「Dなみに未来にも残って欲しい映画」バンパイアハンターD(2001) 弁明発射記録さんの映画レビュー(感想・評価)
Dなみに未来にも残って欲しい映画
はるか昔に一回観ているはずなんだが全然覚えてなかった。
これは本当に優れたアニメーション作品。
2025年に限定上映されることになり、もうすぐ閉館する有楽町東映で観た。
客層は男女比6:4くらい。平均年齢は高め。
しかしこれだけ優れた作品なのにおそらく日本人にもほとんど知られてないのは勿体無いよな。
話としてはバンパイアがいてバンパイアハンターの男が戦うよ、というタイトル通りのあれなんだが。
まずよく動く。そして初見でも世界観が何となく分かりやすい。
これだけこだわりの美術やキャラデザインを見せつけながら、これだけ分かりやすいのはそれだけですごい。世界観や絵をしっかり作りつつでも分かりやすく両立させるのってすごく難しいから。
天野喜孝の絵がよく動く!というイメージだったのはその通り。
Dの手に取り憑いてる吸い込みじいさんも一輪車じいさんも覚えてなかった。
ボウガンアニキも幽体離脱アニキもなんか刃的なの投げるアニキもでかいアニキも全く覚えていなかった。もちろん金髪ショートヒロインも。
序盤からまあよく動く。
というかそもそも未来世界の話だったんだというところから観て思い出したくらい。銃の未来感。アニキ達が乗る装甲車のSF感。Dに依頼をするご主人の車椅子も近未来仕様。ゴシックホラーかつSFなところが今作の魅力の一つなんだ。
敵は影移動野郎、緑液体ネキ、腹狼マンとこれまた色々いてそれぞれのアクションを披露してくれる。緑姉さんの攻撃の手数の多さはそれだけですごい説得力よ。
馬がやられてDが村で馬を買おうとするんだが村の奴らに出てけ!言われて。しかし馬を売るじいさんが昔助けてもらった縁でDをかばうのよ。でっかい銃で村の奴らを脅して。これくらいでかい銃を持つ絵面は覚えていてもいいはずだが全く思い出せなかった。
終盤に出てくるあのでけえ城のデザインも立派。悪魔城ドラキュラ的な。吸血鬼の女王っぽいデザインの女王が住んでる点含め。
あの女王が終盤で復活しかけて血の色肉体が出てくるアニメーションのおぞましさ。
ラストのロケットが飛んでいく場面で金髪ショートネキが飛べ!飛べ!と言う展開。
そしてラストシークエンス。はるかに時が経ち金髪ショートネキが死んだ葬式に来るD、しかし意外と親族がいてそっくりな孫に「来ないの?」言われても拒否して去る「永遠に生きるキャラの悲哀」。ここで手のじいさんに「おセンチ」と言われてしまうそのコンビネーション。このラストのあたりは何とく覚えている。そうそうこんな感じと。
全て無駄がなく美しい。と言いたくなるこだわりぶり。
感想で思わず「美しい」という単語が出るくらい作り手の思いは伝わってくる。
こういう志が高いのはもっと知名度上がっていいよな。
エンディングの曲がちょっと軽いよな、合ってるのか?と当時も思ったことを思い出した。
でもこれだけ重厚な作品というのはどうしても敷居が高いイメージがあるから、これくらいポップな曲で何とか一般層にも浸透させたかったのかもしれない。
これ「一見敷居が高そうに見えるけれど全然そんなことはなく前情報なくても楽しめる」映画なんだけれど。よくまとまっているがゆえに消化しやすくて忘れてしまうのかもしれない。日本はアニメの名作が多いから贅沢な悩みだよな。
でも今作はずっと未来にも残って欲しいよな。それこそDがずっと生きるように。日本のアニメの歴史を彩ったひとつとして。