雲のむこう、約束の場所のレビュー・感想・評価
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君の名は
新海誠監督の「想い」を知りたくて仕方なくなった。
監督名で作品を探した。
彼の初めての長編もの。
ここにも明確な「君の名は」までの軌跡を確認できた。
物語になくてはならないものの一つと言ってもいいのが「恋愛」なのだろう。
新海監督の場合、「スピード」のような非日常の中で出会った男女ではなく、100%純粋なまま出会ったモノのカタチを表現している。
原型となったこの作品に込めているのは「サユリを救うのか、世界を救うのか?」どっちが大切なのかということだろうか。
世界は、文字通り世界だが、「私の世界」は「サユリを救うこと」だった。
この途方もない天秤こそ、監督が目指した「真実」なのかもしれない。
さて、
サユリとタクヤとヒロキ
この3人組という型
おそらく3人ともモテるはずだが、この3人という枠を形成すると、そこには明確な恋愛感情がなくなる。
そこにあるのは純粋な夢で、ヒコーキベラシーラを飛ばすことと、ユニオンの塔まで行くこと。
しかし、その約束した日以来突然消えてしまったサユリ
消えてしまった約束
見失った目標と、新しい生活 別々の道
先の戦争、つまり太平洋戦争で南北に分断されてしまった日本という不思議な設定
そこに隠されていた並行世界の謎解きの設定
このSFが物語の原動力となっているが、様々なことが隠されている。
サユリの祖父が設計したというユニオンの塔とサユリの睡眠の理由の解釈は難しい。
米日軍とユニオン軍 南北分断理由と開戦理由
並行世界と宇宙の夢と予知夢の関係
そもそもこの並行世界の解釈 当時はパラレルワールドと言わなかったのだろうか?
その不確かなものに対する「心」という言葉では明確化できないもの。
確かなものは目に見えるこの世界ではなく、目に見えない心で感じる世界こそ確かなものではないのか? と、監督は言いたいのだろう。
これが新開監督が作品を作り続ける原動力ではないのかなと思った。
さて、、
この物語では、サユリを目覚めさせることに成功した。
夢の中のサユリは、目覚めることを予期していたので、神様に目が覚めてもしばらくこのことを覚えていますようにと祈った。
そして彼女は、冒頭からいくつか挿入されていた「いつか何かを失う予感」の、「これからなくすものがわかった」と言った。
それはいったい何だったのだろう?
ここはおそらくこの作品で最も重要な部分のはず。
それは「ヒロキへの恋心」だったはずだ。
彼女にとってそれは言葉にさえできないほどの心の揺らぎで、その正体を彼女はずっと探していたのだと思われる。
ヒロキは当時の友情をずっと大事にしてきた。
仮にサユリがベラシーラで告白したとしても、ヒロキにはまだそれを受取る準備は出来ていなかったかもしれない。
そしてその「好き」という感情は、言いたかったことを忘れようが、必ずすぐに思い出すことになるのだろう。
そのお互いのタイミングこそ「神の仕業」なのかもしれない。
この物語には敵軍であるユニオンのことは一切描かれていない。
それは情報という意味において流れにくいということだろうが、「神の声」を使わなかったのは良かったと思う。
ただしそこには何かが隠されているはずだ。
あの宇宙エレベータのようなものがこの世界と並行世界を入れ替えているというのも不可思議な設定だったが、彼らはそれで何がしたかったのだろう?
それは、争いのない世界へ行きたかったのではないかと思ってしまう。
あの塔の爆破は並行世界への扉を潰し、この世界を維持し、サユリを目覚めさせたことがよかったように描かれていたが、実際にそれは何を意味したのだろうか?
