バンパイアハンターD(2001)のレビュー・感想・評価
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川尻善昭監督の傑作
菊地秀行の小説の魅力を確実に映像化してみせた手腕に脱帽。天野喜孝のキャラクターデザインを本当にしっかりと動かしていて感動する。こんなに耽美な雰囲気の日本製アニメはなかなかお目にかかれない。アメリカで先行公開されて作品で、全編台詞が英語なのも新鮮だ。
話の展開も長編映画にちょうどよいサイズになっている。貴族の女性を負ってバンパイアハンターD以外にマーカス兄妹が追いかけ、マイエル=リンクを追いかけながら対決してゆく。
こういう雰囲気のあるアニメ作品が2000年代にはまだ残っていた。OVAなどにも野心的、実験的な作品も多くあり、今振り返ると商業ベースでこれだけ多彩な作品を残していたのかと驚くことがあるが、本作もそんな驚きを与えてくれる作品の1つだ。川尻善昭監督は、最近監督作を作っていないのだが、また一本やっていただけないだろうか。『鬼滅の刃』10話の絵コンテに名前を見つけた時には嬉しかった。
今見ても「頭がおかしい」と思わせるレベルの神作画
永遠を生きねばならない悲哀
いや~これはもう唯一無二・・・
意外とSF作品。
吸血鬼ハンターDの世界観を完全に再現している
おぞましさと厳かさが共存する貴族の世界が見事に表現されている。
吸血鬼と人間、禁断の愛の逃避行と言ってしまえば簡単だが、そこに絡み合うDとマーカス兄弟、そしてバルバロイの護衛達の物語が面白すぎて、昔かじりつくように読んだ記憶がある。でも20年以上前だから、細かいところはさすがに忘れてしまっていて…もう一度読み返したい。
原作はもっと性的な意味でドロドロした部分があったけれど、そういう箇所は全て潔くカット。あと、シャーロットの死に方が原作と違うので違和感はあったけれど、映画を通してみれば最高の出来栄えに思う(私は原作のラストの方が好きだけど)
惜しむらくは、Dが塩沢兼人さんではないことか…。言っても仕方ないこととは分かっているけれど、何十年経ってもあの声が忘れられない。
あっちのDは菊地秀行さんのお気に召さなかったみたいだけど、私は大好き。ぜひ映画館で上映してほしい。
色褪せない素晴らしさ
初上映が24年前かぁ。ほんのちょっと前のような感覚なのに、すごい勢いで年月が過ぎ去っていたのですね。ただの人間である私がそう感じるのですから、永遠の存在であるDや貴族たちにとっては、本当に人の一生など瞬く間に過ぎ去っていくのでしょう。
今回リバイバルで24年ぶりに映画館で再度鑑賞したわけですが、思い出の印象から大きく変わることもなく「ああ、やっぱり覚えていたとおりだ。これははまるわ」と一人納得。色々と詰め込んだアクション多めの物語なので、24年分歳を取った私には少々物足りなく感じるところも若干ありはしましたが、それでも最初から最後までぐっと引き込まれました。
24年経っても色褪せない映像と音響と音楽で織りなされる、美しく儚いゴシックホラーの世界。天野喜孝のキャラクターデザインだと分かるものの、そのままではなく、ありきたりなアニメのキャラクターデザインでもなく、いつまでも通用する完成された1つの作品だと思います。
最初に見たからなのか、声に先入観がないからなのか、個人的には英語版の声優さんたちの方がしっくりします。BDを予約したので、そちらを観るのも楽しみです。
映画館でのリバイバル、そしてBD販売のご決断、ありがとうございました。
そして最後に言わせてください。やっぱりマイエルかっこいいぞぉお!!!
(今も昔もマイエル派!)
素晴らしい
世界観、D、演出全てが格好いい
最高です
原作知らないし、
難しいことはわかりませんが、
とても良かったぁ!
映像も音楽も時は経っているのに、古さを感じなくて、重厚感と甘美な世界観、不協和音のコーラス?ダークさが表現されて、古き良きバンパイアらしい作品になってる。
脳筋キャラでさえ色気を感じさせるスタイリッシュな人物像。
【D】
美しい。影がありながら光を求めるような、黒だけど輝いて見える姿。そして田中秀幸さんの艶のある落ち着いたお声。素敵です!
【マイエルリンク】
こちらも美しい。上品な悪!全盛期のデビッド・ボウイのようなグラマラスな存在感!山寺宏一さんのこんなダークなお声も良いですね。
ダークファンタジーな世界にどっぷり浸らせてくれる良い作品でした!
