劇場公開日 2001年3月24日

「情報誘導のそら恐ろしさ」日本の黒い夏 冤罪 Bluetom2020さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0情報誘導のそら恐ろしさ

2024年9月1日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

風光明媚な美しい街と全く符合しない凄惨な事件。事件は実際に見聞きしていた自分の情報整理になった。あの頃は、圧倒的に繰り返す同じ報道を信じるしかなかった自分への検証でもある。
恐ろしいのは、確固たる検証を怠って市民を誘導してしまうマスコミの姿勢、それに乗せられて真実を疑うことなく迎合する市民、メンツのために科学的立証もなく犯人を作り上げようとする警察。日本人の従順で真面目な国民性を考えると本当にこわい。
前の戦争に至る大日本帝国の系譜のまま。戦後も帝銀事件、和歌山カレー事件などあいまいなままで有罪。本件だって、オウムがなければ、被害者が犯人に仕立て上げられる可能性もあったんじゃないかな。
事実はわからないけど、本編の救いはTV局キャップと冤罪被疑者の態度が冷静で論理的であったところかな。寺尾さんの演じる主人公にはただただ拍手を送りたい。よく頑張った。
報道記者の北村さんの、「肩の荷が下りた」セリフと涙がこの作品のすべてを語っているのかもしれない。
戦後史を語るうえで日本人が忘れてはいけない事件、ぜひ見ておくべき作品と思う。

Bluetom2020