はだしのゲン・2のレビュー・感想・評価
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人間は神より強いという真実を描く
1945年8月6日午前8時15分の広島市街への原子爆弾による空襲で生き残った子供たちのその後の生活を描いた話。
点数2.5。お勧めしません。漫画版のエピソードを適当に抜き出しただけなのでまとまりがなくバラバラなストーリーの寄せ集めの作品。面白くない。起承転結がなく盛り上がりに欠け唐突に話が終わる。戦争と原爆に打ちのめされた人々はそのほとんどが心が荒んでおり他人を思いやる余裕がないので見ていて悲しくなる。
この作品で描かれる敗戦直後の日本の荒廃した世界には神や仏などはいないかのようである。現実でも新興宗教が流行る時代は世の中が豊かになって人々の心に余裕ができる時代である。本作品のような戦後の荒廃した社会には神も仏も存在しないがこういう時代を生きる残るために努力する人間はとても強いと感じた。人類は自分が思っている以上に潜在能力が高く強いと思った。本作品からは戦争の本当の恐ろしさは空襲や侵略の恐怖ではないということを知ることができる。戦争の本当の恐ろしさは平和な社会のシステムが崩壊してしまうことにより国民どうしで憎しみ合ってしまうことだ。一度崩壊した平和な社会のシステムは完全な姿では元には戻らない。主人公の少年ゲンは仲間のリュウタとともに平和な社会のシステムが崩壊した世界で逃げることもどうしようもできないギリギリの人生の戦いを戦って生き抜きぬいていく。
この映画の良い所は戦争のリアルを飾らずに描いていること。この映画の悪い所は悪い言葉使い、暴力シーンなどがオブラードに包むことなく表現されているので見ていて気持ちのいいものではないこと。ストーリーが原作漫画のエピソードをつなげたものなので起承転結がはっきりせず面白くない。唐突に物語が終わる。終わり方が盛り上がりもなくあっけない。勝子の顔のやけど跡をゲンが舌で舐めるシーンは原作通りだが手を握る程度に穏やかにリメイクしたほうがよいと思った。今見ると衝撃的なシーンが多い。
はだしのゲンは漫画が有名だ。原爆被害を実際に体験した作者が書いているので非常に臨場感があり引き込まれる漫画作品だ。しかし戦後の反戦教育は多くの功罪を残した。原子爆弾を神のように恐れるあまり戦うことが罪の宗教のようになってしまった。戦勝国といわれるアメリカでも兵器を作り続けないといけない戦勝国の呪いがいまだにアメリカ国民を苦しめ続けている。戦争にはほんとうの勝ち負けはないのである。もうひとつの戦争の恐ろしさは民衆を殺戮できる能力をもった兵器がいつまでも消えずに残ること、一度開発された兵器はより強力な兵器に上書きされるまで残る。原子爆弾などどの兵器にも探せば弱点はある。恐れすぎない為には冷静になって調べる姿勢が必要である。超パワーや奇跡や超能力が描かれるアニメ作品が多いが戦争でどうしようもできない思いをした戦後の先人たちが考えたアイデアが超パワーや奇跡や超能力であったのだろうと思うとドラゴンボールや北斗の拳やAKIRAをいままでとは違った思いで見ることができる。
本作品は戦争の悲惨さを訴えたい作品であると思うが戦争による精神的、経済的、肉体的な痛みは当事者でないと本当には理解できないのであろう。現代兵器は相手の顔が見えない遠距離から攻撃できるので傷つけられる人の痛みがわからない。ネットの誹謗中傷もそうであるが人の痛みがわかりにくい社会になってゆくのは遺憾である。
視聴:液晶テレビ(有料配信アニメタイムズ) 初視聴日:2025年7月5日 視聴回数:1(早送りあり) 視聴人員:1(一人で見た)
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