劇場公開日 1970年8月8日

「ドロドロ三重奏」無常 だるちゃさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ドロドロ三重奏

2025年5月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

実相寺昭雄といえばたいてい、ウルトラマンやウルトラセブンの異色エピソードの演出家という肩書が真っ先に来るが、自分にとっては「帝都物語」や「ウルトラQ星の伝説」等の正統派特撮、あるいは「屋根裏の散歩者」や「D坂の殺人事件」や「姑獲鳥の夏」等のエロティックミステリーの様に、晩年の作品の方に秀作が多い印象です。
そんな実相寺監督が、ウルトラを離れて撮った第1作が本作で、断ち難い人間の情欲を嫌というほど描いています。
テーマ的には、ともすれば単なる成人映画になりがちな内容ですが、そこは実相寺監督の面目躍如で、後年まで多用される斜めアングルからの寄りで三半規管を狂わせられそうな映像だとか、顔の特定部分のドアップの多用とか、シャリーンという鋭い錫杖の音とか、一目で実相寺作品だと判別できる特長が処女作から盛り沢山だった事にニンマリしました。
なぜこのテーマを選んだのかは判りませんが、人間という愚かな生き物の、断ち難い情欲とか煩悩は、そのまま解放するのが自然であり、それを道徳で抑制しようとする事の方が不自然という、ある意味自分勝手な論理で、当時の腐敗した(?)まことしやかなイデオロギーに反発したかったのではと感じました。
制作年はちょうどEXPO70が開催され、日本が一番エネルギッシュだった時代なので、ともすればお利口で物解りの良い現代の若者よりは、昭和のギラギラした若者の方が、生き物としての生命力に溢れていた気がします。
テーマに共感する訳ではありませんし、主人公に感情移入する事も出来ませんが、とにかく、取り憑く島のない自由奔放で自己中な、悪魔の如き言動に、周りの人間が悉く巻き込まれて破滅して行く様は、まるで行く先々で伝染するコロナの様なふてぶてしさを感じました。

だるちゃ