劇場公開日 2005年6月4日

電車男のレビュー・感想・評価

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3.5とてもよくできた恋愛映画

2010年5月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

萌える

拙ブログより抜粋で。
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 映画化にあたっては、不特定多数の名無しさんが出入りするネット掲示板の住人を、電車男自身を含め8人に絞って展開させ、また本来混沌として誹謗中傷や下ネタも絶えない書き込みを、性善説に則った真摯な投稿だけに絞ってある。
 当然それらによってスポイルされてしまった“ネット掲示板らしさ”もあるのだが、純愛映画としての方向性を正しく交通整理するためには必要な作業だったろうし、それは成功していると思う。
 絞りに絞った個々の名無しさんたちの映画版独自のキャラクター設定も、名無しさんゆえだろう、清いほどにあえて深く掘り下げていない。それでいて最後に気の効いたエピソードをそれぞれに添えて、映画の終幕の心地よさの一助としているあたり抜かりがない。

 山田孝之演じる主役の電車男は一見すると紋切り型のヲタク像なのだが、決して“不細工”でない山田孝之の計算ずくの大袈裟な好演が、彼を“モテナイ男”ではなく“自信のない男”に転じさせていて、この映画が描かんとする“応援”の対象としての電車男像を際立たせている。

 対する中谷美紀演じるエルメスはさらに象徴的。
 エルメスは電車男にとっては高嶺の花の理想的な女性像で、名無しさんたちにとっては、匿名の電車男から伝え聞くだけの、想像するしかない存在。演出的にも名無しさんたち以上にその背景や生活観を排した描き方で、ミステリアス。
 中谷美紀は、そんな彼女の“つかみ所のなさ”と同時に、クライマックスへとつながる、電車男とは一枚も二枚も上手な“大人の女性”を、山田孝之と対照的な抑えた芝居でうまく演じ切っている。
 ちなみに原作には、電車男からの「エルメスは中谷美紀似」との意味の投稿があり、そこからのなんのひねりもないキャスティングなんだろうが、結果的には原作からイメージされるエルメス像とは一味違った、しかも原作以上のエルメスになったと思う。
 彼女の存在感は圧倒的で、映画が終わって振り返ると、ただ微笑んでいるだけでも神々しくすらある。

 正直、映画の中盤過ぎまで、山田孝之の電車男と中谷美紀のエルメスでは歳が離れ過ぎではないかと違和感を感じていたのだが、いやはやどうして、原作とは変えてあるクライマックス手前、電車男がひときわダメ男に落ち、エルメスが大人の切れ味を見せた辺りから、この二人だからこそのこの結末、それまでの成り行きと合点がいった。

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かみぃ