レディ・ジョーカーのレビュー・感想・評価
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予習必須!
「あんたたちには、わかりゃしないよ」というコピー。観客にケンカを売っているような気がした。そしてそのケンカを買ってしまった。。。
原作は素晴らしいんだろうなぁ、と想像できる映画でした。そしてその想像力は、映画を‘読む’にあたっても必要不可欠の重要なものだった思います。レディ・ジョーカーの5人の設定は、社会的弱者にスポットを当てて、不条理な世の中に対して文句も愚痴も言わずに耐え忍んでコツコツと生きる男たちがその鬱憤を一気に吐いてしまうという、まさしく社会派ミステリーの一級品の原作なのでしょう。この設定だけで満足しました。
さて、ストーリーが淡々と展開します。それも全て唐突に展開します。理由なんて必要ありません。予習さえしておけば大丈夫なのですから・・・しかし、原作を既読の人にはとてもわかりやすいと思われるのですが、予習をしなかった人には‘眠気’という罰が与えられます。私はかろうじて特集チラシを読んだおかげで眠気地獄からは開放されました。しかも“グリコ・森永事件”の報道に関して、当時推理小説好きであったおかげで関心が高かったため、この映画も比較しながら楽しむことができました。
しかし、しかしである!心情描写も疎かにして唐突に自殺する人々!わかりません。わかりませんよ、この人たちの行動。脚本家も大変だったと思いますよ。原作が立派すぎると、映画として不要な部分を大胆にカットするのも畏れ多いでしょうからね。そして、評価が下がる原因を作った演技力の問題。菅野美穂が喋りだした途端、呆気にとられ帰りたくなりました。徳重聡もダメダメ君です。そして関西弁が得意なはずの大杉漣も今回は台詞を噛みそうな雰囲気。意外と良かったのは吉川晃司でしょうか。
だめな点ばかり言ってもいられません。美術は良かったと思いますよ。社長室の壁にある歴代ラガービールのラベルや、昭和初期を思わせるポスター、そして一番良かったのは、哀愁さえ漂う「くすりのモノイ」の店舗でした。ちなみに、石川県で“ものい”と言うと、体がだるいことを意味します。
【2004年12月映画館にて】
【2020.11月。日本映画専門チャンネルにて16年ぶりの鑑賞】
いきなりの誘拐・・・手口、時間経過、さっぱりわからないまま裏取引によって解放。この展開が予習なしで観ると混乱を招くのだろう。この前に「NHKスペシャル グリコ・森永事件」を視聴したので理解ができました。謎に包まれた社長誘拐がほんの序章にすぎなかったこと。警察の捜査方法もそうだ(現行犯逮捕じゃないとダメだとか、現金輸送車追尾とか)。犯人の目的を明らかにしない効果だったようです。ただ、『罪の声』でも感じた犯人側の動機だけは実際の事件とは違うような気がしてならない・・・
部落問題、在日差別などの根強いヘイト、レイシズム、それに社会的弱者の問題などはコロナ禍の現在の方が理解しやすいかもしれません。そして警察内部の闇の部分をあぶり出す作風も重いけど面白い。それでもやっぱり人物描写がイマイチ。詰め込み過ぎだなぁ・・・最後のレディの微笑みに救われた。
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