劇場公開日 2002年5月25日

ALI アリ : 映画評論・批評

2002年5月15日更新

2002年5月25日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急系にてロードショー

マイケル・マン監督の技は名優があってこそ?

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数々の伝説に彩られたモハメド・アリの生きざまを、王座獲得と改名から、徴兵拒否とタイトル剥奪を経て、チャンピオンに返り咲くまでの10年間に焦点を当てたマイケル・マン監督の狙いは素晴らしい。それは社会から与えられたタイトルを、真に自分のものとするまでの苦難の道程。背景に黒人差別があるものの、ひとりの男が、人間としての誇りを賭け、自分に正直に、自由に生きようとした闘いに昇華される、はずだった。

確かに、1年に及ぶトレーニングを積んだウィル・スミスが、プロ・ボクサー相手に闘う試合シーンの迫力は身がすくむほど。が、リングを降りたスミスからは、抑えられない闘争心も、魂の叫びも、あまり感じられない。マルコムXに扮したマリオ・バン・ピーブルズの方が、役への思い入れの深さゆえだろう、控えめな描写にもかかわらず存在感を示している。また、白人でありながら、アリを理解し、気遣うTVキャスターのコーセルを、素顔がわからぬメイクで演じたジョン・ボイドも、アリ以上に印象深い。「ラスト・オブ・モヒカン」、「ヒート」、「インサイダー」と、闘う男を動と静の絶妙のバランスで熱く描いてきた監督だが、それは名優あっての技だったのだ。

山口直樹

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