「普通に一流の映画だった」自殺サークル 真中合歓さんの映画レビュー(感想・評価)
普通に一流の映画だった
それでは皆さんさようなら
大昔にネット上の恐怖動画等で見た事が有る方も多いであろう、大人数の女子高生が駅のホームに並んで向かってくる電車に一斉に飛び降りてミキサー・・・・・というアレの元ネタ作品である。
アマゾンプライムの評価も★2台でそこまで高くもなく、知名度なども相まって相当なクソ映画を覚悟して再生してみたら、、、まさかの超面白いという嬉しい誤算だった!!!!
まずなんと言っても00年代初期の陰々滅々とした空気感。これはもうとても脚色だけでどうこうなるとは思えないほどの、当時の生の空気感と言いますか世界観ではなくリアルな不景気に突入した日本の嫌~な重い怖い空気感がこれでもかと言うほどに演出されます。
のっぺりとした音楽と相まって本当にマイナスな気分になってきて、なんかもう別のベクトルで嫌になってきます(笑)。休日の鑑賞はオススメしませんね(土曜日に投稿しておきながら)
で、そんな有名な女子高生大量飛び降りシーンは冒頭で早々に終わるので、そもそもこのシーンで有名なこの映画は一体どういうストーリーなのか?ってお話なんですが、実はこの集団ヒステリー現象を調査する刑事達を描いたミステリーモノだったんですね。
また、この時代の俳優さん方の味が最高で石橋凌さんや麿赤兒さんの演技力がピカイチ。普通に演技が抜群でこれだけでもう観てられるんですよ。まだ邦画全盛だった頃の空気が残っていると言いますか、下手なアイドルではなくちゃんと刑事らしいおっさん俳優が演じられていて良いんです。
ここで一応言っておくとこの作品決してB級なんかじゃなくて当時普通にA級作品として作られているクオリティでした。しかし内容やタイトルも相まって、どうしても放送の機会や再販の機会に恵まれないんでしょうかね。知名度の低さが非常に残念な限りです。
そしてもう一つ言及をしておきたいのが、当時のネット環境についてです。元々そういう題材という事も有りますが、僕の想像していたよりも結構普通にネット社会に馴染んでいるような光景が繰り広げられていて、若者達は使いこなし、おじさん達はちょっと疎いけども使える人居るっていうのが今と変わんなくね?って感じで20年も差が有るのに面白かったですね。
結局本当の根源の根源は洗脳ソング?程度に匂わされて終わりましたが、ぶっちゃけこの負の拡散みたいなのは飛び込み誘発まではいかないとも今やツイッターやヤフーニュースなんかで日常ですし、特に所謂アイドル的な存在がファンに与える影響は悪化するばかりです。
しかし発信する側も実は大した考えは無くて、何なら大元の動きは本当にごく一部で殆どの部分は劇中のバンド男共のような模倣犯や拡散する者達が調子に乗っていただけ、みたいなそんな空虚で意味の無い情報の拡散っていうのを20年も前の段階で描いていたと思うと凄まじい先見の明じゃないでしょうか。
一流の俳優さん方が出演されていてストーリー展開も一流。更にPOV的な視点も相まって、狂気の世界観と実は結構フィクションでも無くリアルな世界もこんな感じじゃ無いかと思わせるような説得力とリアリティ。
タイトルさえもっと違えばもっと有名な映画だったと思います。観て間違いないです。一流の邦画ホラーでした。