「主人公のモノローグ“いいものになった気が…”に理解が及ばず、そしてキネ旬の選定にも…」ヴァイブレータ KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
主人公のモノローグ“いいものになった気が…”に理解が及ばず、そしてキネ旬の選定にも…
キネマ旬報で、56人の審査員の内、
6名の方が第1位に推挙しての第3位選出と
いうことや、たくさんの映画祭で高評価を
受けた作品ということもあり初鑑賞した。
しかし、私にはなんとも理解の及ばない鑑賞
となってしまった。
実はこの少し前に「サード」という作品を
観たのだが、
見えないまま走る続ける主人公にとっての
見失った人生の目標なり目的なりの象徴
としてホームベースを捉えたのだが、
この作品における男女二人にも
同じ匂いを感じた。
しかし、「サード」の主人公達とは異なり、
この作品では30歳前後という
社会人として脂の乗り始めているはずの
年齢設定なのだが、
二人ともフリーのルポライターだったり、
やはりフリーのトラックドライバーだったり
と、家族の気配も感じない孤独感が際立ち、
そこに彼らの自由だからこその
不自由さも感じた。
そんな中、幻聴に悩まされる
アルコール依存症とは言え、
コンビニでたまたま見掛けたトラック運転手
に同行して男女の関係に至るライターという
設定は、私にはリアリティを感じ難く、
作品の中にも入り難かった。
終盤になって、特異なように見える
それぞれの境遇と二人の結び付きは、
実は決して稀なケースでは無いのかも、
との思いも擡げてきたものの、
しかし、それでも二人の肌の触れ合いは
一時の安らぎにしか感じられず、
字幕スーパーで出た彼女のモノローグ
“いいものになった気が…”には
理解が及ばなかった。
そして、合わせて、キネ旬の選定にも。
コメントする