汚れた英雄(1982)のレビュー・感想・評価
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森田芳光監督の「の・ようなもの」と同じく日本映画に新しい感覚を取り入れようということでは狙いは同じです
今日は2022年8月18日です
森英恵さんの訃報に接しました
昨晩本作を観たばかりでした
キョウコのイメージが重なる人でした
原宿の表参道沿いに大きなお店がありましたが、10年程前に無くなっています
日本人デザイナーが国際的な成功をおさめたのは彼女が最初だと思います
本作は1982年公開
バブルの数年前のこと
1979年の第2次オイルショックから3年連続の不況
かなりのインフレが進行中でした
先が見えない世の中だったのです
決してバブル前夜の好景気なんかじゃありません
団塊世代は35歳になった頃
彼等が社会の第一線で責任をもって現場を回す時代になりつつありました
森英恵さんは1920年生まれ
森英恵さんのように戦前生まれの本当に世界的な才能のある方は、既に60年代から海外で活躍をなされていました
その土台の上に70年代から80年代の日本の繁栄があると思います
団塊の世代も、その下の世代もその土台の上で踊らされただけなのです
70年代の資生堂のアート性の高い広告宣伝は1938年生まれの石岡瑛子さんの突出した才能によるものでした
そのアート的な香りを本作は纏っています
華やかで、煌びやかで、豊かであることは今ではバブルと決めつけられますが、決してそうではありません
バブルとは1985年9月のプラザ合意で始まったのです
それ以前はバブルではないのです
どちらかといえば不況を引きずっていて、バブル前夜の好景気なんてものではぜんぜんなかったのです
それでも70年代初期から80年代前半にかけてこのような作品を撮れる下地は既にできていたのです
それは当時の資生堂やパルコや丸井のテレビコマーシャルで、普通の庶民もこういう時代がきたのだと憧れをもって観ていたからなのです
それらの集大成が映画として結実しているといっても良いと思います
DCブランドというものが一世風靡しだしたのはこの頃からでした
MILK、ISSEY MIYAKE、BIGI、ニコル、Y's、コム・デ・ギャルソンなどは特に有名です
これらの服を購入して着たのは団塊世代よりも下の20歳代だった世代です
本作には、貧乏臭いものは徹底的に排除されています
ダサいものは一切画面に写りません
注意深くどんな小物にまで貧乏くささを感じてしまうものは徹底的に除かれて画面には一切映らないのです
たとえ物干し台であってもです
ミネラルウォーターなんて当時の日本人にはまだまだ縁遠いものでした
本作ではペリエが写ります
この頃からやれペリエだボルヴィックだ、エビアンだというようになったのです
プールの映像はことのほか見事です
晶の自宅のスタイリッシュなこと!
森英恵さんのような真に国際的な水準の才能の人達が目指したこうありたいカッコイい日本
それが本作なのです
見せ方次第やりようによって、日本の光景だって、日本人だって格好よくなれるんだという方法論を本作は提示しているのです
そのフレームの上で、本作の若者達のドラマが展開されているのです
本作はバブルの産物ではありません
国際的な場で活躍をしてきた人達が、その水準の映像の映画を日本で実現させようとしたのだと今なら分かります
監督は角川春樹その人
映画監督としては素人であることが却って幸いにしたのだと思います
かって大昔のテレビコマーシャルの世界にはあったあこがれの世界を映画にできています
もし佐藤純弥監督とか、村川透監督で撮っていたとしたらどうだったでしょうか?
こうはなっていないはずです
もし松田優作が主演だつたらどうなっていたでしょうか?
もっと暑く苦しい映画になっていたことでしょう
自分にはこれで正解だったのだ
こうなるようにすべて角川春樹その人が手を回したのだと思えてなりません
これこそ角川映画だと思います
角川映画が撮らなけばならない映像の仕事なのです
角川映画でなければ撮れなかった映像なのです
角川春樹は1942年の生まれ
団塊世代より5歳年上だったのです
撮影は仙元誠三
照明は渡辺三雄
美術は今村力
この3人が物凄い仕事をしています
こんな映像はそれまでの日本映画にはなかったものです
次元が異なるものです
そして悲しいことに今作以降には見当たらなくなるものなのです
主題歌は「汚れた英雄~Riding high」
挿入歌は「THE LAST HERO~ラスト・ヒーロー」
歌はローズマリー・バトラー
60年代から歌っていたらしいがよくわからない
その後はボブ・スキャグスとか色々な歌手のバックコーラスをしていた人
この時は35歳
ビックリしたのは作曲が日本人だということ
小田裕一郎という方
この人はサーカスの「アメリカンフィーリング」を書いた人です
以降、当時のアイドル歌謡を沢山提供していて松田聖子の楽曲が有名
1950年生まれだそうだです
作詞はトニー・アレン
この人はあのアフロビートの創始者のその人なのでしょうか?
