千年女優のレビュー・感想・評価
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歴史に残る名作
何年振りかに映画館で観ることが出来た。やはり至上の傑作である。夢うつつの人生のあり方、幻かもしれない恋心を追って生きることを肯定する物語に映画女優として生きることを重ねる。人生は映画のようなものだ、ということをこれほど的確に描けるとは。今敏監督は現実と非現実のあわいを突破する物語を常に描いてきたけど、それが悪夢のようなものではなく、人生を彩る素晴らしいものであると、謳いあげている本作が僕は一番好きだ。人は幻を信じられるからこそ、生きていられるということをこの映画は教えてくれる。
アニメーションという媒体の面白さに自覚的な作品でもあると思う。極めて現実的な世界観であるが、現実と虚構を絵のテクスチャーで等価に描くからこそ、テーマに説得力が生まれる。映画が現実だったのか、それとも人生が映画だったのか、胡蝶の夢のような感覚を観客にダイレクトに体験させる見事さ。
エンディング曲のロタティオンも最高。
記憶
もう20年以上前の作品ですが、斬新さに引き込まれました。往年の大女優・藤原千代子(声:荘司 美代子、小山 茉美、折笠 富美子)が過去を回想するというだけならともかく、そこに思い出の「鍵」をモチーフに生涯の恋をからめ、数々の出演作のシーンをつないで描いていくアイデアが素晴らしい(20~40代の声を担当した小山 茉美さんは、則巻アラレちゃんの声優さんですね)。回想しながら現実と空想が入り交じり混沌としていくところは、人間の記憶の曖昧さが活かされていて、とてもスリリングかつ共感しました。音楽も非常に効果的に作品を盛り上げていましたが、今敏監督が音楽を重視した作品とするため、自らの好みで平沢進に依頼されたようです。千代子が生涯想い続けた「鍵の君」の声(山寺宏一)がカッコよかったです!今敏監督(1963-2010)が描く「現実」と「虚構」が入り交じる描写は、日常的に夢をみたり空想したり、或いは何処か遠い国のニュースをみたりしているときに感じていることと似ていて、人間の記憶を巡るとても興味深い視点だと感じます。「あれほど愛してた人なのに、もう顔も思い出せなくなってしまった」と千代子が悲しむシーンがとても印象に残りました。
愛に生き、逢いに行く...か
番組制作会社社長の立花は、憧れでもあった銀幕を去って30年の伝説の女優藤原千代子への取材で屋敷を訪れる。千代子は、自らの出演作を織り交ぜながらその半生を語る。関東大震災の日に生まれ、女学生時代に出会った活動家に恋をし、彼が残した鍵を大事に持っていたが。
楽しくも切ない作品でした。監督の前作「パーフェクト・ブルー」と同様、現実とフィクションが交錯しますが、今作は明るくてまるで作風が違っています。SFから時代劇まで次々シーンがチェンジしていく映像の妙は、名作「うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー」を思い起こすほど見事でした。あちらの夢邪鬼にあたる存在が、こちらでは妖婆といったところか。最後、彼女の一途さと、立花の無念に目が潤みました。
現実と映画が入り乱れて首を傾げるような作品になってしまった。 初恋...
映画としてのアニメの最高峰
面白かった。1人の女性の人生をほんとにそのまま映画にしたような濃さ...
