「領土分割ということで手打ちを…」映画ドラえもん のび太と竜の騎士 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
領土分割ということで手打ちを…
『鉄人兵団』という大名作の直後ということもあり何かと不遇な作品。しかも恐竜という主題は第1作『恐竜』が既に通っている道なので目新しさにも欠ける。地底世界という世界観も後続の『創世日記』のほうがはるかに巧く運用している。
0点の答案を埋めるという動機からたまたま地底世界を発見したのび太たちは人喰い地底人に襲われているところを恐竜人バンホーの巨大タイムマシンに助けられ、そのまま6500万年前の文明国に連れ去られる。そこは絶滅する前の恐竜たちが暮らす世界だった。
恐竜人は恐竜を滅ぼした何者かを倒すことで、未来の地上世界を恐竜王国にすることを目論んでいた。彼らはドラえもんが繰り出すひみつ道具のオーバーテクノロジーぶりに戦慄し、彼らが地球を滅ぼしたのではないかと疑い始める。
しかし実際は、ドラえもんが6500万年前に起きた彗星衝突のタイミングでできる限りの恐竜たちを地下に逃したことによって恐竜人たちが現在まで生き残れていたという事実が判明する。
そこでドラえもんたちは恐竜人たちに停戦協定を申し入れ、衝突は回避される。これからも人間は地上で、恐竜人は地底でそれぞれ穏やかに暮らしましょうね…ということで物語は終結する。
とはいえドラえもんに個人的な恩義があったところで恐竜人たちの地上への欲望が消え去るのかというのは大きな疑問だ。「それでも地上侵攻は免れない」という方向に進んでいったほうが絶対に面白かっただろ…とは正直思ってしまう。まあ、歴代作品を鑑みるにそんなことは絶対にないんだろうけど…
思えばドラえもん映画においては「最悪の最終局面」は回避される方向にある気がする。『大魔境』では魔境外世界への侵攻は終ぞ果たされなかったし、『鉄人兵団』では現実世界にまで鉄人兵団の魔の手が伸びることはなかった。それゆえに『魔界大冒険』においてメデューサという魔界の僕が「もしもボックス」の理の外側、つまり現実世界に干渉してくるシーンが殊更恐ろしく感じられるのだろう?