「これってホラーですよね?」隣人13号 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
これってホラーですよね?
狼男の型 つまり犯人は実は私だったという型で、これが誰にでも見えるリアルにすることでホラー要素の強い作品になっている。
ミステリーに特化すると誰が犯人なのかに焦点が絞られるが、ホラーにすることで作り手がその背後にあるメッセージ性を表現しやすくなる。
この作品はホラーとミステリーを合わせたようなものになっている。
作品では少々わかりにくいが、主人公の村崎十二がいじめられたのがきっかけで卒業写真撮影に間に合わず一人だけ欠席者のように丸の中に写真が入れられた事実が、村崎の回想の中で彼の小さな一矢をいじめっ子赤井にぶつけたことで、彼はみんなと一緒に卒業写真に載る世界を作ることになる。
過去と現在は同居するというパラレルワールド的観点で描いている点が、救いとなっている。
つまり、今現在を変えることで過去の認識が変わるという真理を、過去そのものを変えるという風に描いている。
冒頭自分自身が作った心の闇の中に幽閉されていた主人公は、それを怒りに変えて作り出したもう一人の自分によってあたかも救い出されるようなシーンがあるが、あれは救い出されたのではなく、その怒りの人物に「私」という主導権を明け渡したのだろう。
村崎はアパートに引っ越してくるが、それは自分が作り出した陰によって周到に準備されていたと考える。
つまりとうとうその時がやってきて、村崎の別人格の方が主導権を持っていることでいつでも別人格になれる。だからあのアパートへ引っ越し、続けて赤井一家も引っ越してきた。
すべてが影の計算だった。
やがて子供を預かるが、殺すことも可能だったし実際実行しそうになる。影がなぜそうしなかったのかは不明だが、何故か小学校で赤井を待ち伏せている。
村崎が影に主導権を奪われていながらも、彼は回想の中で当時の赤井を花瓶で殴る。
そして目の前の現実では、赤井は影に当時のことを謝罪する。
この瞬間影の怒りが大きく縮小した。
子供にまだ息があったのでおそらく助かるのだろう。
それにしても、
いじめられた方はこの作品のようにずっとずっと先までそのことを覚えているのだろう。
この作品はその視点で描かれている。
同時に「やり返す小さな勇気を持ちなさい」と伝えたいのだろう。
一矢報いたあの日の村崎は、工事中のあのアパートの13号室に不気味なものを見たことで、そこにはもう行かないと思ったことだろう。
つまり書き換えられた歴史では、村崎は影に「私」の主導権を渡さないし、その危機も向かえないことになる。
若干ややこしさがあるが、そこまで作りこまれた作品だ。
復讐は後になればなるほど恨みが膨れ上がって恐ろしいことになる。
いまいじめられているのであれば、小さな勇気で相手に一矢報いてみよう。
メッセージ性の強い作品だった。