「10数年前の家族ってこんなだったんだ。」蛇イチゴ だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
10数年前の家族ってこんなだったんだ。
永い言い訳が絶賛上映中の2016年ですが、西川美和の監督デビュー作、蛇イチゴを映画館で観る機会に恵まれました。地方暮らしの身でして、レンタル店にも置いてなくて観られてなかったんです、蛇イチゴ。わーいわーい。
公開が2003とか2002年ということですんで13・4年前の作品です。
当然出演者が若い。まずはお馴染みの彼らの若かりし頃を堪能しました。
ともこの生徒のますだくんが染谷将太ですね。なんてかわいいの。小学生!
若い宮迫と蛍ちゃん、菅原大吉に手塚とおると、この人がこんなところに!がいっぱいで楽しかったです。寺島進と佐藤浩市もいましたね。平泉成はあまり変わってないね。
語り口は今と同じです。わ、西川美和だ!って感じです。
登場人物の人生観が、2000年代初頭だなと思いました。そんなに変わってないと思っていたけれど、やはり変わっていますね。それを実感しました。
男性で独身のまま三十路を迎えたのが情けないと自嘲する風でしたし、あんなに症状の進んだ認知症をいくら専業主婦とはいえ介護サービスなしって、今では考えにくいですもの。
おそらく映画の中の時代では、おじいちゃんは認知症ではなく、呆けたという認識なんだろうと思いました。だからおじいちゃんの大変さを言葉にしないし、隠してるかどうかの確認がいるってことです。
娘はおそらく25、6歳で、もう結婚を明日にでもする事として意識している。もちろん2016年でも26で結婚してますが、全く迷いなくって感じが少し前の事だと思わせます。
一見いい関係の幸せそうな家庭です。でも秘密を抱えていて、化けの皮がどのように剥がれ落ちていくかというお話です。
メーカー勤務のお父さん、呆けた舅であるおじいちゃんを世話する専業主婦のお母さん、小学校の教員をしている娘の家庭です。
はじめはお母さんの父だからお父さんはおじいちゃんを汚いもののように扱ってお母さんにだけ世話をさせるのかと思ってましたらどうやら違う。嫁に介護を無言で押し付けている様子です、そして嫁はもうだいぶん疲弊している。
お父さんは、娘には甘いが普通に偉そうな人で、どうやら無職を隠していることが割と早いうちにわかります。
娘は可愛がられて育っており、正論で全部生きていけると思っている様子です。
HRで、飼育係の仕事をサボるますだくんが嘘ついていると決めつけています。物事にはなんでも両面があり、子供でも簡単に本音は言わないことを全く考えたことがなくて、という幼稚な小娘です。だけど本人はいっぱしの社会人のつもりです。
さて、娘は恋人がおり親に紹介する段の様子です。既に前からある秘密が一つあって、それは長男がいるが勘当されていて消息不明であることです。まあそれは当然黙っておき、恋人のお披露目は無事終了。ですがお父さんは借金取りに呼び出され、お母さんはおじいちゃんの大暴れにぐったり。発作を聞こえないふりして死んでもらったのでした。
お母さんの悲しみはわかります。そら息もつまりましょう。夫からは召使いと変わらない扱いで、上げ膳据膳の娘は一丁前の口聞いて母の気持ちを慮る人はいない。おじいちゃんはだいぶん頭がお花畑で、味噌汁にイチゴジャム入れちゃったりする(面白かったけど)。
お父さんみたいな男は大嫌いなので、とっとと自己破産しろよと思いました。兄は、、、ほっといていいでしょう。
若かりし頃の西川美和の、辛辣さを堪能できてよかったです。
ラストのテーブルの上の蛇イチゴがよかったです。