DOG STARのレビュー・感想・評価
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キスシーンがなく、犬と再会するシーン迄なら
『DOG STAR』(2002)
dTVで今月までの放映というので選択した。主演が40歳前後の頃の豊川悦司と25歳前後の井川遥。とあることで犬が人間になったのが豊川の役どころである。ときたま犬っぽくなる。犬の頃に親切にしてくれた少女が大人になったのが井川の役どころ。ネットで予備知識を多少仕入れてみると、ロケ地が茨城県の鹿嶋市らしく、プールが一度いったことがあるっぽかったが、予備知識がなければ気づくはずもなく、ほかのシーンもまったく気づかない。これが40歳の頃のトヨエツだと部屋の前を通りがかりの母親に説明したらそんなに興味がない風だったが、現在の朝ドラの『半分、青い』でも豊川と井川が共演していることを母親が気づいた。私はまったく思い出せずにいたが、なるほど。この二人は以前にも共演していたのか。泉谷しげるもいい味出していた。監督は京都大学を出ている秀才だが、若い頃はピンク映画を量産していたらしい。これは一体どういうこの監督の意識だったのか。車が水戸ナンバーになっている。ベッドシーンはないものの、恋人(役は津田健次郎)と同棲しているらしく、いずれ結婚するつもりだったかも知れないにしても、良くはないと私は書いておく。そんなにひどいシーンはないが、井川が楽しくしている犬の化けたとトヨエツに恋人が嫉妬するシーンがある。石橋凌演ずる死者の関係でトヨエツは人間に化けたのだが、やがて犬に戻らなければならないのを示される。だが、トヨエツはもっと井川と一緒にいたくて、戻りたくないと言う。だが、犬は既に12歳で、人間でいうともう老齢。悲しませるだけだと石橋が説得するが。なんだかその後に、物悲しい感じが続いていく。移動動物園を経営していた泉谷が倒れたり、井川の恋人が嫉妬して動物園に火をつけてしまったり。恋人は自ら油を頭からかけて火に飛び込もうとしてしまうが、トヨエツが助ける。字幕が鹿嶋市でなくて、鹿島市になっていた。そのスキャンダルによって井川は保育園を辞めさせられる。恋人は嫉妬心が強すぎて変になってしまった感じもあるが、井川に「あいついい奴じゃん」と言って、警察いくわと去っていく。井川遥の役どころは、両親も事故死したのかなんなのか、悲しい身の上だったのに、さらに、トヨエツがわざとではないが、その登場から恋人が嫉妬して火事を起こし、保育園を辞めさせられる。悲劇なのだが、石橋凌にしても、泉谷しげるにしても、死んだ後に、人間からは見えないが、普通に出てきてしまうというところが悲劇性を緩和してはいる。泉谷が自分の骨を井川とトヨエツが拾っているシーンは変なシーンである。トヨエツには見えるが。泉谷の骨拾いはなぜかトヨエツと井川と葬儀担当しかいないのだった。恋人は去り、トヨエツと井川は新たなカップルかというと、トヨエツの化けた犬の余命はあまり残っていないのだった。井川が「移動動物園を一緒に続けていきませんか」とトヨエツに尋ねる。トヨエツの事も問い尋ねるが、親戚の話や家族などの事を犬なのでうまく話せない。そして井川は人間に化けたトヨエツを気にいっているが、はっきり言える立場でないトヨエツ。「やっぱり、私じゃ無理ですよね」と井川が言った後で、トヨエツは、「俺はあなたが飼っていた盲導犬のシローなんです」と告白する。茫然とみる井川。「だから無理なんです。俺のほうが無理なんです」あり得ないシーンなのだが、井川の目に涙が浮かぶ。ラブファンタジーなのだが悲劇なのだ。外に出て犬のように膝まづき、涙を流すトヨエツ。工業地帯のシーンの色が印象的。そして別れてしまって終わりかというと、狂言まわしというのか幽霊の石橋凌がはっぱをかけて、トヨエツは余命いくばくもなくとも井川のもとへ走る。逃げようとしたトラックの荷台が、ピーマンやスイカ、なすもあったが、そこらへんの農作物であるのも細かい。トヨエツの犬は自殺した男の身体を借りたのだが、なんの事情が刑事が追いかけてきた。逃げるトヨエツ。笑えるシーンのようで笑えはしなかった。
井川が移動動物園のバスを運転して、一緒に旅立つ。あの方面の海岸のシーンになる。けっこう鹿嶋市はいろんなところがある。井川はトヨエツが犬だとは信じていない。「どんなことをして追われているか知らないけど、私、シローさんが好きなの。あたしを諦めさせようとして犬だなんていったんでしょう。あたしは日本中をあなたと逃亡します」ここら辺が倫理を超えてしまう愛というので複雑である。私はそれはいけないと書くしかない。トヨエツの犬にしてみても、自分の身体の持ち主だった人がどうして追われているかはわからない。夜の鹿嶋市の海岸で二人並ぶ。海の音が繰り返される。シリウスという星を外国でドッグスターという。それを少女時代の井川が犬のトヨエツに教えたのだと、人間の姿のトヨエツは井川に言う。これではトヨエツが盲導犬シローだったと井川はわかるだろう。「あなたが犬でも好きなものは好き」「あなたは人間の男性と普通に幸福に暮らすべきです」「突然あらわれてあなたのほうこそなんなのよ」と怒る井川。その後、キスシーンがあるが、一夜明けて誰もいない海の家で井川は眠っている。「悪いな時間切れだ」と、幽霊の石橋凌がトヨエツに言う。「予定外の展開にしてしまってと神様に怒られた」井川に石橋は見えない。石橋の言うことを聞かず、井川とトヨエツは海にきた子供たちに移動動物園をはじめるが、石橋は「神様は人間のままトヨエツを死なせる」と伝える。そして二人組の刑事だと言っていた男たちが近づく。移動バスが土浦ナンバーなのが細かい。違うバスなのか?少しサスペンスタッチになるが、結局、別れとなる。最後はなるほどと思わせるシーンになる。ここら辺が映画の巧妙さだ。ラストシーンまで凝っているのだが、複雑だ。人間同士で愛し合っている状態がもっと幸福だと感じさせる。個人的には、ラストシーンの一つ前で終えていても良かったと思うが。井川が盲導犬のいるところに訪ねてきて、シローを見つけて抱き寄せるシーンまでで。なぜか死を見せつけながら、薄めて終えているのだが、どうしてそうしたのだろう。途中途中で考えさせてはくれるだろうが。子供にみせたいなら、キスシーンはいらなかったのではないかという中途半端な設定でもある。むしろ、深浦加奈子のようにその後で亡くなった出演者のほうがリアルなのかも知れない。もともとの恋人二人には気の毒だったのではないかという気もする。
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