劇場公開日 1996年12月14日

「企画意図を深く考えて撮ってないよなあという残念な思いが残るのです」モスラ(1996) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5企画意図を深く考えて撮ってないよなあという残念な思いが残るのです

2022年7月2日
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鑑賞方法:VOD

1996年12月公開
ゴジラは前年の12月公開の「ゴジラvsデストロイア」で一旦終了しました
ハリウッドゴジラの公開が予定されていたからです
よってモスラがゴジラがお休みの間、東宝の怪獣映画を背負ってたった訳です

平成ガメラシリーズの第2作は7月の公開ですから、その半年後の事になります
平成ガメラは子供向けにしてはハード過ぎの内容で、大きなお友達向けです
でも本作はモスラのキャラクターもあり、ソフト路線で、どちらかと言うと小学生の女の子をターゲットにしています

美少女戦士セーラームーンは1992年から始まっていて一大ブームとなっていいましたから、これと企画の狙いは関連しているのかも知れません

男女雇用均等法が施行されたのは1986年のこと
その頃生まれた女の子達がセーラームーンや本作を支持したということです

戦うのは男の子だけじゃない、女の子だって!という時代にこの少女達は育った最初の世代だったのです

本編監督は米田興弘
本作が監督デビューです
この人は古くは惑星大戦争、近くは平成ゴジラシリーズのいつくかの助監督とかなされてきています
しかし参加して来た作品一覧をみると、そのキャリアは特撮以外のところに情熱が向いていた人だと思われます
特撮は仕事と割り切った人だと思います
それが言い過ぎなら、怪獣映画なのにオタクの求めるものとは違う方向性を目指そうとする人だと思います
とにかく監督の実績を残して、怪獣映画ではない世界に行きたかった人なのだと思います
怪獣映画を撮りたくて撮っていないのです

何をいいたいかというとハッキリいってつまらない
その一言です

ファンタジーなのか、環境破壊への警告なのか、マスコミ批判なのか
よくわからないのです

少女向けの企画意図だと思うのですが、主人公は少年で不徹底なのです
妹はいるものの結局添え物です
彼女が活躍しないのです
ようは企画意図を深く考えて撮ってないよなあという残念な思いが残るのです

ただ特技監督は川北紘一なので、そこは安定感があります

物語は1961年の「モスラ」のリメイクではなく、リブートです
インファント島らしきものは登場しますが旧作品での設定とは関係ないようです
お約束の小美人は登場します
モスラの歌も新録音で流れます
地球環境の守護神としてモスラは登場します
かって封印した超古代の怪獣デスギドラが環境破壊によって封印が解かれ復活してしまいます
小美人の姉妹はそれを察知して再封印しようとするがという内容です

モスラとデスギドラの戦いは光線が飛び交い大変にきらびやかです
老いたモスラは幼虫の助けを受けるのですが敗れ去ります
海に沈むモスラはやはり悲しいものがあります
親を殺された幼虫は屋久島に向かい樹齢1万年に及ぶ大木の生命力をもらい新生モスラに羽化して最終決戦となります

最終的にデスギドラはまた封印され、戦いによって荒廃した北海道の森林は新生モスラの神秘的な生命力で一瞬で元の豊かな緑の原生林に還ります

という、まあありがちの展開です
その物語展開より一番面白くて映像的にも満足できるのは、小美人の仲間の悪女キャラのベルベラが登場する序盤の家の中のシーンです
デジタル合成が駆使されて楽しいシーンが展開されます
ベルベラの衣装デザインもセンスよく仕上がっており、ミニミニサイズのドラゴンに跨がって飛び回る映像はなかなかのクォリティーがあります

小美人役の小林恵と山口紗弥加よりも、このベルベラ役の羽野晶紀が目立っています
男性陣はテレビレポーター役の萩原流行が目立っていますがあとは空気です
主人公の少年の母親役の高橋ひとみが妙に色気が有りすぎです

それでも結構な興行収入となり、シリーズ化することになります
でも次の第2作の本編監督は別の人に交代する事になります
根岸吉太郎監督の映画の助監督に付くことになったからです
別に根岸監督の弟子でもないのに

そのあと平成モスラ第三作では監督に帰り咲きますが映画はそれが最後になります

あき240