劇場公開日 1961年7月30日

「聞屋的表現では若い女を皆“美人”と書く。」モスラ(1961) kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0聞屋的表現では若い女を皆“美人”と書く。

2019年5月19日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 放射能の影響を調べるため、国立総合核センターに収容された玄洋丸の乗員4人。彼らの証言により無人島であると思われていたポリネシア海域のインファント島に原住民がいることがわかった。子供向けに作られたはずなのにかなり難しい序盤の設定。ロシアとアメリカを足したような名のロリシカ国が島の近くで核実験をやっていたなんて・・・しかもロリシカ国と日本の合同調査団は、ロリシカ側のネルソンは新聞記者を排除し、得た資料はネルソンを通さなければならないという。いわゆる検閲だ。それだけ放射能の影響を秘匿したかった核保有国の欺瞞が見られるという内容。

 吸血植物に襲われた言語学者の中条(小泉博)は小美人によって助けられ、コミュニケーションをとろうとし、「核実験は行わない」の言葉に喜んでくれた。日本の隊員たちも新聞記者も小美人のことをそっとしておいたのに、ネルソンはその後に再上陸して彼女二人を見世物にするために捕獲したのだった。そして日本の劇場で公開。小さな馬車が吊られ、登場したザ・ピーナッツによる「モスラの歌」が披露されるが、幻想的で不思議な気分にさせられたものだ。

 なぜだか奥多摩湖から出現したモスラ。横田基地から青梅街道を経て渋谷近郊に進行するモスラに対するは、警察やら消防隊やらMPやら防衛隊。幼虫のままでも凄い破壊力のモスラは全長180メートル、体重1万2千トンだ。防衛隊の攻撃も空しく、モスラは出来たばかりの東京タワーへ上り、破壊してしまう。そして糸を吐き、蛹と化すのだった。成虫になる前に小美人をインファント島へ帰さなければ・・・と、現場ではロリシカ国から供与された原子熱線砲で焼き尽くそうとするのだ。

 そんな折、小美人を連れたネルソンはロリシカ国へと到着しており、ニューアークシティを成虫モスラが襲い、多大な被害を与えるのだ。この時期にアメリカ、コロムビア映画も全面協力しているところが凄い。ミニチュアセットもニューヨークを模して作られており、国際色豊かな作品となっていた。最後はいかにも平和的な解決法。核実験反対の意志も感じられつつ、核を内包した強力兵器を使うというのも若干矛盾している気がするが、ラストの印象よりも全てザ・ピーナッツに奪われてしまった感が残る。

kossy
トミーさんのコメント
2024年4月5日

共感ありがとうございます。
原爆投下への八つ当たりを、怪獣映画でする分には許されるんじゃ?と思いました。

トミー
kazzさんのコメント
2021年12月22日

そうですね、ザ・ピーナッツが持って行った感はありますね。
ロリシカは音的にはロシアをもじっているようで、ニューアークやMPを見るとアメリカですね。無人島だと思い込んで水爆実験を行ってしまった国という設定を米コロンビア映画がよく認めたな…と思ったら、結局提携は決裂したんですね。

kazz