八つ墓村(1977)のレビュー・感想・評価
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四百年の怨念が蘇る…血塗られた怪奇譚!
Blu-rayで4回目の鑑賞。
市川崑監督による「犬神家の一族」の大ヒットによって爆発的横溝正史ブームが到来していた時期に、松竹が巨額の製作費と2年余りの撮影日数を費やして完成させた超大作。
監督・野村芳太郎、脚本・橋本忍、撮影・川又昴、音楽・芥川也寸志―同じく松竹の「砂の器」を成功へと導いた布陣。これだけで本作のクォリティーは証明されたというもの。
ブームに上手く便乗したことと、妥協無き製作陣の熱意が実を結んだことで、本作は特大ヒットを記録。金田一耕助シリーズの中でも、今では抜群の知名度を誇る原作も、本作のヒットが無かったらここまで有名にはなっていなかったかもしれないと考えると、めちゃくちゃ感慨深いものが…。
角川映画・東宝製作の金田一映画と差別化を図るため、原作からの大胆な脚色が試みられているのが本作の見どころのひとつでございます。原作は怪奇風味のミステリーですが、本作は完全なホラーとして映画化。祟りを模した連続殺人を、本物の祟りとして描き出しました。
金田一耕助(渥美清が演じているというのも異色!)の推理場面を極力控えめにして風味だけを残し、怪奇譚としての趣を壊さないように工夫が施されていて、徹底しているなと思いました。さすがの名探偵も、祟りが相手とあっちゃあ、少々お手上げ気味というところでしょうか?(笑)
舞台設定も公開当時の1970年代に移し、現代社会と失われゆく日本の原風景、“呪い”や“祟り”などの日本古来からの因習や文化との比較と憧憬が籠められていて、まさに“ディスカバリー・ジャパン”。ここは市川監督版とも重なる部分だなぁ、と思いました。横溝作品は、このテーマを扱うのにお誂え向きなのかもしれませんねぇ…。
「八つ墓村」は過去に何度も映像化されているので、テレビドラマ版などをいくつか観たことがありますが、本作の面白さは群を抜いているなと思いました。
祟りを炙り出すような画づくりと、脚本の妙が炸裂していて、画面に惹き付けられました。怪奇とロマンに溢れていて、日本人のDNAに刻み付けられているものが呼び起こされる感じで、目が離せなくなる魅力があるなと思いました。
落武者を襲う村人たちの凄惨な殺戮場面、多治見要蔵の狂気の32人殺しのシーン、現代に巻き起こる陰惨極まりない連続殺人事件―それぞれの描写がリアルであればあるほど、恐怖が際立ち鳥肌が立つような想いでしたが、それでも夢中になって食い入るように観てしまいました。
鍾乳洞で繰り広げられるクライマックスが本作の白眉! 血塗られた怪奇譚を締め括るのに相応しい名場面だなと思いました。悪鬼のような形相で迫り来る祟りに取り憑かれた真犯人…。いやぁ、おぞましい…。愛欲、情念、得体の知れない何かに突き動かされての犯行…。
そんな不気味で恐ろしい世界観において、いい意味で異質な雰囲気を醸し出した渥美金田一の存在感…。そこだけ次元が違うのかなぁ、と疑いたくなるくらいに、安らかで優しいものが漂っておりました。やっぱり金田一耕助は天使か何かなのかもしれないなと思いました。
滅びの美学を感じさせる多治見一族の末路と祟りに翻弄された人々の行く末…。様々に感じ入るところがあって、とても心に染みて来る作品だな、と…。折に触れて何回でも観返そうと思いました。完璧な推理劇になっていないことも、飽きが来ないひとつの要因なのかもしれません…。
七生まで呪ってやると宣言した落武者たちが、滅び行く多治見家を丘の上から睥睨しながら不気味に微笑むシーンに、最後の最後で戦慄しました。夏八木勲…怖いよぅ! 祟りを生むのも人間、祟りに取り憑かれるのも人間、祟りを恐れるのも人間…つまり一番怖いのは人間、ということなのかな、と…。
※追記(2019/3/31)
萩原健一さんが3/26に亡くなられました。近年相次ぐ名優たちの死に、時の流れのやるせなさを感じる想いです。心よりご冥福をお祈り申し上げます。
※追記(2020/2/11)
NHKオンデマンドで吉岡秀隆版を観ましたが、やっぱり本作のクォリティーには到底及ばないなと思いました。
ヤバイ話しを圧倒的なスケールで描いた作品
