「バブルと現代の日本の青春 この落差を知ることこそが本作を今観る価値と意義であると思います」私をスキーに連れてって あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
バブルと現代の日本の青春 この落差を知ることこそが本作を今観る価値と意義であると思います
バブル景気が立ち上がったその時代を切り取った見事な映画です
1987年11月公開
劇中はそのシーズンのクリスマス前のスキーシーズン突入から、翌1988年のバレンタインデーまでのお話です
誰もがこうありたかったキラキラと輝くようなスキー場での恋愛の物語です
登場人物達はそれぞれみな若者の憧れの職業についています
そして、それなりに自由になるお金と時間を持っています
なによりクルマを持っています
仕事が定時に終われば、仲間の集まるカフェバーに直行
いつスキーに行く?そんな相談をするのです
正に憧れの青春です
こんな素敵な恋愛は憧れでしかないけれけど、もしかしたらこんな恋愛を自分もできるかも?
ちょっと背伸びしたら手が届きそう
実際には馬車馬のようにこき使われて深夜まで残業で、遊びにいけるのはもっと上の世代の上司や先輩達なのですが・・・
それでも自分にも手に入りそう
次は私だ
そう思えた時代
それがバブルです
今から34年も昔のこと
劇中の女性の登場人物が「女26、色々あるわ」と言います
ということはこの女性はことし60歳の還暦を迎えているのです
それ程年月が過ぎ去ってしまいました
松任谷由実の楽曲は都合6曲使われます
バブルの高揚感がそのまま音楽になって本作と不可分にマッチしています
「恋人はサンタクロース」は今ではクリスマスの定番曲ですね
本作を21世紀に観る意味と意義はなんでしょうか?
こんな幸せな時代があった
誰もがこんな幸せな青春を謳歌できた
自分にもそんな幸せがきっとくると信じることができた時代
次は私だ
それが実現した人
見果てぬ夢に終わった人
たった数年遅く生まれただけで、そんなことも考えられない氷河期に突入した人
21世紀に生まれた人なら本作の青春をどう見るのでしょうか?
非現実的?
有り得ない設定?
こんな青春、こんな恋愛ができる人々がいるのならば、何故自分はそうではないのか?
何故越えられない壁があるのか?
理不尽さに震える人ももしかしたら居るでしょう
それ程時代は変わりました
それに比べて・・・
そう考えた時、ジョーカーは生まれるのかも知れません
バブルと現代の日本の青春
この落差を知ることこそが本作を今観る価値と意義であると思います