地球交響曲 ガイアシンフォニー 第四番

劇場公開日:

解説

母なる星・ガイアの生命について、霊性(スピリチュアリティー)をテーマに綴る長篇ドキュメンタリーの第4作。今回は、生物物理学者のジェームズ・ラブロック、伝説のサーファーであるジェリー・ロペス、野生チンパンジー研究家のジェーン・グドール、版画家の名嘉睦稔をフィーチャーしている。監督は、前3作に引き続き龍村仁。撮影を「地球交響曲 第三番」の赤平勉が担当している。HD24pよりキネコ作品。

2001年製作/135分/日本
配給:龍村仁事務所
劇場公開日:2001年10月28日

ストーリー

ガイア理論の創始者である生物物理学者のジェームズ・ラブロック博士は、ガイアはそれ自体ひとつの大きな生命システムであると考えている。そして、そのガイアの命を守るのは複雑に絡み合う全ての生物。特に、ガイアが生んだ最新の生き物であり、意識を持つ人類の担う役目は大きいと言う。そんな博士が21世紀の子供たちに贈るメッセージは「個として生きよ」。ジェリー・ロペスは、サーフィンを通してガイアのエネルギーを感じ取ることが出来るカリスマ的存在のサーファー。ガイアの力は人間が対抗出来るようなものではないが、共に歩むことは出来ると語る彼は、そうすることで大自然と調和する道を開いてきた。そんな彼が21世紀の子供たちへ贈るメッセージは「漕ぎ続けよ」。人類の誕生は間違いではないと信じている、野生チンパンジー研究家のジェーン・グドールは、スピリチュアルな力に気づく為に人類は生まれていると感じている。彼女自身、ジャングルでの研究の中で幾度となくスピリチュアルな体験をしてきた。そんな彼女のメッセージは「希望、愛、相互理解」。版画家の名嘉睦稔が生まれた沖縄県伊是名島は、知る人ぞ知る神々の島だ。多くの伝説に囲まれ、大自然から学び、遊び、鍛えられて育った彼の芸術は、そうした日常生活の一瞬一瞬に刻み込まれたガイアの伝言と言えるかもしれない。そんな彼が21世紀の子供たちへ贈るメッセージは「幸せはへりません」。

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スタッフ・キャスト

監督
企画協力
ブルース・ベイリー
プロデューサー
龍村ゆかり
前嶋輝
撮影
赤平勉
撮影技術
千葉清美
上保好則
水中撮影
古島茂
音楽プロデューサー
安藤賢次
主題歌
TINGARA
録音
林昭一
郡弘道
整音
桑木知二
三浦さおり
HD編集
岩立登志雄
内田憲吾
ビデオエンジニア
千葉清美
ノンリニア編集
澄川直己
ビデオ編集
岩立登志雄
内田憲吾
プロダクションマネージャー
沢渡光祐
助監督
長尾楽
ナレーション
木内みどり
榎木孝明
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映画レビュー