横溝正史の作品といえば、「犬神家の一族」や「悪魔の手毬唄」のように、真犯人の動機にはある種の同情が感じられる話しが多いように思うが、この作品の真犯人には まったく同情を感じられない… つまりは、直接の動機は財産の横領って事なんだが 本人も知らないけど実は…という、思わずゾッとする話しで、事の発端は戦国時代の毛利と尼子の抗争まで遡る。そして昭和初期に実際に起こった「津山大量殺人事件」をストーリーに入れ込み 推理物語というより 昭和を代表する超大作のジャパニーズホラーに仕立て上げている。これらのシーンは、エグいし酷いしで「リング」や「呪怨」が登場するまで、長い間 日本映画で最も怖い作品と言えたのではないだろうか… スケール感も半端なく、神秘的な鍾乳洞の大きさや多治見家の大屋敷をセットとして作り、最後は本当に燃やしてしまう気合いの入れ方、そして激しく燃えて滅び行く多治見家を峠から笑いながら眺めている、夏八木勲さんや田中邦衛さん達演じる 八人の落武者の亡霊がトラウマになる位 不気味だった。当時、私は小学校5年生だったが、「八つ墓村」の「祟りじゃ〜!」とほぼ同時期に公開されていた 角川映画「人間の証明」の「お母さん、あの麦わら帽子 どこに行ったんでしょうね?」が流行語として競り合っていた。私的には、インパクトの強さで「八つ墓村」の圧勝でした。ただ、この作品のたった一つだけ物足らなさを言わせて貰うと、本当は金田一耕助が出てこなくても勝手に解決してしまう話しだという事ですかね〜 つまり、「獄門島」や「本陣殺人事件」のような常人がとても思いつかないトリックが無い事です。実際、小説の中では金田一さんは この事件と同時に岡山県で「悪魔の手毬唄」事件を解決していたらしいですし。
とてもよかった
寅さんシリーズを立て続けに見ているせいで、渥美清が出ると『男はつらいよ』の冒頭のコントみたいな場面に見えて仕方がなかった。
見ていたらちょうどショーケンが亡くなってしまったので驚いた。やった女が人殺しってだけでもドン引きなのに、あんな鬼ババアになって追いかけて来られたら、特に洞窟で追いかけられたらインポになってしまいそうだ。
津山三十人殺しは祟りではなくて、あんな因縁がないからこそ誰にでも起こりうる普遍性があって怖いのだと改めて思う。
映像化作品と原作の関係性
映画単体としては中の上、原作の映像化作品としては下の下、というのが率直な感想だ。
果たして映像化作品と原作の関係性とは、そして原作は一体どこまで尊重されるべき要素なのだろうか、という自分の中で未だに解消されることのない命題を更に膨らませる一作である。
原作版の八つ墓村とは閉鎖的な村社会という魅力的な舞台設定、現実に起きた事件を元にした背筋の凍るような背景、ミステリー小説の花形である連続殺人、不気味な民間伝承、豊富なキャラクターの相関図や心情設定、一般人ではあるが普通の人間故に応援しがいのある魅力的な主人公の、国内において非常に知名度の高い金田一探偵の推理、埋蔵金探しに関わる冒険小説としての側面などといった数多くの要素を、高い次元でまとめ上げた、非常に出来がいい作品である。
知っているミステリー小説の中では確実に上位3作品に入る程、この上なく原作版には思い入れがあり、それだけに一種のホラー物としてはそれなりの出来栄えなことを認めつつも、どうしても納得できない疑問や不満を抱えてしまうことにある種のやりきれなさを感じてしまうのである。
時間的、あるいは制作者の嗜好などの様々な制約によって、前述した原作小説の多くが完全にスポイルされてしまっており、代わりに自己満足としか受け取ることのできないようなシークエンスがそれなりの尺を使って挿入されているのが自分が感じた最大の問題点である。
例をあげるならば、慎太郎及び典子兄妹の削除によって、犯人美也子の動機が非常に短絡的で曖昧、その上支離滅裂になってしまっていること。それに関連して、田治見家と慎太郎の因縁、そして各キャラクターの設定と魅力、相関図(典子と主人公辰弥、義姉春代との奇妙な三角関係)が全くなかった物となり、奥の深い人間関係の描写が大幅に劣化してしまっていることだ。
他にも主人公が性格の改変で無口で陰鬱な、細かな心情が不明な応援し辛いキャラクターとなってしまい、観客としての没入感が大幅に薄らいでしまっていること。
慎太郎の削除によって田治見家の人間がいなくなることにより資産を受け取るのが犯人である美也子な為、民間伝承に関連した祟りに偽装する、という連続殺人の設定が完全に破綻してしまっていること。またそれに関連して雷に打たれた杉の伝承を利用して対になる存在の片割れを抹殺するなどの魅力的な設定が完全に削除されていること。
財宝探索のパートが丸ごと削除されており読後に得られるカタルシスが一切なくなってしまっていることや各種キャラクターの動機や因縁が薄らいでしまっていること。
村人がただの群衆と化してしまい、辰弥との因縁、そして村そのものとの因縁が完全になくなってしまっていること。
そしてなによりも、これが一番衝撃的だったのだが、最後のシークエンスで金田一探偵がオカルトに基づく結論を許容してしまい、話を完結させてしまっている、ということである。
これは子供向けの童話を昼ドラに、ノンフィクション伝記をオカルトSFに、デビルマンをデビルマンに改変してしまう軽薄で絶対に許されない愚行であり、この要素を抜かすなら一体何をもって原作を下敷きにした映像化作品なのだろうか、と首を捻りたくなってしまう。
これらの要素を全て排除して、本作が導入したのは“落ち武者の復讐”という一部の限られた要素を膨らませることと“関西中国地方紀行映像”、そして“暗黒かつ複雑な構造の洞窟を延々と疾走する辰弥と美也子”である。