一本丸々芸術作品
ゴシックホラーの素晴らしいところが詰め込まれた作品。懐かしさもありつつ、色褪せない世界観と美しさに大きなスクリーンで観に来てよかったと思った。奥行きのある映像美はまるで芸術のようで、またその世界観を引き立てる壮大な音楽も印象的でした。
キャラの口パクと吹き替えのタイミングにほんのズレがあったのは気になったけど、鬼籍に入られた方の声がまた聞けたのは嬉しかったし、今もご活躍中の声優さんはお変わりなくて凄いと思った。私は関俊彦さんが好きなので、か弱い青年役に新鮮さを感じました。
バンパイアハンターの『D』は紳士というか、まるで武士のようですね。無口でクールで約束を忘れない、漆黒のダンピールかっこよかった。どこか切なさとか哀愁があって、キャラクターとしても好きです。右手に宿るモノとの会話もユニークで、ダークな雰囲気一本になるところを緩和してくれました。もっとモンスターとか人間側も魅力的だったらよかったかもしれない。
何年か前に菊地秀行さんの原作シリーズをずっと読んでいたけど途中で止まってしまっていたので、また読みたくなりました。再上映ありがとうございました。
昔だからできた傑作
永遠の傑作
過去アニメ化されたスタジオライブ版も今回上映されたマッドハウス版もお話の基本フォーマットはほぼ同じと受取りましたが、むしろこういう原作世界観を端的に表している鉄板シナリオをそのままに、担当クリエイターの個性や進化した映像表現、そして演じるその時代のベスト声優さんらの招聘による素晴らしい演技でブラッシュアップされた本作は、何度観ていても毎度引き込まれる傑作と評価します。
定番ミュージカル同様、同じシナリオを時代時代のクリエイターが手がける…みたいなカタチで後世に残せないものかと改めて思いますが、今作公開からすでに20年以上経つと気づき愕然となりました💦
いつになるか分かりませんが、もしまた新たなリメイクが行われるとなった暁には今回星5つけなかった理由、スタジオライブ版を越えることのできなかったと感じた音楽面、つまりTMのYour songを凌ぐ名曲を感傷溢れるエピローグに充ててほしいと期待しています☺️
観て損なし!
原作の菊地秀行氏は、アニメ化や実写化に対して後ろ向きな姿勢を見せていますが、川尻善昭氏は特別な扱いを受けています。
彼は『魔界都市<新宿>』と『バンパイアハンターD』というジュブナイル系看板作品を2本も監督している稀有な存在です(なお、私の記憶が正しければエイリアンシリーズは未だに映像化されていません)。
菊地秀行作品は個人的にはアダルト系(いわゆる伝奇バイオレンス系)にこそ真価が発揮されていると思いますが、ジュブナイル系にも多くの傑作があります。
本作は原作の魅力を余すところなく映像化した作品として記憶に残っています。
そして、どういう経緯かはわかりませんが、日本語吹き替え版が一週間限定で初(再?)上映されることになり、近所のシネコンでも上映されるということで、見逃せないと思い鑑賞しました。
2001年当時はレンタルビデオ(VHS!)で観た記憶があり、ストーリーもうろ覚えながら印象に残っていましたが、ストーリーや作画の品質の両面で現在の劇場上映に十分耐えうる内容でした。
初見の人には、ある種の衝撃を受けるほどの内容だと思います。
改めて当時の川尻善昭氏とマッドハウススタッフの力量を感じさせるとともに、多くの方が鬼籍に入られている声優陣の演技も相まって、良い作品は20年、30年前のものでも色褪せないという認識を再確認しました。
原作シリーズ未読の方は世界観や設定などに説明不足を感じるかもしれませんが、近所で公開している劇場があれば(一週間限定ですが)、観て損なしの良作だと思います。
最後に、前述の通り菊地秀行作品は傑作揃いですが、映像化が少ないのが残念です。
アダルト系は難しいとしても、ジュブナイル系のエイリアンシリーズやウエスタン武芸帳などは映像化向けに良い素材だと思いますので、原作者も考えを改め、どんどんアニメ化や実写化に門戸を開いてほしいですね。
ゴシックホラーを堪能
上質で普遍的で開拓者であるアニメ映画
2025年の今に「劇場未公開だった、日本語吹き替え版」で
映画館でバンパイアハンターDが観られた。
まさにここまで生きてよかった、ですね。
大画面で、当時乗りに乗っていた林原めぐみさん・ 山寺宏一さんの名演を味わえます。
2001年のときに私は中3で、本作をレンタルで見てとても感動しました。
