「カルメン77」チルソクの夏 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
カルメン77
「来年のチルソク(七夕)に会う」ことだけが彼女たちの願い。携帯もメールもない、今から見れば不便な時代に、これだけ純粋に高校生活を送った彼女たちに乾杯。「S・O・S」「あんたのバラード」「カルメン’77」とハートをわしづかみされっぱなしだった!
土曜日、映画祭ということで中高生もかなり多く満席。画面には主役の女の子たち、「ん?三田寛子か?」と思ってよく見ると、彼女が主役の水谷妃里嬢。中高生の観客はわかんないでしょう・・・「Aを狙ってんだ!」という樹里嬢の言葉に中高生が「Aって何?」とざわついた(笑)・・・わかんないことだらけなのね。そして「38度線」「戒厳令」「日本人嫌い」と、このテーマが出てくると、中高生諸君はさっぱりわからないのでしょうね・・・(そんなことで騒ぐな!うるさい!静かに見てろ!)。
無理もない話なのだ。思うにこの映画、中高生たちを啓蒙するための要素がかなり入っているように取れるのです。今でこそ韓流ブーム、日韓友好、サッカーのワールドカップと、仲良くしているのだから、20数年前における韓国人の日本に対する思いなんてわかりませんよね。で、中高生たちがわかりやすかったのは「韓国の女性って皆レズ?」とか、『幸福の黄色いハンカチ』だったようだ。しかも、山田洋次監督のこの映画のシーンでは、中高生たちがすすり泣いていた(学校で鑑賞会でもあったばかりなのかな?思い出しちゃったの?)。
映画としてのストーリーの組み立ても、さすが佐々部監督、脚本とも気持ち良かった。「5センチバックして」と「5番ゲート」の微妙な伏線も効いていたし、白黒とカラーの使い方も良かったです。映像では、緩やかなカーブのついた下り坂の商店街が良かった・・・『列車に乗った男』にもこのような商店街があった。
難点は、時代考証の小物。マジソン・バッグやスヌーピーも見たかったし、白黒テレビを見ている家庭にしては電子レンジが置いてあったり、カラオケはまだピークを迎えていない時代だったという、細かな点が残念。当時はまだ8トラックのカラオケの時代です。
【2004年11月映画館にて】