5.0Keep padding 漕ぎ続けよ

2022年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

幸せ

「持続可能な開発目標」のヒントが満載のドキュメンタリー。  とは言っても、ノウハウを教えてくれるわけではない。  その生き様・その人の哲学から何を受け取るかは、鑑賞した方々にゆだねられている。  監督の直観にピンときた方々を取り上げているという共通項はあるが、  宗教・国籍・生きている場所・専門は多彩。  ここに登場する方々は、その経歴を拝見すれば、偉大なことを成し遂げた方ばかり。  でも、そのような偉大なことをせよと仰っているのではない。  この映画に関しての、監督のインタビューでも、今すぐできる小さなことをすること、それが大きなうねりになるとおっしゃっていた。  地球(ガイア)は、ホメオスタシスでつながっているのだから。  例えば、Lopez氏のように、30mの波にはのれないけれど、ヨガや瞑想等で自分自身とのハーモニー、自然と調和する感覚を味わうことならできるかな。 地球はそれ自体大きな生命システムであるという『ガイア理論』の提唱者である生物物理学者Lovelock氏が仰る。  「優れた科学の業績はほとんど直感から生まれています。意識ではなく、無意識の領域こそ、心の最も偉大な部分です」  その直感を、自分に説明し、周りに説明できるように粘り強く考え抜く。諦めない。自分を信じ続けるその力。  大きな組織に属さず、手作りの研究装置で研究を続ける。その一つ電子捕獲検知器で、世界中を周り、農薬などに使われた殺虫剤の毒が世界中の大気に残存することを証明した。そのデータをもとにレイチェル・カーソンさんが、環境問題の古典的名著『沈黙の春」を書かれたとか。  その発明特許で得た資金を基に、単一の植物だけを育てるために疲弊してしまった農地や放牧地を買取り、多様な植物が自らの力でバランスをつくっていく土地に戻そうとしている。監督へのインタビューで語られた話によると、人間が計画した通りにはならないが、結果的に、人間が考えていたより遥に豊かな森になったそうだ。そんな話を聞いていると、自然自体に治癒力があると思ってしまう。                (パンフレットから補記) レジェンド・サーファーであるLopez氏が仰る。  「…エネルギーが海中に見事な水のトンネルをつくります。…トンネルの中に入ると突然世界が変わります。なぜか時間がゆっくりと流れ、音が消え、全身の感覚だけが研ぎ澄まされてくるんです。…」  「大自然の力は決して対応できるものではない。唯一の許される道は共に歩むことです。対抗しようとすれば必ず結果は悲惨なことになる。共に歩む…そうすればどこかに道が開ける。」  …絶対無音の世界…死と隣り合わせの世界…。映画では、泳げない私でもそんな世界を感じさせてもらえたような感覚になる。そんな世界の中で何を感じるのか、考えるのか。この雑多な情報のありふれた世界から隔絶された世界の中で何を掴むのか…。 野生チンパンジー研究家であり、今は子供たちのための環境教育活動家でもあるGoodall女史が仰る。  「Hope,Love,Understanding(この映画の字幕では「希望、愛、相互理解」と訳されている)」  どこにでもある標語だけど、女史の半生を知った後で、この言葉を呟くと、体が熱くなる。  「生き物に強い好奇心を持つことはすばらしいことです。しかし、命を敬う心を育てずに、ただ好奇心だけを拡大させてゆくと とてもひどいことになってしまう。今の科学の悲劇はそこから始まっています」  重い言葉…。競争原理だけで施策される今の教育行政。やれ、〇〇国より、計算力が落ちたとか。博士取得者が少ない日本。目先に利益のみが取りざたされるが、本当の教育ってなんだろう。  この映画に出演された方がなさるような、自然との調和を感じるとか、地面に寝転んでまたまく星を眺めるとか、鳥の声や風の音に耳を傾けるとか、そんなのは”ゆとり教育”には含まれない。以前あった”ゆとり教育”は”成果”を誇るものばかり。それって、”ゆとり”?”ゆとり教育”が間違っていたのではなくて、求めるものが、そもそも違う…。 版画家である名嘉氏が仰る。  「幸せはへりません」  …そうだよね。幸せは奪うものでも、比べるものでもなく、自分がどれだけ感じ取れるか。世界と、大地と、宇宙と、森と、村と、海と、動物・植物と、人と繋がり、対峙して、何を自分に与えるか、発信するか、なんだよねとしみじみ思う。  「悲しい事を怖がるとか悲しくあってはいけないと思う気持ちが、人が本当の幸せを信じきれない理由かもしれない。」  幸せになることは、こんなに簡単で、こんなに難しい。感情の揺らめきに耐えられると自分を信じること、どうして、これが一番難しいのだろう。 波が来なければ、来ない事を嘆き焦るよりも、待てばよい。ただ自分がすべきことをして。 そんな、とてもシンプルな勇気に気づかされる映画です。

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とみいじょん