「子どもたちに環境・政治的問題を分かりやすく伝えるには良い」映画ドラえもん のび太と雲の王国 ぼろなっつさんの映画レビュー(感想・評価)
子どもたちに環境・政治的問題を分かりやすく伝えるには良い
小さい頃からドラえもんを観て、読んで育ちましたが、今作は藤子・F・不二雄先生原作の映画の中で、観たことがなかった数作の中の一つだったので、大人になった今観てみました。
序盤は雲固めガスの話を広げたような、ワクワクする展開。話が進むにつれ、環境問題や対立する陣営同士のパワーバランスの話へと舵が切られます。
個人的な感想としては、子どもたちが環境問題や政治的問題を考えるきっかけとなる、教育ビデオとしては120点の出来だなと思います。ただ、毎年春休みに公開し、子どもたちがワクワクして見る「ドラえもん映画」からは、少し逸脱しちゃってるかなという印象。アニマルプラネットや海底鬼岩城あたりがちょうど良いラインかなと。
また、原作を読み込んでいる自分からすると、ホイくんやキー坊、ドードーなどの登場はテンションが上がりました。ただ、映画しか見ていない人も多いと思うので、そこは賛否が分かれる所かもしれないです。一応映画本編中でも、こんな事があったんやな〜となる程度の説明セリフはあるので、意味が分からなくなることはないとは思います。
環境問題については、今見ても考えさせられる内容。F先生の最新(当時)の社会問題を取り上げる姿勢がすごいなと思うと同時に、当時から人類はあまり前に進めていないのでは…と悲しくもなりました。改めて、自分にできることをしていこうと強く思いました。
その他にも、雲を溶かすガスを脅しとして使うくだりは、国家間の武力問題を彷彿とさせていると思います。こちらの武力をチラつかせないと話し合いすらできないのか?となる一方で、それを正義の名のもとに私利私欲で悪用する悪い大人が現れ、王冠を奪って権力を握り、ドラえもんたちの制止を聞かずに武器を使用して戦争になりかける…。「僕は使うつもりなんてなかったのに」と泣くドラえもん…。これを観て、話し合うには武力を持たなければならないんだ!と帰着する方がいるみたいですが、私にはその気持ちがわかりませんでした。武力を持ってしまうと、それを悪用するやつらが必ず現れる…そして平和が脅かされるという暗示に思えました。
自分たちだけの王国を作る流れはワクワクするし、ドラえもんが壊れたり、身を挺してガスタンクへ突進するシーンはハラハラする。腹ペコの人をおびき寄せる煙やどこでもドアのダイヤルなどの伏線をきれいに回収したりと、物語全体の完成度は高いです。しかし、ワクワク全開を期待している子どもたちもいたと思うので、ドラえもん映画としては星3.5をつけさせてもらいます。