アニメでなくては出来ない事
多くのアニメファンに惜しまれつつ2010年に46歳の若さで亡くなった今敏監督の作品がリバイバル上映です。僕は初めて観ます。一人の男性を思い続けた女優が戦前・戦中・戦後を生き抜いた姿を奔放なタッチで描いた物語です。
驚きました。これは素晴らしい映画だったなぁ。時間や空間のみならず様々な映画作品を自由自在に、しかも自然に出入りする展開にワクワクが止まりません。まさしく、アニメでなくては出来ない事をアニメでやっているのです。今敏さんの落ち着いた美術性もこれこそ大人のアニメです。キンキン声の声優がいないのもいい。そして、昔の映画へのオマージュも堪りませんでした。御存命ならば今どんな映画を撮っておられたんだろう。
やりたいこと全部詰め込みました
邦画好きには堪らない
とても素晴らしい作品。でも千代子さん、ちょっと怖い
とても素晴らしい作品です。
まず絵がいい。ひじょうにうまい。驚くほど人体のデッサンがしっかりしていて、その動きが自然なことに感心しました。
だから、いろんな「感じ」がとてもよく表現されている。歩いている感じ、走っている感じはもちろん、そのほかの、人間が生活する際の様々な「感じ」を見事に描き出している。
人間の体は見慣れているだけあって、少しプロポーションが狂ったり、動きがおかしかったりすると、すぐに違和感を感じてしまいますからね。これだけしっかりとした絵を作れるようになるには並々ならぬ修練が必要でしょう。
線描を主体としたキャラクターのフォルムと、彩度をおさえた色彩が美しく、すべてのシーンをアートとしても楽しめます。
宮﨑さんの作品をはじめ、新海さん、細田さんなど、日本のアニメ映画における人物表現はどれもすごいけれど、僕は本作の人物表現が一番好きかもしれません。
また、ストーリー展開もユニークで、「よくこんなこと考えるなぁ」と、これまた感心。
ユーモラスな味つけもバランスよくされていて、物語のテンポもいい。カメラマンの井田の関西弁が「ツッコミ」のように効いていて、何度も笑わせてくれました。
それから監督の映画愛も伝わってきた。
僕には黒澤明の『蜘蛛巣城』しかわかりませんでしたが、ほかにも何かの映画の場面が引用されていたのかな?
ところで、この物語の一途な愛はすごいなと思いますが、しかし何ごとにも加減とか限度というものがあります。
千代子さん、執着が過ぎるようで、ちょっと怖い。
――と思って、家に帰って調べてみたら、本作のキャッチコピー、「その愛は狂気にも似ている」なんですね。やっぱり。
追記
今敏という人物を昨年はじめて知りましたが、2010年に46歳で亡くなっているんですね。
すごい才能なのに……。なんとも残念なことです。
日本アニメ史に残る傑作!
何故今までこの作品を観なかったのだろう。
リバイバル上映がされているということで知った作品(私の住む地域では上映されなかった)。タイトルに惹かれてずっと引っかかっていた。今敏監督は名前は知ってはいたが、作品は観たことはなかった。今日、やっと観た(2024年2月17日、DVDで鑑賞)。
ストーリーと構成が凡人が考えつくものを遙かに超えている。それでいて、全く破綻していない。目まぐるしく変わる時代、場所、服装、役柄、音。その対比のように変わらない女優の一途な愛と鍵。最後にどこに行き着くのか、引き込まれるように魅入ってしまう。
主人公千代子を取材する立花は、1人の熱狂的なファンとして時空を超えて千代子の回想の物語に入り込んでくるが、彼は単なるインタビュアーではなかった。千代子の終わりなき物語のなかに実際に存在していて、千代子が知りたくない悲しい事実を知る身であった。。。この演出も唸ってしまった。
そして最後の千代子の言葉。これぞまさに女優という台詞だった。
今敏監督がもう亡くなっているのが惜しい。この作品は、もっと評価されていいと思う。
間違いなく日本アニメ史上に残る傑作だ。
今日見ました
扇町キネマで今日鑑賞しました。
今敏監督もこの映画も全く知りませんでした。
でもアニメも漫画も小説も好きな50代のおじさんです
50席あったのかな
3分の2埋まってて若い女性の方々ばかりで
面食らいましたが笑
男性はおじさん3名でした
コメントを日頃しないので
うまく書けませんが二十数年前とは思えない
千年女優とのタイトルなので
どんな繋がりや切り替えをするのかと怪しんでましたが
納得できる切り替えで
女優として第一線で活躍してること
鍵の男性を想い続けてることがよく分かりました
最後に鍵の男性を追いかけてる自分が好きという
告白がありましたが最後に納得できる気付きが
出来てよかったと想いました
また監督のリバイバル放映があれば
見てみたいと想います
名作は色褪せない。
10年ほど前に一度鑑賞し、物凄い強烈な印象が残っていた本作。当時は今敏監督という有名監督のことも知らず、単純に「友人に勧められたアニメ映画」として鑑賞していました。時が経ち、映画の知識も深まった今になって、地元の映画館でリバイバル上映されると聞きつけて鑑賞いたしました。
結論、やっぱり面白かった!!!