当時の故郷は中学生以上がアニメを観るなんてありえないとされていて、深夜アニメで放送されていた「哲也-雀聖と呼ばれた男-」や「グラップラー刃牙(神イントロッ)」ですら、教室で話題として出せる空気ではありませんでした。今では考えられませんね。哲也も刃牙も漫画は教室内の男子ほとんどが読んでいたのですが、それでも「アニメなんて小学校低学年が見るもんだろ……」という空気です。ポケモンのアニメが始まったのが小4ぐらいで、当時みんな初代のポケモン赤緑にはドハマリしていましたが、「たとえポケモンでも、アニメなんて……」という空気です。小5や小6で。ガンダムもOVA作品には超ハイクオリティなものが数多くありましたが、「ガンダム」の4文字で幼稚なものとして避けられていて、各自が各家庭でこっそり見るものでした。
エヴァはちょっと例外です。あれはその若者に対する威力ゆえに、アニメではなくエヴァとして見られていたというか。
とにかく、大人やその入り口に立った者たちは、アニメを褒めることが許さなかった時代がありました。
そんな中、突破口を開いたのはまず「カウボーイビバップ」、次にこの「バンパイアハンターD」だったと覚えています。
立場のある大人たちが「いや、アニメにも(大人が大人の感性のまま楽しめる)めちゃくちゃいい作品はあるよ」と、公然と言い切れる、人に勧めて納得してもらえる、その最たる作品がまずカウボーイビバップでした。特にプロの音楽活動をされる方々が、テレビや演奏会等で「実は、アニメの曲なのですが」と前置きして、カウボーイビバップの曲を披露してリードしてくれましたね。
ビバップだけは中学生以上が堂々と褒めていい確信的なアニメであり、ビバップで「え……普通にめっちゃかっこいいし面白いかもしれん……」とグラッと来た人に「じゃあこれもいいよ」と私が二の矢で勧めまくったのが本作、「バンパイアハンターD」でした。「いいかもしれん」を「マジでいい」に、疑いを確信に変える黄金必勝パターンです。その次に、サクラ大戦ⅢのOPを見せるかどうかは相手によりましたが。
オタク(当時は「マニヤ」という蔑称の方が多く使われていましたね。マニアではなく、マニヤという音です)嫌いのスポーツマンだったりヤンキーだったりも、意固地な逆張りマンは少なく、根っこには素直なものがありました。属性の重ならない人達も、超高品質な凄いと感じるものを浴びれば「すげえ」と手のひらを返して褒めてくれる……その原理原則を確信させてくれたのが、ビバップと本作です。それは私に、高品質という「力」を目指すという希望を与えてくれました。本作は、私のその後の人生において、常に大きな支えになってくれた作品です。
思い出話ばかりしてもろくでもないので、本作について。
言わずもがな映像はとんでもない。
戦闘シーンは、目の肥えた2025年に観ても最高レベルです。
緩急の付け方や脳が気持ちいいと感じる映像の流し方、その造詣の深さに唸らされます。
ストーリーやテーマも、2025年に観ても一切古くささがありません。
人やそれに類するものの普遍的な本質を描いているから、時代のふるいで落とされることがないのです。本作で一番成長したのは誰か、それを成長させたのは何か、そしてその結末は……と、全体を貫くテーマの観点から綺麗にまとまります。もうなんか、およそ全てのストーリーとはこれだけでいいのではないかと思わされる雑味の無さです。
演出については、現代作品なら単なるかませに描かれそうなマーカス兄弟たちがバリバリ強く、Dやマイエル=リンクがさらにその上を行く強さを見せるというアゲ方がいい。こういった演出の塩梅は、むしろ現代では失われてしまったかも。今やこの良さに触れていないクリエイターが多いのか、主人公の踏み台役となるキャラたちは強さや精神性、プロフェッショナル感のどれにもおいて嘲笑の対象として描かれがちなので。
欲を言えば、もう少しバリバリ戦闘シーンがあった方が、企画的には嬉しいところ。武人肌の狼男との戦いもフル尺で見たかったですね。もしかすると、「バトルそのものを楽しむ」というよりは「(西部劇的な、一瞬で決着がつく)決闘シーンを楽しむ」という解釈で戦闘シーンが作られたのかもしれないと思いました。つまり必殺対必殺で即決着、ゆえに進行というパッケージング。バトルシーンがバトルシーンとしてそのまま売り物になるという確信が、今ほど無かったのかもしれません。それでも、2001年当時では見所として十分すぎましたが。
総評として、「2025年のレベルの相対評価」で星4.5とさせていただきます。
2001年の初公開時なら間違いなく星5であり、そして個人的としては私の人生を作ってくれた大恩から、2025年でも星5の作品です。
この、どこかしこでアニメの話題をしても後ろ指を指されなくなった時代、それを作った最も功績のある源流の1つです。ぜひ見て欲しい作品。
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