劇場公開日 1996年3月2日

「超特急とガンマンのび太」映画ドラえもん のび太と銀河超特急 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0超特急とガンマンのび太

2024年10月30日
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『銀河鉄道999』に対する思慕を惜しむことなく開陳した一作。

序盤の盛り上げに関してはシリーズ随一の出来かもしれない。真夜中、裏山に鳴り響く汽笛の音。空から降りてくる巨大な機関車。狭いはずの車内に広々とした個室があり、ロビーのような車両では360度のパノラマプラネタリウムが堪能できる。学校の時間になったらどこでもドアを使って一時的に地球へ戻ればいい。

子供が考える現実的要請(学校行かなきゃ、門限までに帰らなきゃ)に対して一つ一つエクスキューズを立てていくことで観客の没入感を最高潮に高めてくれるのがドラえもん映画のいいところだが、本作はその中でも屈指で描写が丁寧だ。特に、次元ワープ中は車窓の景色が一定になってしまうので代わりにパノラマ映像を流しているという設定は見事としか言いようがない。

また物語の舞台がドリーマーズランドに移行してからはガンマンとしてののび太の才覚がこれでもかというほど見せつけられる。5本の空き缶を5つの弾丸でどれだけ撃ち抜けるかという試練の際には、1つの空き缶めがけて一挙に5つの穴を穿つという離れ業を披露した。

しかしそれ以降は徐々に物語のテンポが悪くなっていく。そもそも銀河超特急という高速のマシンからドリーマーズランドという不動の遊園地に舞台が移ってしまった時点で視覚的にも失速の感は否めない。

やがてヤドリという小さな寄生生物がドラえもん一行に忍び寄っていることが判明し、作品のテンションがゾンビ映画チックになっていく。本編中ではスネ夫がヤドリに寄生され、一時的にドラえもん一行の敵となる。『ふしぎ風使い』でもそうだったけどこういうときのスネ夫の扱いの酷さよ…

ヤドリの親玉は遊園地から奪った巨大ロボットに寄生し、ドラえもん一行に襲いかかる。しかし最後はのび太が持ち前の早撃ちで親玉を射抜き、事態は収束を迎える。

銀河超特急の高揚感といいのび太の有能さといい部分的には素晴らしい映画ではあるのだが、全体として見通すとそこまでパッとしない凡作だった。やっぱ徹頭徹尾機関車を降りない物語構成にすべきだったよな…

因果