同姓同名の別人と思うのですが?
「汚れた英雄」は日本のオリコンの洋楽シングルチャートで1982年12月27日付から11週連続1位を獲得しています
日本での企画ですから今から思うと洋楽チャートも変なのですが・・・
ともかく「汚れた英雄」は総合チャートでも最高順位は週間3位、登場週数は22週、累計35万枚のセールスを記録していますから特大のヒットです
ロッキー3の主題歌のサバイバーのアイオブザタイガーと双璧をなす1982年のヒット曲です
つまり時代の雰囲気は国際的な水準に追いついていたのです
松原みきの「真夜中のドア」は1980年、
山下達郎のアルバム「FOR YOU」は1982年で本作と同じ年の発売
竹内まりやの「プラスチックラブ」は1984年
なにやら世界的な流行になっている日本のシティポップはこの辺りの年代の楽曲が中心です
シティポップの音のイメージと本作の映像とは共通するものがあると思います
やろうとしたことは、ジャンルは違えど同じことだったのだと思います
森田芳光監督の1981年の「の・ようなもの」と同じく日本映画に新しい感覚を取り入れようということでは狙いは同じです
自分はどちらかを選べとなれば、断然本作を支持します
いずれにしても、2022年の日本は貧しくなったという想いが残ります
でも本当は当時の方が貧しかったはず
貧しくなったのは、もっと豊かになりたいという健全な上昇志向のバイタリティ自体が貧しくなったのだと思うのです
大藪春彦テイストはあまりないです
バブル… 時代の仇花
バイクファンは、バイクシーンを絶賛。
勿論、今の技術ならもっと迫力のある、ストーリー性のあるシーンを撮れるのだろうけど、これは80年代の作品。
何より、模擬レースを行って撮影したという、その規模に驚く。じゃ、主役級のスタントをしていたレーサー以外は、映画上のお約束(設定)はあるだろうけど、ある程度本気でレースしていたの?だから、迫力があったのだろうか?
勿論、晶夫のスタントをされていた平氏をはじめとして、木下氏等主要人物のスタントをされた方々の走りに興奮させられたということに間違いはないが。
晶夫もカッコ良かった。
80年代に憧れていたようなスタイルが次から次にと…。
あのウォークインクローゼットなんて、誰が(晶夫が?)洗濯物をあの中に収めるのかと突っ込み入れたくなるが、憧れる。
今では、笑ってしまうようなシュチュエーションも…。
でも、草刈氏がやっているとため息。
ジゴロ。
お金をちらつかせて、アクセサリーのように女性を侍らす男もいるけど、
晶夫のような男を侍らすのも、女の甲斐性。
そんな時代。
自分の夢(レース)の為に、周りの人をも道具のように扱う。
こんな人結構周りにいる。やっている自分は周りを道具のように扱っているつもりはないけれど。割り切っているだけ晶夫の方が潔いのか。
そんな人間関係では、家族も作れず孤独だろう。勢いがあるうちは人も寄ってくるけれど。今流行りの”ぼっち”、孤独死となるだろうけど、ここまで突き抜ければ孤高。”好き”と引き換えに。
人間、産まれてくるのも死ぬのも一人と割り切れば、これほどの”好き”にのめり込めるということも、また幸せか。日々、何をどうしたいのか、どうすればいいのか、迷ったまま時間を無駄に費やしてしまう身にはうらやましくもあり。
とはいえ、お金さえあれば何でもできると思いこんでいた80年代。努力が常に結果に結びついていた80年代。いつまでも上昇していけると思えていた80年代。
時代の仇花?