原作の魅力のほとんどを捨て、やりたかったのは金田一探偵が被害者が多数出ている連続殺人の現場を離れ各県を廻り、各関係者の家系図を調べていた、というミステリー映画なのだと思うと、視聴後肩の力が抜けるような感覚を味わったのだった。
繰り返しになるが、仮にオリジナルのホラー作品として見れば映像的にも物語的にも及第点であり、そういった観点から見れば評価することができる、ということは頭では理解できる。
しかしながら、内容の多くを改変し、全く別物に変えてしまった上で映像化作品として世に出す、という選択とは、原作小説のネームバリューを利用するという商業的な利点以外で一体何の意味があるのだろうか。
時間的な制約という側面から考えても、ミステリーという作品の根幹を大きく作り変え、その上で使える筈だった設定の数多くを捨てそれなりの尺を使って意味のない風景映像や文字通り、怪奇な映像を挿入されては、原作とは全て監督の自己表現の為に消費されてしまっているのではないか、という疑念を否が応にも抱かされてしまう。
原作を利用する映像化作品の創造性と原作への尊重という対立した関係性。
今日においても中々解消されないこの問題から自分が解放される日は果たして訪れるのだろうか。
ツッコミ所多数だが見ておくべき横溝
横溝小説は何度も映画化されているがその中でもかなりの珍品といっていいだろう。渥美清が金田一だが思っていたほど悪くない(良くもないが)
まず設定。小説では金田一さんが事件を解決するのは昭和20年から30年代にかけて。その『時代』がリアリティの無い無茶な殺人を納得させるための仕掛けでもがあるのだが、この映画は現代(昭和50年代)とはっきり言っちゃってる。こんだけ人が死ねばどんな田舎の事件でも警察総動員して動くよなぁ。
主人公ショーケンは70年代雰囲気たっぷり演技に徹し(それはそれで悪くないが)渥美清や他の演者との差が激しい。
ただ見所はあって、気味悪い双子老婆とか、小川真由美の追っかけとか、山崎努のあのスタイル!とか。あと女優が皆さん綺麗。中野良子さんが特に美しかった。
随所にあるそのメイク濃すぎだろ!とかツッコミ所は多い。2時間半は長過ぎだろとか(中盤30分はカットできると思う)
市川崑横溝映画とは比較にはならないが、山崎努のあの姿だけでも観ておくべき映画と言えます。
夏がくるとみたくなる
自分にとっては風物詩(笑)と同時に「エクソシスト」と並んで東西最恐ツートップ。
これが怖くないという方は刺激の強い映像になれてしまい、例えば落武者惨殺の場面とか今みるとかなりわざとらしいというか、いかにも人形だったりしてシラケてしまうのかな。
あるいは言っちゃ悪いが、想像力が貧困すぎる。この映画全体にただよう雰囲気がもうやだもんね、恐すぎて。
田治見要蔵、山崎努が桜吹雪のなか、まっすぐ画面に向かってくる場面のジャケット。もうね、うちに置いとくなくて売ったもんDVD(笑)
さすがは野村芳太郎監督というもんですよ。
しかも原作からかなりかけはなれていく、犯人も正確には違う。まあ、共犯者がいるんですわ、原作は
それに、原作はどんどん冒険小説になって言って、最後もある意味ハッピーエンドなんだよね。自分もあまりの違いに驚いちゃったよ
今なら原作クラッシャーとか散々言われそう。
先祖からの怨念という部分に特化して、完全にホラー映画にしてんだもん。
しかし、ゆえに推理の部分はだいぶなおざりで、渥美清の金田一はたいした活躍もしない、まあこれも原作でもそうなんだが。
あくまで主役は田治見家とそれに関わる村の人たち、金田一は単なる案内役という感じだ。だからトレードマークの例のカッコもしてない、あれはでも市川崑が考えたんだけど。石坂浩二もいっしょにかな、詳しくは知らぬ。
とにかく、人間の怨念、それに恐ろしい偶然の連なりによる殺人の連鎖。
人間の執念や狂気などいろんな要素が含まれる映画。
なんだか、ぬるーいアニメみてるくらいなら、八っ墓村観ましょう(笑)。金田一シリーズを観ましょう。
なにとは、誰とは言ってませんよ。ぬるーいアニメってね。
山崎努&小川真由美恐い❗
山崎努が夜の桜吹雪の中、迫力ある音楽をバックに蒼白の顔で懐中電灯を頭に2個つけ猟銃と日本刀を持って走ってくる姿は今でも脳裏に焼き付いているし、洞窟の中で小川真由美がふわふわ跳ぶように啜り泣きながら追い掛けてくる姿も脳裏に焼き付いている。
そして能天気な渥美清・・・。
とても印象に残る名作。
ちょっとだれた
金田一耕助役が寅さんだ!と思ってしまい、あまり集中できなかった…
動機や誰がいつ死んだかなど、わかりにくい
ストーリーより、桜を背景に狂人が走るシーンや、
日傘をさしながら階段をあがるシーンなどの
映像が美しいな〜と思った
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