「ヤバイ話しを圧倒的なスケールで描いた作品」八つ墓村(1977) 河田康雄さんの映画レビュー(感想・評価)
ヤバイ話しを圧倒的なスケールで描いた作品
横溝正史の作品といえば、「犬神家の一族」や「悪魔の手毬唄」のように、真犯人の動機にはある種の同情が感じられる話しが多いように思うが、この作品の真犯人には まったく同情を感じられない… つまりは、直接の動機は財産の横領って事なんだが 本人も知らないけど実は…という、思わずゾッとする話しで、事の発端は戦国時代の毛利と尼子の抗争まで遡る。そして昭和初期に実際に起こった「津山大量殺人事件」をストーリーに入れ込み 推理物語というより 昭和を代表する超大作のジャパニーズホラーに仕立て上げている。これらのシーンは、エグいし酷いしで「リング」や「呪怨」が登場するまで、長い間 日本映画で最も怖い作品と言えたのではないだろうか… スケール感も半端なく、神秘的な鍾乳洞の大きさや多治見家の大屋敷をセットとして作り、最後は本当に燃やしてしまう気合いの入れ方、そして激しく燃えて滅び行く多治見家を峠から笑いながら眺めている、夏八木勲さんや田中邦衛さん達演じる 八人の落武者の亡霊がトラウマになる位 不気味だった。当時、私は小学校5年生だったが、「八つ墓村」の「祟りじゃ〜!」とほぼ同時期に公開されていた 角川映画「人間の証明」の「お母さん、あの麦わら帽子 どこに行ったんでしょうね?」が流行語として競り合っていた。私的には、インパクトの強さで「八つ墓村」の圧勝でした。ただ、この作品のたった一つだけ物足らなさを言わせて貰うと、本当は金田一耕助が出てこなくても勝手に解決してしまう話しだという事ですかね〜 つまり、「獄門島」や「本陣殺人事件」のような常人がとても思いつかないトリックが無い事です。実際、小説の中では金田一さんは この事件と同時に岡山県で「悪魔の手毬唄」事件を解決していたらしいですし。
脇がしっかりしているからこその魅力は確かにありますね! 豪華キャストかつ全員が演技達者というのが素晴らしい限りです。
正直な話、今の邦画はベテラン勢は別として、“イケメンなだけ・美人なだけ”の俳優たちが飽和状態のように思います。演技力の面で言えばまだまだな作品ばかりな印象です。稀に当たりがありますが…(笑)
本作のような濃密で日本人の心の奥底に沁みて来るような邦画をもっともっとつくって欲しいですね!
コメントありがとうございます。
お褒めの言葉をいただき、大変恐縮です。励みになります。
感想文というより、うんちく・解説文みたいになりがちなので、気を付けたいと日々思っています(笑)
私はついこの間に原作を読了しました。どこが削られて、どこが強調されているのか…比較しながら読むのが楽しかったです。