劇場公開日 2002年5月25日

「公務員の女性が主役. 年数を経て,仕事はできるのに現状維持を望み,...」UN LOVED woodstockさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 公務員の女性が主役. 年数を経て,仕事はできるのに現状維持を望み,...

2025年12月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

知的

斬新

公務員の女性が主役.
年数を経て,仕事はできるのに現状維持を望み, 質素な生活が向いていると, 地味な生活ぶり.

仕事で知り合った男性が彼女に急接近,一度は意気投合するも, 羽振りが良すぎる経営者で, 気質が強引で, 彼女も 徐々に身構え.
その後, 同じアパートに越してきた, さえない男性に惹かれる様子.

と, 状況の説明だけをテキストにしてしまうと,
俗っぽい三角関係ドラマのように見えてしまいますね.

ですが,
本作を, 予習なしで初めて見た目線で驚いたのは,
映像と演技表現のほうでした.

映し方が,驚くほど見事で,
どの瞬間に何を映すか、何に焦点を合わせるか, ことごとく明確.
機微も主体も都度強く伝わる.
余分に邪推したり考える必要が一切ない.

終盤は, かなりの会話劇でもありました.
今回は幸運にも, 母国語=日本語を聴いているもので, 聞き洩らしはたぶん少ないはずですが.
もし他国の作品, 日本語でも英語でもなく, 字幕経由でしか理解できないセリフなら,
おそらく真意は断片しか理解できなかったでしょう.

演者さんらの, 抑揚を控えた発話,
言葉を置きに行くような, 会話の応酬 ,
まるで演劇を観に来たような感覚, あるいはチェスや将棋のような両者の駆け引きを観ているような感覚にもなりました.

観た劇場にて, 入口ロビーの解説文には, 以下の記載がありました:
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今作は万田(邦敏監督)の劇場公開長編第1作目.
90年代邦画にて試行されてきた演技の方法論,
諏訪敦彦的な「即興」と北野武的な「無言」の
どちらでもない「棒読み」を発明した.
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(at 東京芸術センター・シネマブルースタジオ, 足立区千住)

たしかに, 世の映画には, あえて抑揚を抑えた, こういう手法をするものもありますね.
今まで気づかなかったところですが, 面白い表現があるものです.

woodstock