「キャスティングが良い、一人で観るのは怖かったな、心理的にも迫るものが有る」MAKOTO Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
キャスティングが良い、一人で観るのは怖かったな、心理的にも迫るものが有る
君塚良一と言えばTVドラマは勿論のこと、映画ファンであるなら邦画界のヒット作の歴史を塗り替え、常に新しい作品創りへと意欲を燃やし続けている作家である。
そしてその彼の代表作と言えば、言わずと知れた、その記録更新した超大ヒット作「踊る大捜査線」の産みの親だ。
その君塚良一氏が監督・脚本を務めた作品「MAKOTO」が面白くない筈はないのだが、ミステリーホラー映画と言う点で観るのを永年控えていた。
この映画の主人公である、監察医・東山紀之演じる真言は、死んだ人の霊が見えて、その上その霊が語りかけてくる事が解ると言う霊媒体質と言う特殊体質のために、様々に起こる謎の事件を解決へと導いていく。
単に監察医として医学的に解剖し、死因の特定をすると言う事に留まらず、霊の語る事を、その遺族に伝えると言う役割も果たすと言う不思議な任務を果たしている、その男の責務とその彼にだけ許されている特殊能力を持っているが故に、経験しなければならない、悲劇を描き出しているのは、お話としては、とても面白いのだが・・・
謎の死を遂げた浮かばれない霊の姿を映像で見せるので、映像の全体像はトーンが暗いし、
如何にも、怪しげで恐怖感が音も無く背後から忍び寄って来るような陰湿な、日本映画ならではのホラー雰囲気は充分堪能出来るのだが、その分私は恐くてたまらなかった。私はこの真言程の優れた特殊能力では無いが、子供の頃やはり霊の姿が見えたりして、恐い思いをしたので、これはキツイ映画だった。今でも交通事故などがあった処はその亡くなった被害者の姿である霊は見えないが殺気を感じる事はある、何か嫌な気持ちがして振り返る交差点には必ず花束が供えられていると言う具合であるからだ。
それ故、真事のような人の苦労は、とうてい人事では済まされない思いも有るし、冷静にこの作品を観ることはキツかった。
韓国映画で昔「カル」と言うのがあったが、映像的な雰囲気は似ている気がしたが、君塚氏が脚本を書いているだけあって、只のホラー映画ではないし、謎ときだけのミステリーでもないのだ。映画の根底には、君塚さんが伝えようとしているテーマはきちんと横たわっているのだが、それにしても、気持ちが悪かったのだ。
そんな特殊能力者で地味で真面目な青年監察医の役を東山さんは、見事に演じていたと思うが、でも映画全体の重く、暗く、恐い雰囲気の映像の中にあって、その恐怖を和らげてくれる存在が、哀川翔さんの存在だった。哀川さんはどちらかと言えばVシネマの帝王的なイメージが強いので、こう言った刑事ものになると強面な役になるのかな?と思っていたのだが、今回は全く違うキャラで良い味が出ていて驚かされた。
今回の作品に出会って、役者哀川翔の面白さに気がついた。彼はコメディー映画作品も向いている人だなって理解しました。室井滋さん、別所哲也さん佐野史郎さん、小堺一機さんといい、キャスティングが上手いのも、この君塚さんの作品であればこそ実現出来た事なのだろう。ミステリーや、ホラー好きな人にはお薦めの作品です!しかし一人で観るのは恐いので、2人以上で観る事をお薦めします!私が恐がり過ぎなのか???