現実と回想と作品の境界が無くなっていくような不思議な世界観で描かれる、藤原千代子という女優の生涯。最後には温かい気持ちになって終わる。本当に良かった。
今は亡き今敏監督の作品が、2024年に映画館で鑑賞できるなんて夢のようでした。おそらく私以外の観客も今敏監督のファンのようで、半分以上の座席が埋まるくらいの観客がいたのに、スタッフロールで席を立つ人が一人もおらず、上映終了後に誰一人として会話せずに黙って劇場から退出するのが印象的でした。
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かつて一世を風靡したが、人気絶頂の30年前に突然芸能界から姿を消した人気女優・藤原千代子。彼女の行方を突き止めた小さな映像制作会社社長の立花は、ドキュメンタリー作品を製作するために、彼女が隠居生活を送る山奥の屋敷まで取材に訪れた。今まで取材を全て断ってきた千代子が立花の取材を認めたきっかけが、立花の持参した一本の古びた鍵。立花から鍵を受け取った千代子は、彼女の半生と、その鍵にまつわる思い出を語り始める。
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とにかく展開が目まぐるしく、今自分は藤原千代子の回想を観ているのか、現代の話を観ているのか、映画の情景を観ているのか、分からなくなります。鍵にまつわる思い出話を語っていたと思ったらいつの間にか彼女が演じた映画のワンシーンの描写になってたり、過去の回想の話をしていたと思ったらいつの間にか現代のインタビューシーンに変わっていたり。今敏監督の作品『パプリカ』を観た時に感じたような、夢と現実の狭間が曖昧になっていく不思議な感覚を味わいました。
かつて一度だけ会った名前も知らない画家の男から預かった鍵。再び彼に出会うために奔走する一途な千代子の描写は胸を打たれます。ずっとずっと彼を追い続けてはいたけど、長い時を経て彼の顔も思い出せなくなってしまうシーンの何とも切ないこと。
今敏監督の独特な世界観にマッチした平沢進氏の楽曲群も素晴らしい。主題歌の『ロタティオン(LOTUS-2)』だけじゃなくて劇伴も彼が担当しているそうですが、劇中の要所要所で彼の音楽が聞こえてくるとテンションが上がりますね。私がファンだからという贔屓目もありますが。
とにかく本作は言葉で表現するのが非常に難しい作品です。「とりあえず観てくれ」としか言いようがないですよね。
オススメです。名作です。ぜひご覧ください。
★2024年劇場鑑賞14★
日本史の万華鏡
2002年公開のリバイバル上映なのですが
客席は半数以上埋まっていました。
小さい劇場でしたけどね。
それでもすげー人気!
実はこんな作品が20年以上前に公開してたなんて知りませんでしたが上映時間にちょうどタイミング合ったので鑑賞させて頂きました。
確かに観ごたえは十分あり。まるで万華鏡のようにくるくる場面が変わっていく演出は見てて飽きがない。
芝居の記憶なのか現実の記憶なのかわからない曖昧さも歯痒くてなかなか良かったと思います。
とにかく集中していないと話がどう転がっていくのか分からなくなりそうで。
でもストーリーとしてはシンプルで、結局一人の女優の一途な思いがひたすら走り回っていただけなのだが。
そして立花社長も一途で、実は彼のような影で支えている人が居てこその破天荒な行動が成り立つんだよね。
平安時代から現代、未来までを演じた女優の半生を描いた内容だけど、日本史を廻ったようなストーリーでもありましたね。和製フォレストガンプ的な?
