盤は40歳頃ですから、少し若めのメイクとフリフリブラウスです
しかし終盤は55歳の役です
今の感覚からするとちょっと老け過ぎにみえます
わざとメイクでシワを逆に目立たせて年齢を強調しているようです
今なら美魔女は沢山いますから、もう少し綺麗に撮ったかも知れません
ラストシーン
彼女は3人の孫に囲まれています
この子達を立派に育てて大人にするまで死ねないわ
老けてる暇なんかないのよ
そう彼女は自分に言い聞かせています
その決意の固い表情で映画は終わるのです
恋愛して結婚したら女は終わり?
そうじゃなくて、女の長い人生はそこからが始まりなのです
それが本作のテーマだったと思います
本作を一言でいえば「女の人生、いろいろあるわ」です
母と娘、そしてきっと幼い孫娘にも繋がっていく糸、もっとその先にもつながっていくはず
女性が家族の絆を繋いでいくのです
男達はその周りでウロウロしているだけです
オーロラの死別した夫のように、お金をしっかり稼いで女達が幸せに暮らしていけるようにする
それだけが男の役割なのかもしれません
シャーリー・マクレーンの演じるオーロラがとても魅力的です
このような女性がみじかにいて、自分ももし独り身であったなら、きっとオーロラファンクラブのメンバーになっているだろうなあと思いました
それかギャレットみたいな勘違いじじいになっているかも知れません
サムはエマを失って、若い女子大生ジャニスと再婚するのかも知れません
ギャレットなら羨ましいなと言うでしょう
でもエマとの15年間の思い出と3人の子供達
人生の宝は手放してまた一からの人生をスタートです
女は積み重ねていくのに、男はこうです
離婚したり死別して独り身になった男性の寿命は短いらしいです
愛と追憶の日々
この素晴らしい邦題はもしかしたら、残されたサムの事を言っていたのかも知れませんね