ゆきゆきて、神軍のレビュー・感想・評価
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これは放送はできないw
天皇をパチンコで撃った男、奥崎の一代記。なんともカルトな展開が観客を飽きさせない。信じられないようなシーン、破天荒な神軍上等兵の進撃。誰にも止められない。証言を引き出すためには殴る蹴るは当たり前。
最後のオチ(襲撃すべき上官の息子を撃った、誰でも良かった)はほんとに酷いw
すごかった
公開時に映画館で見て以来2回目。際もの的に見て楽しんでいたのだが、次第に恐るべき真実が明らかになっていく過程がミステリーの構成でとても面白い。
奥崎健三は字がとてもきれいで育ちの良さを伺わせる。人柄はまじめで誠実で、暖かい面もあるのだが、真に修羅場をくぐっており腹の据わり方が尋常じゃなく、あんな押し付けがましい人物とは絶対に関わりたくない。
笑えるのだろうか
奥崎謙三は、大まじめです。
奥崎謙三は、大まじめに「田中角栄を殺す」と宣伝します。
奥崎謙三は、大まじめに天皇にパチンコ玉を打ちます。
一般的に奇行と呼ばれる行動をとる奥崎謙三を、まともである私達は「狂人」と呼ぶのでしょう。しかし、彼の様な「狂人」を作りだしたのは誰なのでしょうか。彼の様な「狂人」が作り出された原因は何だったのでしょうか。
「戦争」という言葉を並べるのは簡単かもしれませんが、「戦争」という名の下で行われる数え切れないおぞましい出来事全てを私は経験したことがありません。「戦争」という言葉から数ある想像しかできません。
だからこそ、私は決して彼を笑うことはできないのです。
私が、彼と同じく国家権力によって数え切れないおぞましい経験をさせられたとするならば、フィルムの中の「狂人」は、奥崎謙三ではなく、「私」であったかもしれません。そこには、数ある想像の中で「戦争」を論じていたまともな「私」は存在していません。戦争の「責任」をひとり背負わされた「狂人」と呼ばれる「私」が存在しているだけです。
ゆきすぎて、圧倒。
名前は微かに存じ上げていたけれど、それにしても凄まじい。
狂気じみたアナーキストと見下してしまったらそれまでだが、
この圧倒的なグロテスク感に思いきりエンターテインメント
を感じてしまった自分は何なのだろうと思ったくらい超感覚。
彼の行き過ぎた言動を由とはしないけれど自身の持つ正義を
何が何でも押し通そうとする熱血魂は見上げたもので、今時
誰がここまでやり通せるものだろうかと驚いてしまう。彼が
例えば明らかにカメラを意識したうえで演技していたのだと
したらかなりの演技派といえるし、あのままの男だとしたら
(こっちが正解だろうが)危険極まりない発狂型コメディアン
として映像化されていて大成功といえる。ともあれ、真相は
明らかになればなるほどさらにグロテスクで吐き気がするが、
この事実を声にして戦争を認識させる過程に意味を持つ作品。
ある意味ダークヒーロー
類を見ない【怪物】がここに居る
戦争が生んだ大量の殺戮兵器は数知れず、しかしそれらを併せても遜色ない程の強烈なるキャラクターを持つ男がいる。
奥崎謙三
そのあまりにも凄すぎる行動の数々は、時には彼なりの“計算”が見え隠れするのだが、カメラはそれさえも敢えて余すところなく映し取る。
《戦争責任》は一体誰にあるのか?