タクヤはこの世界を救うと思い込んでいたが、本当に戦争のない世界にしたいと望んでいた蝦夷の希望、世界の希望を破壊したのではないのかとも思ってしまう。
この「実は」という部分がこの作品の魅力なのかもしれない。
いずれにしても、「私の世界」とは、この一般的な世界ではなく「私の見る世界」のことで、それはこの世界と「サユリ」とを天秤にかけてしまうだけの「価値」を、「私自身」が持っているということだろう。
この壮大な設定と物語
わからないことも多く、このSF設定の是非は残ってしまった。
しかしやるだけやらないことには、答えなど出るはずもない。
夢と現実との出会い
君の名は のまずめどき
このファンタジー的な邂逅に監督は現実を重ね合わせようとしたのだろう。
そんなことが、あるに違いない。
物語の原点
単純に面白かったし、考えさせられた。
あと何本か彼の作品を見ることで、彼の心の中の「La-la land」がわかるような気がした。
約束を果たして
観念的で変に難しい
難解なことに挑んだ新海誠監督
戦時下での三角関係
【並行世界、そして分断された日本の中での若き男女の切ない恋物語。SF要素を盛り込みつつ、美しい空を始めとした自然描写に、後年の新海誠作品群の萌芽を感じる作品。】
◆感想
・今作では、日本はユニオンが支配する北海道(蝦夷)と、アメリカの傘下にある青森以南が分断した形で描かれる。
第二次世界大戦、終戦前にロシアが樺太を奪還しそのまま北海道まで進軍していたら、日本も朝鮮半島と同じ運命を辿っていた事は、良く言われる事である。
今作では、その”もしも”を取り入れている。
並行世界として。
・理論物理学を基調としたSF用語が頻繁に台詞に入ってくるし、中学生のヒロキとタクヤとサユリの交流シーンから、イキナリ3年後の世界に物語は飛び、ヒロキとタクヤは別々の道を歩んでおり、且つサユリが眠り続けているという設定は、ナカナカに分かりにくい。
・だが、徐々に北海道(蝦夷)に聳える塔と、サユリが眠り続ける理由が開示されて行く様や、ユニオンとアメリカが交戦を始めた隙に、ヒロキは眠り続けるサユリをヴェラシーラに乗せて、”雲の向こうの約束の場所”に連れて行こうとするが・・。
<今作は、SF要素をふんだんに盛り込みながらも、若き男女の切ない恋を、美しい空を代表とした自然を背景に描いた作品である。
テーマ的に、新海誠監督のその後の大ヒットを重ねる諸作品の萌芽を感じる作品でもある。>
君の名。へと続く道を見た
新海作品の源流とも言える
南北に分断された日本を舞台にしたSF青春劇。
新海誠監督の長編初作品でもあります。
まずこの作品を再びスクリーンで観れたことが本当に嬉しい。
Filmarksさん、本当にありがとうございます。
「ほしのこえ」で度肝を抜かれ、この「雲のむこう」で心を掴まれたのを覚えています。
その美術に音楽がとにかく美しい。
こうしてみると、やはり天門サウンドの方がしっくりきますね。
座組的に難しいかとも思いますが、やはりもう一度タッグを組んだ作品が観たいものです。
アートボードもですが細かい演出が好きなんですよね。
今もなんですが電車内の描写がすごくて、ここで観た金属を泳ぐような光の粒は本当驚きました。
キャストも役者である吉岡秀隆と萩原聖人の声がすごい自然でした。
個人的に吉岡秀隆の声質好きなんですよね。
脇を固めるのも石塚運昇と井上和彦が良い仕事してます。
その二人が一献傾けるシーンも大好き。
モデルの酒場も好きなので、とても印象深いんですよ。
またあくまで自分の中でですが、「君の名は」以前の新海作品では唯一のハッピーエンドだと思っています。
それと公開当時も思いましたが、本作を再構築したものが「君の名は」に繋がっているのでしょう。
同じパーツがいくつもあるし、夢の中での再開ではその光の形も同じでした。
そうして迎える静かなラスト。
エンドロールとともに流れる川嶋あいの声もすごいフィットしてました。
やはり初期の頃にある、なんとも言えない儚さや切なさも良いんですよね。
新海作品の源流とも言える、大好きな作品です。
楽しい面白いより、良いものを観たという感想
『君の名は。』から新海作品に触れた人と、以前から知っている人とでは監督の作風に持つイメージがだいぶ違うのではないかと思っている
一貫して芸術ではなくエンタメを作り続けている監督ではあるが、『君の名は。』以前の作品群は「楽しい・面白い」よりも「良いものを観た」という感想のほうがしっくりくる
しかし監督の好むエッセンスには今にも昔にも通ずるものがある
今作を再観賞して改めてそう感じた
舞台は北海道(エゾと呼ばれている)とそれ以外で国が分断されたifの日本
メインになるのは青森の中学生三人組
彼らはエゾにそびえ立つ謎の巨大な塔に行くことを目標に自力で小型飛行機を組み立てている
ifやSF設定でセカイ系とくくられる今作だが大事なのはそこではない
あくまでも「見えるけれど届かない目的」であったり「失いたくないのにどうしようもない大切なもの」を具現化するための設定である
話題になったから見てみたけどしっくり来なかったというあなた。過去の作品にも触れてみるのはいかがだろうか?
「良い」ものが見られるかもしれないですよ
壮大な話なのにどこか閉じた作風、この時代に流行ったいわゆるセカイ系...
