「新海クオリティ ソノ1」雲のむこう、約束の場所 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
新海クオリティ ソノ1
新海誠という監督の存在は正直知らなかった。別にアニメヲタクでもないので、数多いるクリエイター達を諳んじるなんてことはできないが、改めて調べてみるとかなり有名な人なんだと驚く。そしてその中でも合点がいったのは、大成建設のあのアニメのCM。確かにあの映像美は全てこの監督のなせる技なのだと腑に落ちる。これ程までの特徴のある、否、ある意味登録商標モノといっても過言ではない空と雲とそれを彩る光の屈折、逆に満天の星空と星の運河。決して街の光に侵されている今の生活では体験できない大パノラマをアニメとCGを駆使して観客に披露する演出は他の人には真似が出来ない拘りを否応が無くヒシヒシと伝わる。
その集大成が『君の名は』なのだろう。
そしてその作品の演出的プロローグというべき、過去三作の上映が目黒シネマで懸かっていたのでルーツを探るべく観覧した。
さすが今一番の話題であり、ディズニーアニメやワンピース、ドラえもんやしんちゃんといったキャラアニメではときめきに乏しいと感じる人達(時間的に、大学生位の若い人達)で決して広くはない館内がごった返していた。地下に下がる階段にまで整理券順に並ぶ人達で溢れかえり、改めてあの映画の反響の強さを思い出さずにはいられない。
まずは『雲のむこう、約束の場所』 2004年公開というからもう12年も前の映画だ。内容はSF物だからアニメとしては親和性が高い。ストーリーも勧善懲悪物ではなく、パラドックス物であり、尚且つ『謎の転校生』のような並行社会が存在しているという前提で、そのゲートを女の子の昏睡と繋げるという白雪姫的寓話要素も盛り込んである。が、一番のキモは主人公二人の男子の親交(BL?)を描いていることだろう。一寸いろいろなものを盛り込みすぎな感は否めないが、まだCGを前面に使っていない中での得意の映像美、細部の作り込みの緻密さ等、アニメの可能性をこの時代での高度な表現で引き出しているようにみえ頼もしく思えた。背景のストーリーも、『もしもシリーズ』のような内容なので、その手が好きな人は興味深いなのではないか。ありそうな話と夢のような原理、その辺りがジャパニーズSFって落ち着き場所かと。
一つ、意味があったのか不明なのはヒロインのバイオリンを主人公が弾くところ。わざわざ弾くことに意味があったのか?