それを明らかにする為にはどんな行動をもいとわない。
作品の中で、食人事件を自身で追求しながらも、その強烈な個性から印象が薄まってしまっているマイナス面もあるが、様々な問題点をも含め、全ては“俺が正す”とゆうとてつもないパワーに代えてしまう程に、類を見ない《怪物》がここに居る。
人は都合の悪い過去を色々な口実で封印する
2015/08/31、DVDで鑑賞。
初めは頭のおかしい狂信的な偏執狂かとの印象を受けるが、終戦後、隊長命令によって2名の兵士(吉澤徹之助、野村甚平)が銃殺刑にされた真相を当時の上官を訪ねて問答を重ねるやりとりを見ていくうちにこの人のほうが筋が通ってるじゃないかと見方が変わってくる。
奥崎氏の声が早口で聞き取りにくいので字幕が欲しかったw
結論としてその2名の兵士が死ぬ前に現地人の村へ行って芋を死ぬほど食ってこようと軍隊を抜けだしたことで、もう終戦後だったにも関わらず逃亡犯とみなされて処刑されたということらしい。
妹尾実、妹尾幸男、浜口政一、原利男、会川利一の5人で処刑し、小清水隊長と丸山軍医が立ち会っていた。
各証言の関連性、関係性が見ているうちに混乱したので2回めはまとめながら観た。それを書いてみる。自分や仲間のの保身のためにどんな言い訳でどんな嘘をついているか興味深い。
元軍曹、山田吉太郎
入院中。吉澤徹之助、野村甚平、2名の殺害には関わっていないが、36連隊・本体であった「くじ引き謀殺事件」の証言者。
奥崎から病気を天罰だと拘置所から手紙を送られる。
この場面では何も証言しない。
妹尾実(高見)(分隊長、元軍曹)
引き金は引いたが照準は外した。
そのあと小清水がとどめを刺した。
妹尾幸男 (元軍曹)
現場にいなかったので知らない。
奥崎の追求におざなりに立ち去ろうとして、奥崎に掴みかかられ、馬乗りで殴られる。110番。
会川利一(元伍長)
6人の下士官 原利夫、妹尾幸男、稲葉 小島 妹尾実がいた。
逃亡罪をでっち上げられたということはない。
軍医が言うには野村甚平さんはあある部落へ言って仮死状態になったので置いてきた。
原利夫(元曹長)
自分が銃殺に立ち会った6人の一人かわからないととぼける。
二人は最も大切にした兵隊だったと言う。
本人と遺族の名誉のために言えないという。
本人たちは不名誉なことはしていないと証言。
遺族二人と握手して涙ぐむ。
遺族二人の前なら話すと言い出す。
敵前逃亡の罪を被せられたと漏らす。
自分の銃は不発弾だったと発言。
浜口政一(元衛生兵)
うなぎや、商売の邪魔だと家族からけんもほろろ。
引き金引いてない。
野村は栄養失調とマラリアでほとんど意識がなかった。
二人が土人の家にでも行って芋でも食って腹一杯になって死のうと言っていたと証言。それで脱走扱いになった。
銃殺の命令は小清水ではなく、軍から出た。
野村の弟に人間の肉を食ったという不都合な真実の口封じに殺されたのではないかと迫られるが、それはないと言う。
吉澤の妹に立場の弱い兵士から食料にするために殺されていったのではないかと詰め寄られるがそれはないと言う。クロンボ(現地人の肉)かシロンボ(白人の肉)なら食べたという。
丸山太郎(元軍医)
丸山診療所
小清水が小泉大佐の命令で仕方がないと言っていたような気がする。
小清水が命令した。小清水が悪い。
小島七郎(元軍曹)
電話で会話。
小清水は当然、恨まれて殺されていると思っていた。
小清水が軍の命令だと言って殺した。
小清水政男(村本) 元ウェワク残留隊隊長
原住民の肉を二人が食べたから処罰したと。
軍命令で白豚(白人の肉)はダメ、黒豚(現地人の肉)は食べてよしとお達しがあった。
処刑には立ち会っていない、とどめも指していない。
死体も確認していない。
妹尾幸男(2回目)
隊長が銃を五丁持って、来いと命令した。
二人は逃亡犯だと言われた。
一丁だけ空砲だった。
現場で小清水が撃てと命令した。
妹尾実、妹尾幸男、浜口政一、原利男、会川利一の5人で処刑し、小清水隊長と丸山軍医が立ち会っていた。
妹尾実(2回目)
小清水が直接撃てと現場で命令。
山田吉太郎(2回目)
橋本儀一殺害の真相を語ることを頑なに拒む。
靖国神社に参ることで供養していると発言して奥崎に切れられ、乱闘に。
話すことでいろんな人に迷惑がかかるという理由で発言を拒む。しかし、粘る強く説得され徐々に口を開く。
原住民が食わなかった。兵士の中でも自己中心的なものから選ばれて殺され、食料にされた。
自分はジャングルで生き抜く知恵があったから、殺されなかった。
最初の方に祈祷師のような格好で出てくる、銃殺された兵の一人、吉澤徹之助の妹、崎本倫子が、妄想のように濡れ衣で処刑されて食料にされたと言っていたが、まんざら妄想ではなかったのが恐ろしい。吉澤徹之助、野村甚平の2名は食料にするために殺されたわけではなかったが、本隊の方ではそういうことがまかり通っていたのだから。
各証言者が初めは嘘をつくわけだけど、遺族や本人の名誉のためだとか、醜い現実を陽のもとにさらしても誰も報われないとか言っていたが、詭弁にしか聞こえない。やはりおざなりな罪滅ぼしで済ませて、今の平穏な暮らしを守りたかったのだろう。加害者はやったことを忘れるが、被害者はいつまでも忘れることができない、正にこれですね。
