「内容はメロドラマだが、プロデュースのうまさで学ぶことが多い」ALWAYS 三丁目の夕日 あふろざむらいさんの映画レビュー(感想・評価)
内容はメロドラマだが、プロデュースのうまさで学ぶことが多い
もともとは、昭和三十年代を舞台にした映画を作りたいというプロデューサーの願望があったようだ。東京タワーが少しずつ完成していく過程の感動を伝えたいという想いがあったと、Wikipediaに書いてある。
結果として、その時代に一番興味を持つであろう団塊の世代向けをターゲットにした作品となった。
舞台になっているのは1958年。
団塊の世代(1947年~1949年生まれ)が10歳くらいの頃の時代設定ということになる。
現実の団塊の世代は2005年時点では60歳手前。
働いている人は、定年を目前に控えており、余生のことを考える、もしくはもう余生がはじまっているという意識かもしれない。
そんなタイミングで子ども時代を舞台にした映画が公開される。
そうすると、やはり観にいきたくなるだろう。
これはうまく考えたものだなと思う。
ノスタルジックなメロドラマで、正直いって陳腐なのだが、映像表現のわかりやすさはさすがだ。俳優陣も誇張した演技でドタバタ喜劇を盛り上げる。
NHKのドラマなどを観ていると、大げさな感情表現が目立つ。個人的にはあれが嫌なのだが、よくよく考えてみると、あれは俳優が下手というよりは、誰が観ても間違いなく情報が伝わるようになっているのだろう。そのあたりは国営放送ならではの配慮だなと思う。
本作はNHKの番組ではないのだが、演技の誇張という点で似ていると思う。
本作は山崎貴監督の出世作であるが、「ゴジラ-1.0」や「ドラえもん」にもこのわかりやすさは継承されている。観客が欲しがっている映像をよく理解している人なのだろうと思う。
山崎監督は、彼自身の個性という点ではなにをしたいのかよく見えてこない人ではあるのだが、徹底的にわかりやすさにこだわるという点において学ぶことが多い。