「キューブリック唯一の失敗作」アイズ ワイド シャット ジョニーデブさんの映画レビュー(感想・評価)
キューブリック唯一の失敗作
スタンリー・キューブリックは、私の一番好きな監督であり、「2001年宇宙の旅」と「バリー・リンドン」は満点の評価を付けたが、この遺作については、彼の唯一の失敗作であるとしか言いようがない。
まず、相変わらず映像は綺麗で、特にこの映画では室内のライティングと構図及びカメラワークが絶妙に素晴らしく、ストーリーもミステリータッチで展開していき、中盤まではかなり映画の中に引き込まれてしまった。
だが、どうなるのかとゾクゾクして期待に胸が膨らんだのに、結局何も起こらず・・・とは言い過ぎかもしれないが、何か肩透かしを食らったような感じで終わってしまう。
音楽もミステリーの音楽としては向いているかもしれないが、B級ミステリー映画の音楽のようでもあり、不協和音のようにも聞こえるピアノの音が、個人的にはあまり心地よくなかった。 前述の2作品と「時計仕掛けのオレンジ」の音楽が最高に良かったので、何かこの映画では手を抜いたような気さえする。
ツッコミどころもいくつかある。一番疑問に思うのは、同級生だったピアニストが、秘密の屋敷へ入るためのパスワードを、ナプキンにメモするところだ。フィデリオだったと思うが、その程度のパスワードだったらメモをする必要はないんじゃないかな。ひとりでいる時だったらまだしも、大事なパスワードをトム・クルーズが見てる前で書くのはあり得ないと思う。暗に、トム・クルーズを誘っているようなもの(もしかして実際に誘っていたのかもしれない?)。あと、相手が医者であっても、カフェのウェイトレスがお客(例のピアニスト)の泊まってるホテルを教えたり、ホテルの受付係が宿泊客が何時にチェックアウトしたとかどんな様子だったとかベラベラ喋るのは、この時代であっても、個人情報の秘守義務から言ってありえないと思う。
そもそも意味深なタイトル(原題:大きく閉じた目)は何を言いたかったのか?映画評論家の町山智浩氏によると、結婚式のときの名文句として言われている言葉(以下のとおり)をもじったものらしい、
Keep your eyes wide open before marriage,and half shut afterwards.