暴力と聖なるもの
どこまでも行けるところまで行って、たとえ途中で力尽きて行き倒れても、そこが、神の花の美しく咲く野辺であるなら本望だ…と題名は語る。
本物のテロリストがいったいどんな思考をしているのかと、私は最近、そればかりが気になっていた。
奥崎謙三は、私のそんなあまい「興味」を一蹴した。
革命と死と愛と神を、同時に見せつける。
共同体の維持のために暴力は発生し、なんらかのかたちで殺害が正当化される。
犯罪行為を隠蔽するのに、とりわけ最大の禁忌にまつわる殺害を隠蔽するのに、上官たちは「良心」を傘に何も語らない。
このとき、さてどうなるか、だ。
奥崎謙三は、神の供犠のルールにもとづいた復讐や制裁をおもいつき、当然に暴力を伴うことになる。「知らぬ存ぜぬは許されない!」とキレる。
目的と過程によっては、神は暴力を肯定するのか。人類にとって途方もない難題を残したまま、奥崎謙三は死んだ。
地獄の申し子
否応なく地獄を見ることになる。
多くの犠牲者、戦死者、餓死による日本兵の死者を出したニューギニア戦線から生きて帰った元兵士の奥崎謙三は、自ら神軍平等兵と名乗り、国家を否定し、昭和天皇や田中角栄に攻撃を企てる。この映画では、戦後40年近く経った80年代前半、終戦後にニューギニアの日本軍で兵士が2名処刑された事件について当時の当事者であった上官などを突然訪ね、言葉と暴力によって真相を暴こうとし、ついには拳銃による殺人未遂事件まで起こしてしまう。
奥崎の行動原理は宗教原理主義のテロリストと同じで、自分を神の道具とみなし、神の意志を体現する者だと信じているので、彼にとっては殺人行為でさえあらかじめ免責されている。そんなものは絶対に許容できないが、奥崎が暴き出した戦争の地獄、敵兵を、現地住人を、そして同じ部隊の日本兵をも殺して肉を食べた地獄は、あまりに凄惨で酷く醜悪で、奥崎の悪がかすんでしまうのだ。ここで自分の倫理観が揺さぶられる。
奥崎謙三は戦争の地獄が産んだ怪物だ。問題は、地獄の副産物による犯罪行為を断罪するだけでは、地獄に向き合うには不十分だということだ。
普通ってなに?常識ってなに?そんなもんガソリンぶっかけて火つけちまえ
復讐鬼
総合:65点
ストーリー:
キャスト:
演出:
ビジュアル:
音楽:
戦後数十年たってなお戦争の傷を引きずり続ける元兵士の人生のドキュメント。内容的にはきつい話だし決して楽しいものではない。
あまりに悲惨な経験をしてその中で生き残ったため、怨嗟の塊となって過去を引きずり続ける。天皇を糾弾し元上官を訪ねては非難し時には殴りかかる。延々と彼の負の感情が撮影され続ける。そしてそれを裏付ける彼の極めて生々しい経験がところどころで登場する。特に人狩りの話などはなかなかに衝撃的である。
だがこの人、恨みがあまりに深くて周囲が見えなくなっているとも思う。彼がそのような生き方をし続けるのは理解出来ないでもない。彼もまた悲惨な戦争と、当時の不合理な日本の社会の犠牲者であることに疑いはない。
だが最後に戦争に関係ない上官の息子を攻撃するなど、正直意味がない行動である。またお飾りで当時から殆ど権限のなかった天皇の戦争責任を追及し続けたところで、今更どれだけの人が幸せになれるだろうか。そのようなことをしても新たな恨みを生み負の連鎖を生むだけ。
戦後に軍から開放され自由になった自分の人生をも犠牲にしてまでそうせざるをえなかった、到底抑えることなど出来ない彼の感情。復讐の鬼と変わり日本各地を訪ねては恨みの言葉を叫び続ける男。見ていて痛々しくもあり、理解もある程度出来て同情の気持ちも沸き、最早取り返しのつかないことにこだわり続けて間違っているなと感じる部分もあり、とても複雑な気持ちになる。当事者でないとわからない部分があるのは間違いないのだが、自ら進んで永遠に続ける彼の呪いの人生と不幸を見るのは決して愉快ではない。
だが彼のそのような人生もまた、悲惨な戦争の結果というだけでなく、戦争の陰にある悲惨な戦争犯罪や必要以上の悪の結果である。そのようなことが具体例としてわかるという意味において、またそれから逃れられない男の生き様という意味において価値のある映像である。
衝撃の作品、戦争の悲惨さを知らなければならない作品
1987年の話題作だから、今から二十年以上も前の作品。ユーロスペースでの興行記録を未だに持っていると、原監督は豪語していました。噂だけは聞いていましたが、とうとう観てしまい、こんな恐ろしい映画があるのだということを再認識しました。今までドキュメントは取っ付き辛いと思っていましたが、今まで見たドキュメントが取っ付き辛かっただけで、がつんと鷲掴みにされ、引きずり回された驚愕の122分でした。この作品の3分の1ぐらいは、目をつぶり考え込まされていました。この作品自体の良し悪しは避けますが、日本の歴史の一面に大岡昇平さんが書いた「野火」のような歴史的な事実があり、それを知る事が平和な日本を築いていく事なんだろうと思い、この重い作品の紹介をしてしまいました。
DVDは発売しているそうです、覚悟して、でも是非、観てください。
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