マッハ'78のレビュー・感想・評価
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カースタント合戦
最初から最後まで車尽くし、余りのカークラッシュ・シーンの連続に車が気の毒に思えるほどだが、死人、怪我人は出てこないのは流石プロ・ドライバー(ただ、本当だったかは不明)。企画・出演は日本のカースタントドライバー、元クロスレーシング代表の黒子昭氏だからハイライトだがセミドキュメント風のリアリテエィたっぷりのカーアクション映画。最後の黒子の海へのポルシェでのダイビングも実話の世界記録達成シーン。
流石にカーアクションだけでは映画にならないと思ったのかリンダと大友のロマンス・エピソードを入れていましたが恋愛成就ならず、車が主役だから、おまけ程度でしたね。普通車に加えてスーパーカーにクラシックカー、バスにトラック、バギーにオートバイと出て来た主な車は54種、524台、クラッシュした車は359台だそうだ。
車好きには堪らないでしょうね、ただ、公道でレースもどきはいけないし普段は安全運転を心がけてこそプロのレーサー、そこのところはアクション・エンタメに寄せ過ぎており、良い子は観ても真似をしないようにと願うばかりです。
劇的アクションだけでは映画は成立しないことの好例
劇的なアクション描写が次から次へと巻き起こっているはずなのに見ていてまったく面白くない。俺が車に全く興味がないからというのももちろんあるだろうけど、『ワイルド・スピード』も『激突!』も『バニシング・ポイント』も『いつかギラギラする日』も好きな俺が本作を好きになれない理由はないはずだ。なぜ本作はここまで徹底的につまらないのか?
第一に、本作では物語的緩急の「緩」と「急」が完全に寸断されていること。「急」に関しては後述するが、とにかく「緩」にあたるドラマパートが安っぽい。安っぽいだけならまだしもセリフ回しがいちいちポエティックなものだからうんざりする。登場人物の眼差しを追っていれば一秒で理解できるような関係性をいちいち周りくどいポエムで虚飾する意味はまったくない。言わずもがな無骨なカーアクションと甘ったるいメロドラマは逆方向に引き裂かれ、互いにまったく緊張関係のない個別の物語として散在してしまっている。
第二に、メインであるカーアクションが酷いこと。確かにそれらは物理学的現象としては面白いが、それを追うカメラに決定的に気迫がない。適当に何台かカメラを設置して、その中から写りのいいものをチョイスしているだけ。「これが撮りたい」「こう撮りたい」という意志が感じられない画はバラエティ番組の「衝撃映像100連発!」にはなっても映画にはなり得ない。衝突や爆発の瞬間をいちいちスローモーションで見せつける演出も愚の骨頂だ。
極めつけはラストの「世界新記録達成!」の字幕。映画であることよりも現実的な栄光に舵を切ってしまったその瞬間に本作は映画としての価値を完全に喪失したといえる。いや、まあ、スゴい偉業を達成できて嬉しいのはわかるんだけど、それを劇中で堂々と顕示しちゃうのはあまりにも矜持がなさすぎるだろ…
いかにもカルト映画っぽいタイトルとビジュアルに惹かれ鑑賞してみたが、マジで何の意味もなかった。車それ自体に興味がある人以外は本当に見ないほうがいいと思う。『死霊の盆踊り』や『シャーケンシュタイン』のような「ネタになるクソ映画」にさえ飽き飽きした飽食の御仁がおられるならば止めはしませんが…
今、見たい。
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