「公開当時の世界観を壊さず、絶妙な4Kリマスター。作品としては「ドラマ」より「見せ場」」ゴジラ FINAL WARS 菊千代さんの映画レビュー(感想・評価)
公開当時の世界観を壊さず、絶妙な4Kリマスター。作品としては「ドラマ」より「見せ場」
ゴジラシアターで4K(new)リマスター鑑賞。
ゴジラファンの間でも賛否が一番分かれる作品だが、IMAX大画面で観たいゴジラ作品の一つ、当時の独特な色調を残しながらの大スクリーンリマスター版はテレビでは味わえない感動があった。
正に大スクリーンで観てこその作品。
制作富山省吾、監督北村龍平、特技浅田英一、音楽キースエマーソン、造形若狭新一、デザインワークス西川伸司他、ゴジラ北川努
一言で言うと、ミレニアム版昭和プロレスアクション特撮ゴジラ。
★独自採点(70):ゴジラ生誕50周年、ミニチュアや着ぐるみゴジラとしては最後かつゴジラ映画の集大成・最終作として製作された作品、東宝特撮で数々の名シーンを作り上げていた東宝大プール最後の撮影となった。
通称:ファイナルゴジ/FWゴジ(100m)
・登場怪獣:マンダ・ガイガン・ラドン・アンギラス・キングシーサー・カマキラス・クモンガ・ミニラ・エビラ・モスラ・ヘドラ・モンスターX→カイザーギドラ・ジラ(CG)
上映時間:125分
・上陸地:南極→シドニー→ニューギニア(オーストラリア)→真鶴→富士山麓→東京
・防衛:HJ・M機関
・破壊地:東京・南極・上海・NY・東海コンビナート・パリ
・特撮爆破炎上破壊規模S
・市街地ミニチュアセットスケール(東京は廃墟設定なので統一スケールは無いが、基本1/50、アンギラスが暴れる上海の1/25でかなり精巧な造り)
ファイナルウォーズと言う事で色んな怪獣が、世界のあちらこちらを破壊しまくり炎上しまくる。怪獣だけではなく新旧轟天号も登場。
出演者も主演松岡昌宏始め、脇役には往年のゴジラ俳優宝田明・水野久美・佐原健二、小美人に長澤まさみなど豪華。アナウンサー役で笠井信輔アナでは無く羽鳥慎一アナが出演。
アクション系監督北村龍平の目指すゴジラはどちらかと言えば仮面ライダー的ノリでシリーズ屈指の異色作。とにかく爆破も破壊も、やりたい放題で製作は大変だったとの話もあるが、作ってるスタッフは意外と楽しかったんじゃ無いだろうか。
アクションや特撮シーン、映像も独特、それまでの昭和・平成・ミレニアムゴジラとは一線を画す作りはとにかく賛否両論で、ゴジラが本当にファイナルになってしまうのでは無いかと危惧された面もあったが(観客動員数当時歴代ゴジラ28作品中ワースト3位の100万人)、その後シン・ゴジラで見事に復活できた時は本当に安心した。
監督曰く全米NO.1を目指したとの事だが、本気だったのだろうか?
製作の富山省吾も「徹底的に娯楽映画を作る、そしてハリウッドにコンプレックスなく喧嘩打ってやろうじゃないかと言える新しいクリエーターとして北村監督を選んだ」と語る様に今までには無いゴジラ映画にはなった。ただ、ドラマ性よりも10秒に一回見せ場を作る、とのコメントの通り見せ場は数多いのだが、作品全体としては少々お腹いっぱい感。
特撮は盛りだくさん、着ぐるみ怪獣もミニチュアセットも多いのでどのシーンも見せ場が続く。ジラのみCGだがその他は特撮実写、ただしオープニング以降ゴジラ再登場までだいぶ時間かかり、やっと南極の氷の中から天に向かって雄叫びをあげるのが69‘後、ゴジラ映画なのに中々ゴジラが登場しないのがこの作品最大の難点なのではなかろうか。
ゴジラ&怪獣アクションは前半・後半で全く異なる。
ゴジラ登場後オーストラリアでジラと対戦、ゴジラはあっさりジラを倒しX星人北村一輝が「マグロ食ってる様じゃダメだな」とエメゴジを揶揄、その後ニューギニアでクモンガをハンマー投げして真鶴に上陸するとカマキラスは虫ケラの様に瞬殺。
そして中盤の見せ所、富士山山麓でアンギラス・キングシーサー・ラドンとの対戦は昭和ゴジラプロレスを圧倒的に上回る超(笑)名場面!ゴジラがジャンプからのまるでガメラなスライドランディング、走るキングシーサーがタイガーマスクばりの山を使ってのフライング・ボディ・アタック、俊足キングシーサーが、ボールになったアンギラスをボレーシュートし、ゴジラが横っ飛びで飛びつく。もうゴジラ映画なのか訳がわからぬままの物凄い格闘だが、ツボにハマると面白い。続いて東京湾になんの脈力も無く出てきたヘドラ・エビラをこれまた放射熱線で瞬殺。この辺までは、もろ昭和プロレスゴジラ。
怒涛の怪獣プロレスの後ラスト35’は急に雰囲気が変わり、ナイトシーン妖星ゴラスとともに現れたモンスターX登場から、改造ガイガンとのデスマッチ。モンスターXがカイザーギドラに変身するシーンなんかは見応え充分。
なんだかんだであっさりゴジラが勝利し、これまたなんの脈略もなく泉谷しげるが軽トラで運んできたミニラと共に帰っていく。
ここまでドラマに繋がり無いのも、なんか振り切ってる感があって嫌いじゃ無い。
今作品ゴジラ造形スーツは三体超えでアクション・メイン・弾着被弾とある。
残念なのは音楽。キース・エマーソンだがシンセサウンドが安っぽく、躍動感を出そうとしたのかわからないが映像と音楽が全然あってない(ビオンランテのすぎやまこういちもそうだが世界観壊しすぎ)。音楽よければもっと評価上位にきたかもしれない一作。