と感想は語れるし、大方の粗筋は思いだせるし、あるシーンも思いだせるけど、細かいところまで思いだせない。
イメージビデオのように、異次元の、バブル的な格好良さにひたる映画。
(原作未読)
公開当時はアレな映画だと思っていたのですが
ワインが如く、思い出の中で熟成されて今思えばなかなかの名作だったのかな
との評価に変わりました。
二輪四輪問わずにあれだけ大規模かつ見どころのあるヤラセ(?)レースをぶち上げたのだから、それだけでも本当にお見事というしかありません。
草刈正雄さんがドンピシャのキャスティングで。本当にカッコよかったなぁ。
絶頂期のイケイケ角川でなければ作れなかったでしょうね。
そしてやはり当時のバイク乗りにしてみれば金字塔的作品なのですよ。
おそらく多くのバイク乗りさんが、メットを“晶夫(平)カラー”にリペイントして被っていたはず。あのレプリカツナギも着て。もちろん私もそのひとり(笑)
峠をイケイケで突っ走るその脳内にももちろんローズマリー・バトラーさんのパワフルな歌声が(笑)
↑
道交法違反…
珍作の部類。
平忠彦のライディングが拝める映画
バブル前のバブルな映画
総合45点 ( ストーリー:50点|キャスト:50点|演出:40点|ビジュアル:70点|音楽:70点 )
物語をしっかりと描くのではなく、二輪競技を派手に描くのでもなく、色男がいかに派手で豪華な生活をしているのかをいかに格好良く見せようかと追求しただけの内容。バブル経済の前の作品だが、バブルな雰囲気を早くも感じさせる。場面場面を格好つけて描くことには熱心だが、物語の流れには力を入れていない。このちゃちで浅薄な演技と演出はさっぱり評価できない。若き草刈正雄の色男ぶりだけが見所。
当時の全日本選手権に出場していた平忠彦が代役で乗るせっかくの二輪競技も、競技自体を迫力のある重要な要素としては捉えていない。誰が何位を走っているのかすらろくにわからない。競技の様子がただ映されるだけで、駆け引きも何もあったものでない。角川春樹は監督をやらないほうが良い。
せめて心は、贅沢に
「笑う警官」などの作品で知られる角川春樹監督が、草刈正雄を主演に迎えて描く、本格ハードボイルド映画。
なんとも、現代は「節」辛い・・おっと失礼、世知辛い世の中である。そんなお茶目なミスもしてしまうほどに、「節」約、「節」電、「節」水・・何かと同じ漢字が目に飛び込んでくる。もちろん、「節」時代は当然の流れであり、否定する内容ではない。しかし、こう義務のように強制され続けると、心まで削り取られるようで寂しい心持がしないでもない。
そんな時代にあって、この作品は大いに歓迎すべき物語であろう。室内に水をどばどば溜め込んだプールを作って、シャンパン片手に物思い。かと思えば、実際に100万本はあろうかというバラを愛する女性に贈り、心を奪い取る。暖炉にワインを捨て、特大ベッドで恋人と煙草の煙に溺れる。
お風呂の水量をちまちまと調節して、安物ワイン片手に家計簿作り。かと思えば、格安牛丼店で愛する女性に「ちょっとは金かけなさいよ!」と叱られ、心は萎える。100円洗剤を愛おしく使い、もらい物ベッドシートが何やら臭い。そんな生活に満足している一般人としては、本作の世界は正真正銘、異次元世界である。
超絶なる男のダンディズムを具現化する主人公。派手なブランド物を着飾り、それでも顔が見劣りしない木の実ナナ。異国の香り漂う英語が飛び交い、「僕は泥棒だ。君の心を盗んでしまうから・・」と平気でのたまう草刈様。これは草刈正雄が語るから格好良いのであり、出川哲朗に言われても怒りしか浮かんでこない。なるほど、全てが完璧な贅沢空間である。
沈黙をもって描かれるバイクレースシーンも心が躍る大迫力。「削って、削って」がもてはやされる現代社会。せめて本作のような文句なしの「湯水の如く金じゃばじゃば」映画に触れて、心だけは贅沢に、豊かに過ごしたいと思う今日この頃である。いや・・草刈様、本当に素敵です。
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