どこか懐かしくもあり、少女の一途な想いの眩しさと儚さ、そして虚しさを感じました。
恋の始まり 千年の終わり
原節子(1920-2015)
その可憐さで「永遠の処女」と呼ばれた
戦前・戦後の日本を代表する女優
小津安二郎監督が大変重用し
「青い山脈(1949)」「東京物語(1953)」などの
名作に多数出演も
1963年早世した小津安二郎監督を
弔うと突然女優業を引退し鎌倉に隠居
その理由は
「老いた姿を見せたくなかった」
「健康上の理由」
「戦中に戦争参加した責任感から」
など色々言われたが
最後まで明かされなかった
公の場には映画関係者の葬儀にひっそりと
姿を見せるのみだったという
その美貌に生涯独身を貫いたことから
「日本のグレタ・ガルボ」とも言われている
千年女優はこの原節子
(厳密には昭和の名女優のエピソードと
含まれるが)をモデルにした
藤原千代子が一人の男性「鍵の君」
を追い続けた女優人生を入れ子構造で
継ぎ目なく追った作品
この作品は5年前に特別上映で観て
今回久しぶりにまたやるので
観に行ってきました
やはり面白い
ホントこの作品一度始まったら
最初から最後まで一気に突っ走る
金曜ロードショーでCM挟んだら
絶対ダメな絶妙のテンポ
いちいち止まらない
千代子の映画の中に
立花と井田が入り込んでしまう構造
負傷した政治犯「鍵の君」が
落としていった鍵を握りしめ
彼を追いかけて女優となり逃亡先の
満州の撮影に向かうひたすら
彼を追いかけ走り続けるキャリア
そして焼け落ちる城で捕らわれた
彼に必ず会うために老婆から
千年長寿酒をあおり受けた千年の呪い
5年ぶりに観るとそれらは
すべて千代子の内面として
表現されてるんだなと思いました
男と千代子を結びつける「鍵」
生きているかどうかもわからない
鍵の君を追いかけ続ける「呪縛」
作品の中でも追いかけ続け
次第に年老いていく自分
どんどん入ってきます
そして物議をかもしたラストのセリフ
"だってあたし
あの人を追いかけているあたしが
好きなんだもの"
一途に追いかけていた
と思っていた人は肩透かし食らった
そうですが自分は
女優も自分を客観的に映像として
観れてしまう仕事でしょうから
何の違和感も感じませんでした
それをやる自分が好きでなければ
それは続けられない
鍵の君を追いかけることだけが
生きがいではなかった
これほど力強い前向きな終わりは
なかったのではないでしょうか
今敏監督作品一通り好きですが
やっぱりこれが最高傑作かなぁ
その愛はアイデンティティ
映画のおおまかな内容は、かつての大女優・藤原千代子に千代子の大フアンである映像製作会社社長・立花がインビューし、女優の狂気にも似た愛を求める人生が語られていくというもの。ただ、その構成が複雑で千代子の回想と思われるシーンで現在の立花が立ち回ったり、千代子の回想と千代子の出演した映画の場面が境なしに切り替わったりして、万華鏡のように虚実が分からなくなる。千代子が生涯を賭して追い求める「鍵の君」への一途な想いだけが物語を貫いているように見えるけど、最後の場面の千代子のセリフで全てが裏返り、千代子は宇宙の彼方に飛んでゆく。そして、エンドロールで流れる平沢進のLOTUS-2。
ここで毎回泣く。壮大で力強い自己愛の肯定を感じるからなのか。
今回のリバイバル上映で観れて本当に良かった。
虚実の実をどこに置いていいか分からないので、どうとでも解釈できてしまうフワフワ感を快と感じるか不快と感じるかで評価が別れそうだけど、そんなフワフワを消化するほどに味わいがでてくる作品だと思う。
夢と現を混ぜ合わせる今敏監督の真骨頂!
劇場で初鑑賞。
凄い!どのカットも美しい、カッコいい!
とにかく圧倒的な画力と演出!
鑑賞後は頭の中がグルグルになり放心。
↓上手く言語化出来ないが、この映画で凄いと思った点を書いてみる。
各パートの構成が、
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会話(回想)→男を探そうとする→お局やら諸々トラブルに水を差される→(オッサンに)助けられる→最後は走る!→次の舞台(年代)に!→振り出しに戻る
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という大体同じ展開を繰り返している。
ただ繰り返すのではなく、
舞台を変え、年代を進め(歳を重ねて)、少しずつ千代子の過去を明らかにすることで、ループではなく螺旋的な構造で話が展開していく。展開に音楽のようなある種のリズムが生まれてくる。
各パートの凡庸な会話劇から、ラストの走るシーンにかけ段々とテンポアップし、最後は有無を言わせない超絶作画と演出の力技でグアーっと盛り上げる展開は、正に映画を使ってロックサウンドを奏でているかのようで圧倒されっぱなしだった!
そして各パートの疾走シーン!
背景と作画が圧倒的なのは勿論、
下手から上手へ、ほぼ横一直線のカメラワークに統一することで、ラストの走馬灯シーンで見事に絵が繋がる!
正直、台詞とか会話パートが紋切型すぎやしないか?と思うことはあったにせよ(これはあえて劇っぽくしているのか?)、
兎に角、アニメーションの力で凄い映画を作ってやるんだという、監督の気概が伝わってくるようだ!
これはリアルタイムで劇的で見たかった〜。
本当に惜しい監督をなくしてしまった。
あくまで個人的な意見で、
エンターテイメント長編映画としてアニメを作るのなら、日本では今敏監督を上回る作家はいないのでは、、と改めて思うに至ってしまった。
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