妖怪百物語のレビュー・感想・評価
全5件を表示
妖怪裁き!
東宝特撮天下時代、“ガメラシリーズ”で対して人気を博し、“大魔神シリーズ”で特撮と時代劇を融合させ成功させた大映。
続いて挑んだのが…
妖怪!
大映の“妖怪シリーズ”第1弾。1968年の作品。
昨今も様々なメディアに出没する妖怪。
ほとんどが現代劇だが、本作は時代劇。
科学など発展しておらず、迷信や奇怪事がまだ恐れられ、信じられていた時代。
妖怪たちのコンディションもバッチリ!
登場妖怪は…
ろくろ首、からかさ、のっぺらぼう、大首…。
ラストの百鬼夜行では、わんさか登場。さながら“妖怪大行進”。
妖怪たちは特殊メイクや着ぐるみやマペット操演で造形、演出。
残念ながら『大魔神』のような目を見張る特撮技術ではなく、ちとチープ。
でもその手作り感が“妖怪”という古きから伝えられる奇々怪々な存在に妙にハマり、素朴でユーモラスさも漂う。からかさと悪徳商人のバカ息子のやり取りに至っては子供向け。
怖さも皆無。でも唯一、ろくろ首は妖しさ満点。
妖怪総出のラストの百鬼夜行は、幻想的で“美”すら感じた。
10年以上前に一度見ていたが、細部は忘れたものの、ろくろ首や百鬼夜行のシーンは妙に覚えていた。
話は…
悪徳商人と奉行が貧しい下町の長屋と社殿を取り壊し、岡場所を建てようと計画。余興で“百物語”を催すが、一つの物語が終わったらろうそくの火を消さなければならない“憑きもの落とし”のおまじないをせず、ルールを無視する。以来、奇怪な事件が起こり始め…。
ここで印象的なのが、妖怪たちが見境なくではなく、悪人どもを襲う点。
『大魔神』然り。大映時代劇の“座頭市シリーズ”や“眠狂四郎シリーズ”のように悪人を叩き斬る、『水戸黄門』的勧善懲悪。
悪人には必ず天誅が下り、実は意外と時代劇の定石を踏襲。
子供には楽しいが、大人にはドキリとちと苦笑い…かも。
この年にTVアニメでお馴染み『ゲゲゲの鬼太郎』が始まり、世は妖怪ブームへ。
いつの世も人々を怖がらせつつ魅了する妖怪だが、このブームが台頭して怪獣ブームが下火になったのは、怪獣ファンとしては複雑…。
タイトル前に、怪談を一つ終えるごとにロウソクを消す「憑き物落とし...
タイトル前に、怪談を一つ終えるごとにロウソクを消す「憑き物落とし」の風習の紹介。但馬屋の息子・新吉(ルーキー新一)が面白い。坪内ミキ子も若くて綺麗です。
ろくろ首、唐傘おばけ、のっぺらぼう、ラストにはこれでもか、これでもかといった具合に妖怪が登場。勧善懲悪の時代劇にしているため、下々の者には恐怖感が伝わりにくい(笑)。百物語中の、ろくろ首の物語はちょっと怖かったかもしれない・・・ラストの百鬼夜行は幻想的でうっとりできます。
怪獣とは出現する背景は違うが、怪獣映画の一変種には間違いない
1968年3月公開
ガメラ対宇宙怪獣バイラスとの併映作品
妖怪ブームは1968年1月から始まったゲゲゲの鬼太郎のテレビアニメ放映の人気爆発で始まった
1966年10月から翌年3月にかけて放映された実写テレビドラマの悪魔くんが好評であったことから、怪獣以外に子供にうけるコンテンツとしての可能性が浮上していたということだろう
妖怪や亡霊ならば、怪獣のようなミニチュアセットの破壊シーン等の金と手間の掛かる特撮はさほど必要とはされない
だから参入障壁は大変低い
むしろ過去の怪談映画のノウハウをそのまま流用できる
さらに怪獣映画を連れてきた大人も本編で楽しめるし、子供も妖怪がでてくるだけで退屈しない
怪獣映画と妖怪映画のカップリングは大変相性が合うといえる
大映はガメラを撮影する東京撮影所以外に、時代劇を得意とする京都撮影所をもっていたから、円谷英二しかいない東宝には真似のできない、特撮二作品の併映を番組にできるのだ
大映の京都撮影所は大魔神シリーズ3作品を撮っていたから、妖怪ならより簡単に撮影できる
むしろお手のものだろう
本編の時代劇のクォリティーは高く、21世紀の現代の観客の目でみると驚くほどだ
というか現代の時代劇のクォリティー低下の程が逆に痛感させられる
特撮のレベルは大したものではない
唐傘お化けなぞは人形劇レベル
それでも、俄かにかき曇り妖怪のでる妖しい雰囲気を照明や撮影で表現していく技術は高い
溝口研二監督の幽玄世界の演出で鍛えられた技が伝統となっているのが本作にも感じられる
後に黒澤明監督の遺作まあだだよが大映の製作になっているのはそこを見込んでのことだったのではと感じるものだ
怪獣は漠然とした恐怖を暗喩する存在だろう
ならば、妖怪とはなんだろう
高度成長期に国土が近代化され、生活が洋風化いていくなかで、打ち捨てられていく古い日本の姿、因習、迷信
そういうものではないだろうか
それが当時の人々の精神世界に影響を与えたのが妖怪ブームの正体なのだと思う
繰り返し妖怪ブームは何度か訪れるが、そのたびに日本の土着的おどろおどろした雰囲気は消えて行くのだ
だから妖怪ウオッチがああなるのも、正に21世紀の妖怪だから当たり前のことなのだ
あれでも現代の子供達には十分に過去の日本の土着的おどろおどろした雰囲気を感じているはずだ
妖怪もまたモンスターだ
怪獣とは出現する背景は違うが、怪獣映画の一変種には間違いない
日本の特撮映画の系譜で忘れてはならないものだ
全5件を表示