闇の中の魑魅魍魎のレビュー・感想・評価
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「応為」に欠落していたもの
新宿K's cinema開催「奇想天外映画祭2025」で鑑賞。幕末の土佐で活躍した、エキセントリックな芝居絵を描く実在の絵師、金蔵(絵金)の物語。
若かりし頃の怪優、麿赤兒のギラついた演技や女優3人の芝居(とくに加賀まり子のドSお姫様)が光る。
50年前の作品なので、現在の目で見ると演出や芝居がクドいとこやろや、麿の舞踏家としての側面を知らないと意味不明な踊りのシーンがあったりとかツッコミどころは多々あるけど、全体的には満足できた。
「おーい応為」に求めていたクリエイターの描写はこれだった。
”絵金”絵画の実写化作品
「絵金」の愛称で呼ばれる幕末土佐の絵師・金蔵のお話でした。とにかくエログロの極致を行く作品で、裸は出て来るは人が死ぬ場面も多数。特に人が死ぬシーンはバラエティ豊かで、切腹、自害、心中、斬り合いなどなど、まるでカタログの如し。さらには色彩が極めて鮮烈で、真っ赤な鮮血がドバっと出て来る演出は効果絶大というか過剰とも思われるほどでした。ただこうした絵柄は、何れも絵金の絵画を実写化することを目的としたようで、これは偶然なのかどうかは分かりませんが、同時期に六本木のサントリー美術館で開催されていた「幕末土佐の天才絵師 絵金」展で、実際に絵金の作品群を見るとよく理解できました。
こうしたエログロなシーンが特徴の作品でしたが、それ以外にもいわゆる放送禁止用語がふんだんに使われているのも特徴でした。現在なら作中でほぼ使われない言葉が使われていて、さらにはこれを編集せずにそのまま上映したのも驚きでした。
また内容的に面白かったのは、絵金と友人の土佐藩士(江守徹)の会話。脱藩して討幕を目指そうとする藩士と、そもそも権力とか権威に興味がない絵金の会話は、学生運動に身を投じた若者のよう。やはり1971年制作の作品なので、この辺りは時代背景を映しているのだろうと思ったところでした。
俳優陣については、何と言っても絵金を演じた麿赤児が凄かった。今でも迫力がありつつも何処か妖怪チックな役柄を演ずることが多いですが、当時27~28歳だった若さがあるだけに、躍動感が半端ありませんでした。因みにチラシの妖怪のような化粧を施した絵金の姿は、最終盤になって出て来るだけでした。要は自分の作品中に描かれた人物が、絵金に憑依したってことなんでしょう。
いずれにしても、映画と展覧会をセットで観ると、面白さ倍増でした。
そんな訳で、本作の評価は★4.0とします。
幻のカルト作
映画が始まっていきなり現在では考えられないようなアンモラルなシーンが出てきて驚かされた。本作はかなり昔にVHSが出て以降、現在までソフト化も配信もされていない幻の作品となっている。どうもこの辺りに原因があるように思うのだが、今回は新宿・K's cinemaの『奇想天外映画祭』で上映されていたので、この機会に鑑賞した。
監督は中平康。原作は「血みどろの絵金」(未読)。それを新藤兼人が脚色して作り上げた作品である。
自分は絵金のことをまったく知らずに観たが、その破天荒な生き様、愛する雪との愛憎、平民から御用絵師に出世する中で自らの信念に迷いを覚えていく葛藤等、色々と興味が尽きず最後まで面白く観ることが出来た。
尚、後から調べてみたが、実際の絵金がここまで変わり者だったかというと、そうとも言い切れないらしい。そもそも彼の素性には謎が多く、本作はフィクションも混じっているそうである。彼が描いた芝居絵の中には鮮烈な印象を残す流血表現があり、それになぞらえて本作の彼のキャラクターが創り上げられているような印象を持った。
中平監督の演出はアヴァンギャルドなトーンを織り交ぜながら、時に過剰とも思えるエログロ表現が追及されている。もはや苦笑してしまうレベルだが、見世物に振り切った演出は中々痛快である。
また、絵金は平民の出自と御用絵師の地位の間でジレンマに陥っていくようになる。そこから反権力的な思想が見て取れるのだが、同時に倒幕の機運が高まっていた”時代”も感じられた。絵金の波乱に満ちた人生共々、時代の流れというのも興味深く観れた。
個性派揃いのキャスト陣も大変魅力的である。
絵金を演じるのは若かりし頃の麿赤児。後年の彼はユーモラスな一面を見せ、そこに親しみを覚えたが、ここでは鬼気迫る形相で異端の作家を太々しく怪演している。
絵金の親友を演じた怪優・土方巽と海辺で戯れるシーンは、暗黒舞踏よろしく躍動する肉体表現に見入ってしまった。
また、何かと絵金に突っかかる徳姫を演じた加賀まりこも大変チャーミングである。中平監督とは「月曜日のユカ」でコンビを組んでいるが、その時と同じく小悪魔的な魅力が上手く引き出されていると感じた。
電子音をフィーチャーした黛敏郎の音楽も作品に異様な雰囲気を加味していて面白い。
エログロの奔出にただただ圧倒される
エプスタインもビックリ!
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