「己の選べる人生は一つだけ。だから、別の道を歩む友人が大切に…」愛と喝采の日々 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
己の選べる人生は一つだけ。だから、別の道を歩む友人が大切に…
「マグノリアの花たち」のTV放映を機に、
「グッバイガール」そしてこの作品と、
まとめて、ハーバート・ロス作品に
触れてみた。
実は、期待していた「グッバイガール」が、
再鑑賞では何故か心に響かなかった中、
当作品を観ることになったが、
キネマ旬報ベストテンでは、
同じ年に公開の「グッバイ…」が第3位、
そして、この「愛と喝采…」は第6位。
この作品、世代を越えた反復描写のためと、
バレエファンにはたまらないプレゼント
なのかも知れないが、
主題とはやや距離のあるバリニシコフの
バレエを含む登場シーンが多過ぎる感じ
があり、ここは主人公二人の描写に
もっとウエイトを置くべきでは、と
物語的には気になったものの、
しかし、それでも、私としては、
ロス監督のベストワンと思う充分な作品
に感じた。
ところで、西岸良平のマンガにも、
似た設定の話があったことを思い出す。
双子の姉妹がいて、姉は快活で仕事人間、
妹は大人しい家庭的な女性。
しかし、
仕事人間だった姉は結婚を機に専業主婦に、
家庭的だった妹は結婚はしたものの、
お相手を不慮の事故で失い、
仕事人間にならざるを得なくなるという
人生における逆転的展開で「愛と喝采…」
とは少し異なる内容ではあるが、
成り行き上、別々の道を歩みながらも、
お互いを理解し慈しむという点においては
似た内容だった。
さてこの映画の方は、正に、原題通り、
この作品は人生における
“ターニングポイント”での選択の物語。
そんな中での、友情や老いとの葛藤、
そして夫婦愛と親子愛なども
上手く散りばめられているように感じる。
己の人生は一つしか選べない。
ついつい、たられば的に手に出来なかった
別の生き方に思いを寄せてしまうのが常だ。
それが故に、異なる別の道を歩む友人は
自分にとっての大切な存在。
そんなことを改めて教えてくれる
胸が熱くなる作品だった。