新海誠作品の原点を感じたが娯楽作としては・・・
2024年劇場鑑賞113本目。
リバイバルなのでパンフレットないけど普通の映画より高いし、最近は他のリバイバルでもパンフレット作られているので減点。
新海誠作品を初めて観たのが「君の名は。」で、それからの新作は全部映画館で鑑賞しているのですが、昔から知っている人は昔の作品の方が好きだったという人が多い印象です。
天気の子やすずめの戸締まりでもあった世界か愛する人一人かというテーマはもう今作から描かれているのですが、設定がなんか小難しくってよく分からないし、今の新海誠作品のキャラクターデザインやラッドウィンプスの曲に慣れていると今作はあれ?これもしかして幸福の科学?と思ってしまいました。特に最後の曲が大川隆法作詞作曲っぽかった・・・。
吉岡秀隆も表情込みの役者さんだと思うので、主役でだらだらモノローグさせるとひたすら睡魔が。
新海誠らしいファンタジー
日本は津軽海峡を挟んで南北に分断され、北のエゾはユニオン領で、南は米軍統治下の日本となっていた。青森に暮らす中学生の藤沢浩紀と白川拓也は、ユニオン領エゾの中央にそびえ立つ巨大な塔に憧れ、いつかその塔を目指そうとひそかに飛行機の製作を行っていた。2人は憧れの同級生・沢渡佐由理に飛行機の秘密を打ち明け、3人は一緒に塔を目指す夢を共有した。しかし、中学3年の夏、佐由理は行き先を言わず、黙って転校してしまった。飛行機で塔を目指す夢も頓挫して3年後、東京の高校に進学した浩紀と青森にいた拓也だったが、アメリカがユニオンに宣戦布告をするとの情報から2人は再会し、入院中の佐由理を連れ出し、飛行機を完成させ、塔に向かうが・・・さてどうなる、という話。
北海道がロシアに侵略され占領されたらこんな事になるのかな、なんて観てた。
中学生が飛行機を作れる時代ってどんなんだ、なんて時代を考えてたが、ま、ファンタジーとしてみたら良いのだろう。20年くらい前の古い作品らしいが、そんな感じは無く、なかなか面白かった。
東京からも見える塔の高さってどれだけ高いんだ?なんて考えてた。富士山くらいじゃ地球の丸さで見えないだろうから、1万m以上かも?今度計算してみるか。
主題歌を歌った♡川嶋あいの声が透き通ってて美しかった。
追記
見通し計算サイトが有ったので北海道・旭川と東京の直線距離920kmと仮定して計算してみたら、6万mの高さが必要みたい。世界一高い山エベレストの7倍の高さ・・・やはりファンタジーだなぁ。
すでに描きたいものをはっきりと見通していた新海誠の、卓越した作家性が実感できる一作
空模様(というか雲)といった自然描写に対する尋常じゃない観察眼と描きこみ、極端なクロースアップやアングルを多用した、フォトリアリズム的な絵作りなど、長編初監督作品にしてすでに、後の傑作に連なる要素が詰め込まれた本作を観ると、新海監督は自分自身が何を描きたいのか徹底的に追及していたんだな、ということが体感できます。
もちろん新海誠のファンでなくとも、パラレルワールド的な現代日本を舞台にしたジュブナイルSF作品として十分に見ごたえがある作品です。いくらなんでも主人公二人が天才的すぎるだろう、とか彼らと世界の危機が直結してるのはなぜか、ちょっと分かりにくい…、といった気になる部分も確かになくもないですが、そんな細かい描写説明を省いても描きたいものを描き切った爽快感が、確かにこの作品にはあります。
制作順でいえば本作の次が『秒速5センチメートル』(2007)となる訳ですが、人物描写の筆致にやや時代感のある本作と比較すると、『秒速~』の方はオムニバス作品で、上映時間も短いとはいえ、映像の品質が大幅に向上していることに驚きを隠せません。確かスタッフの人数も絞り込んでいるはずなのに!
ジュブナイル映画としても、また新海作品を辿る貴重な資料としても、可能であれば今回の特別上映のようにできるだけ映画館で鑑賞したい作品です!
深海ワールドの源流
新海誠監督その2
生理的に受け付けない
背景は安定の超ド級の美しさ。
しかし背景にあれほどの尽力と観察眼があるのに
人間へ観察眼が向けられることは無いのかも知れない。
どうにもこの監督さんとは合わない。
くどくどセリフやモノローグで説明せずとも
もっと心情の表し方はあるはずだ。
男2人に女1人が主に出てくるものの、
各人物のキャラクター分けも甘く
男2人いる必要性を感じない。
女も童貞が理想として描く架空の女みたいなもので、
男性が見れば良いのかもしれないが、
女性からしたらただの生理的に受け付けない
キモイ奴らでしかない。
人物2人でさえ描けてないのにそこに
SF設定盛り込んだって楽しく観られやしない。
SF設定にしたって説明はあるんだかないんだかでわかりにくく、
もっと要素を削らないと
こいつら何やってるんだろう?て疑問しか残らない。
無駄にアレコレ詰め込まない方が良い。
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