ヒバクシャ 世界の終わりにのレビュー・感想・評価
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日本の原爆による被爆者、イラクの被爆者、アメリカの被爆者
電力供給のために活躍する原子力発電所。安全だと宣伝する裏には微量放射能によってガンや白血病という悪魔に蝕まれてゆく人々がいた。
どうしても観たかった時から2年過ぎてしまいましたが、すでにDVDが発売されたようです。広島・長崎に落とされた原爆については日本人なら誰しも心を痛める悲惨な出来事でしたが、未だに核の恐怖を反省もせずに利用し続けてる人たちもいます。91年の湾岸戦争において、初めて使用された劣化ウラン弾。もっとも硬い金属なので分厚い装甲車でも貫通してしまう兵器ですが、一方で放射能を含んだ微粒子を大気中にばら撒いてしまう悪魔の兵器なのです。ガンや白血病の患者が異様に増えているにも拘らず、因果関係は認められないと使われ続けている。
被害者はイラクにとどまらない。大量のプルトニウムを作っているアメリカのハンフォードでは風下の住人たちが次々とガンで死んでいる。高濃度の核廃棄物の汚染にさらされてきたのです。『エリン・ブロコビッチ』のように司法によるたたかいは続いているが、相手は企業ではなく政府であることが相違点。勝ち目はないのです。ここでも裁判の争点は因果関係の有無。データに基づいても科学的にはまだまだハッキリさせることのできない虚しさがつきまとってしまう。
日本の原爆による被爆者、イラクの被爆者、アメリカの被爆者と、三つの地域に焦点を当てたドキュメンタリー映画ですが、核兵器による悲惨な現状を訴えるだけではなく、原子力発電所の問題も指摘します。特に身の毛もよだつ事実は広島で被爆した医師・肥田舜太郎の集めたデータでした。86年のチェルノブイリ事故以降、日本における乳ガン発生数と乳幼児の死亡数の推移。北海道から日本海側、太平洋側と明らかに死亡者数が増えていっている。遥か離れたロシアの空から、日本の大気中にまで微量の放射能が拡散している事実。他人事ではすませなくなっています。原発の問題もその地域だけに限った問題ではない。この問題を放っておくと、そのうち地球全体が放射能汚染の危険に晒されるのです。しかも、この放射能が消え去るのに45億年かかるとか・・・
これだけグローバルな内容になっているとは思いませんでした。大量の殺傷能力を持った兵器であるという問題だけではないのですね。目に見えない恐怖は、やがて静かに地球を汚染してゆき、なぜガンになったのかもわからないように人間を殺していってしまう・・・肥田先生の訴える「低線量被爆の実体を知ることから始まる」という言葉が重くのしかかってきます。
劣性遺伝・・ひ孫が危ない
映画「ヒバクシャ」(世界の終わりに)(鎌仲ひとみ監督)から。
巷で大騒ぎしている原爆・原発の放射能ではないが、
戦争で使用されている劣化ウランから出ている放射能の怖さを、
イラク・バグダットに生きる人々から教わった。
「後に続く世代に同じ想いはさせたくない」と呟きながらも、
「このまま生きていくだけ」と、なす術のなさに落胆している。
私が気になっているのは、内部被爆による遺伝。
こういった遺伝は、よく「劣性遺伝」が叫ばれるが、
1代おいてひ孫の代に現れるとしたら、それは悲しいこと。
私のメモは「劣性遺伝・・ひ孫が危ない」とだけ残っていた。
何も知らずに生きてきた子どもが、2世代前の
おじいちゃん、おばあちゃんが受けた放射能が原因で、
病気になったとしたら、誰を恨んでいいのか、戸惑うに違いない。
データとして、放射能の怖さが忘れられた世代に、
遺伝子として伝わるなんて、考えただけでも申し訳ない。
やはり被爆の事実を伝える術を、私たちは持たなくてはならないな。
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