「走る!走る!走る!そして走る!」映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲 tさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0走る!走る!走る!そして走る!

tさん
2017年12月9日
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興奮

あの有名な「ひろしの回想シーン」は本当にいいシーンですね。台詞なし。絵と音楽で魅せる。とてつもなく映画的なシーン。これと似たようなシーンは、カール爺さんの空飛ぶ家にある。あれはオープニングだったな。

このように、子供向け映画が、一瞬だけ大人向け映画になる、という展開はよくあります。過去のクレしん映画にもありますし、よくできたアニメ映画には大抵あります。しかしこれは邪道(いや・・・まぁ、王道なんだけど、)。すぐに子供向け映画に戻って来なければなりません。

この映画は
・・・戻って来ない・・・。
戻って来ないどころか、子供そっちのけで、行くとこまで行っちまいます。ラスト30分は、いったい何の映画を観てるんだろう???と思わせられます。

誰がなんと言おうと、ラスト15分以降の走るシーンに、全てが込められています。いやぁ凄まじい。

階段を登っていくしんのすけの作画がだんだんと荒くなっていくことで、古いものを断ち切ることの大変さを表現します。
みさえの「早く行って!」という短い台詞だけで、しんのすけの親離れを表現します。
劇中、野原一家の奮闘が何故かテレビ中継されているのですが、その奮闘をただ呆然と観てるだけの群衆を写すことで、群衆の気持ちが動いていることを表現します。下手な映画だと、「すげぇ」みたいなセリフを群衆に言わせちゃうんだけど、この映画ではそれをしない。いやぁ・・・ツボを分かってるね!

さらに、奇跡的なことがあります。
実は結構説明台詞が多いんですよ、この映画。ひろしが「俺は家族と未来を生きる!」とか言っちゃうんですよ。でもね。その説明台詞が全然ダサくない。
それは何故か?クレしん映画だからだよ!子供向け映画だからだよ!アニメだからだよ!多分、大人向け映画でこれやってたらすんげーダサいと思います。

いやはや、本当に凄い。
テーマや脚本が良いだけでは名作は生まれない。そのテーマを表現方法が良くなければならない。何故か?って、それは映画だからだよ。台詞ではなくて映像で魅せる。
みんなで力を合わせて、とか、未来がどうしたこうした、とか、家族が大切だ、とか、そんな凡庸なテーマ、今更お前に言われなくても分かってら。大切なのはどう表現するか?だよ。蓮實重彦も言ってるじゃねぇか。

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