劇場公開日 1995年7月15日

「心に沁みわたる純な青春」耳をすませば(1995) みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5心に沁みわたる純な青春

2022年10月13日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

本作は、誰もが青春時代に経験したであろうエピソードを織り交ぜて描く純な青春物語である。

アニメ映像が秀逸。綺麗過ぎず、あざとさがなく、落ち着きのあるアニメ映像で主人公達の日常を細やかに丁寧に描いているので、アニメとは思えないリアルさがある。台詞、ストーリー展開に無理がなく自然なので、素直に主人公達に感情移入ができる。

主人公・月島雫は高校受験を控えた読書好きな中学生。彼女は、図書館で借りた本の貸出カードにいつも載っている“天沢聖司”という名前が気になり始める。ふとしたきっかけで聖司と出会った主人公は、彼がバイオリン職人になるためにイタリアに行くという確かな夢を持っていることを知り、何の夢もない自分に苦悩する。やがて彼女は、小説を書くという夢を見つけ、その実現に向かって進んでいく。そして、彼のイタリア出発直前に、朝日を観ながら主人公は彼にプロポーズされる・・・。

本当は主人公が好きなのに、彼女の前では憎まれ口を叩いてしまう天邪鬼で不器用な男友達。女心が分かっていないと主人公に詰問される男友達。主人公に惹かれ始め、必死の思いで告白するが、いつまでも友達でいましょうという主人公の優しく残酷な返事に撃沈する男友達。等々。本作では、主人公の男友達が良い味を出している。彼と同じ体験をしている私は、分かる、分かると心の中で何度も呟いてしまった。貸出カードのエピソードも、ほぼ同じ経験があり何度も頷いてしまった。

このように、本作は、青春時代のあるあるエピソード満載であり、あの日が蘇ってくる。

ラストで、二人は、結婚を誓って夫々の夢を追いかけていく。二人の自己実現への新たな旅立ちである。

エンディングのカントリーロードの歌声は、宝石の原石のようであり、青春を象徴している。

大感動、大号泣はしないが、主人公達のピュアーな青春が心に沁みわたる。

あの日に帰りたい。素直にそう思える作品である。

みかずき