「日本で当時『SW』を作ったら、こんなのになりました…」惑星大戦争 THE WAR IN SPACE 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
日本で当時『SW』を作ったら、こんなのになりました…
東宝特撮1977年の作品。
ズバリ、『スター・ウォーズ』便乗企画。
タイトルは『SW』の邦題の予定だったが、原題のままとなり、ひょっとしたら『惑星大戦争 帝国の逆襲』とか『惑星大戦争 フォースの覚醒』ってなっていたかも…?
1988年、地球は遠い銀河の彼方から来たヨミ惑星人の侵略を受ける。
地球存亡の唯一の希望。それは…
宇宙戦艦“轟天”!
東宝特撮1963年の名作『海底軍艦』に登場した、東宝メカニック不滅の人気を誇る“轟天号”が、宇宙戦艦として装いも新たに復活!
頭部の巨大ドリルなどデザインは元の轟天号をベースにしつつ、よりSFチックなデザインになっている。
そんな轟天と敵の母艦“大魔艦”のクライマックス・バトル、スペース・ファイターと敵のヘル・ファイターのドッグファイト、主人公たちと敵異星人の戦い…。
王道的展開で特撮の見せ場もたっぷり織り込んだ、本格和製スペース・オペラとなっている。
…のだが、
果たして製作側は、ちゃんと『SW』を見たのだろうか?
触発や対抗意識はあったのだろうか?
それ以前に、やる気はあったのだろうか…?
だって、話は完全に『宇宙戦艦ヤマト』もしくは『海底軍艦』の宇宙版。
『SW』便乗作品と言うより、一大SFブームを受けて、よし、ウチ(東宝)でもSF映画を作ろう!…という企画だったのだろう。
しかし、東宝はかつて特撮SFの名篇を多く世に送り出したというのに、これは…。
『ヤマト』やかつての東宝特撮SFはそれぞれの面白味があるのに、本作は新味ナシの何処かで見た話の寄せ集め。
50~60年代は良くても、一応時代が進んだ70年代にこんな変わらぬ少年漫画的な話じゃ…。
ツッコミ所やチープさはご想像の通り。
開幕、いきなりミニチュア感丸出しの大魔艦にはドン引いてしまった。
ステレオタイプのキャラ設定ややる気の無さそうな演技。
セット感丸出しの秘密基地、轟天内、敵の本拠地がある金星や敵基地…とても高度な文明を感じられない。
ローマ帝国風コスプレの敵司令官、中東テロリストみたいな格好のザコ、可愛いゴリラの着ぐるみの獣人…コイツら、本当に脅威的な侵略異星人なの??
衣装と言えば、主人公たちが着る黄色のスーツはまんま『ヤマト』のパクリ。敵に捕まったヒロインは何故かボディコン風衣装に着替えさせられ、敵の好み?(このヒロイン、若過ぎて分からない浅野ゆう子!)
特に仰天したのはSF考証の無さ。轟天に乗って地球から金星まで9日間って…。幾ら何でもワープくらい使おうよ…。
童心に返ってのワクワクは多少あるけど、ハラハラもドキドキもナシ。
その年の夏に企画が始まって冬に公開という、『SW』の日本公開前の超急作業であった事は考慮するとしても…、
とてもとても、これが日本の『スター・ウォーズ』だ!…とは、恥ずかしくて言えやしない。
かつての東宝特撮SFの方を自信を持ってオススメする。
これが熟練のプロが作った映画?
ちと幻滅だわ…。