「のちの映画全般に大きな影響を与えた傑作」ルパン三世 ルパンVS複製人間(クローン) うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
のちの映画全般に大きな影響を与えた傑作
『カリオストロの城』以前に、製作された劇場版。映画製作の意義としては、テレビシリーズでは描ききれない、強大な敵に、ルパン一味がどう戦っていくかというスケール感があった。しかし、そんなことを飛び越えて、はるかに巨大な敵、神と呼ばれる存在に、人間がどう挑むのかというような壮大なスケールになってしまい、アニメでは扱いかねているような描写も見られる。
現実の世界情勢に即した脚本が用意され、大統領(民主主義の最高権力者)と書記長(社会主義国の首長)との電話会談の様子など、当時の緊迫したパワーバランスが分かりやすく描いてある。
また、冒頭の大がかりな警報よけの移動装置など、のちの多くのアクション映画に多大な影響を与えたであろう優れたビジュアルも楽しめる。
圧巻は、オリジナルのマモーが登場するシーン。巨大な水槽の中に培養された脳のイメージは、一度見たら記憶から消し去ることなど不可能なのではないだろうか。ある意味、トラウマ級の表現力のかたまりで、アニメが無限の可能性を秘めており、実写映画を大きく突き放していた時代の行き着いた終着点ともいえる。
ラストに、原始的な愛情のアプローチと、永遠の生命に対するルパンの感想=作者の姿勢が皮肉たっぷりに語られ、どこまでいってもマンガチックに逃げ回るドタバタ劇で締めくくられるエンディングは、構成としても非常に優れており、この展開は多くのハリウッド映画が今日でも模倣している。
意外にも、アクション映画の原点は、このアニメーションに詰め込まれているのではなかろうか。
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