のんきな姉さんのレビュー・感想・評価
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重層的な傑作
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クリスマスイブ、残業中の安寿子の元に、疎遠になっている弟の寿司夫が執筆した小説本が届いた。それは、姉弟の近親相姦を題材にした小説だった。婚約者とも心を通わせられないままなのは、弟の事が引っかかっているからだ。
そんな弟から電話が来る。これから自殺しようと雪山にいるのだと言う。安寿子は、狂言だと相手にせず、電話を切る。居合わせた課長は、本当にそれでいいのかと、安寿子に問う。
2人が話すオフィスに奇怪な男が乗り込んで来る。彼は寿司夫の養父だと名乗り、寿司夫の心が壊れたのは姉が弟を弄んだせいだと断罪する。
それでも頑なに認めない安寿子に養父は銃を向ける…
突拍子も無い展開でリアリティを欠いているように思えたが、このオフィス自体が逡巡する姉の脳内を表す装置であると気付くと、とんでもなく面白く感じられるのだ。
その後も時空を超えて、過去か現実か夢か創作か…という怒涛の展開を、怒涛とは見えずに淡々とした日々の描写で見せられていく。
ボーイッシュな姉貴と子供っぽい弟、まるで恋人には見えない2人なのに、互いへの愛情がひしひしと感じられて、切ない。
普通に観ているとつまらない映画かもしれないが、感覚を研ぎ澄まして観ると傑作。
のんきな姉さん、というタイトルは原作漫画のものだが、「のんき」の意味が分かると、良いタイトルだと感じる。
多くの人に知ってほしい映画だ。
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