「しずくはドワーフという設定。」耳をすませば(1995) たまねぎ なきおさんの映画レビュー(感想・評価)
しずくはドワーフという設定。
先日この映画をハッピーエンドだと認識している友人がいたので再度地上波で見直して見ましたが、やはりこの映画はバッドエンドではないにしろハッピーエンドを示唆するストーリーでは無いと感じました。
まず、
ボーイフレンドのお爺さんは若い頃に交わした固い恋の約束は時の流れと共に薄れ、結局は守られる事は無く別の女性と結婚しています。
また猫の男爵も同じように恋を実らせられず一人で佇んでいます。
決定的なのは修理していた細工時計のテーマが主人公とボーイフレンドの事を表現しています。
細工時計のテーマは【ドワーフと妖精の住む世界が違うゆえの悲恋】です。
思い出してもらいたいのは、ボーイフレンドは一等地に住み 祖父は元PTA会長。卒業後は海外へ留学と、育ちの良くきらびやかな【妖精】で
主人公は団地住まいで将来の展望も無く 才能という宝を探す【ドワーフ】です。
主人公は夢の中でドワーフの炭鉱で目覚め、原石を探していることからも、しずく=ドワーフという設定は固いと考えます。
この時点で「叶わなかった若き日の恋」を示唆していますが
もう少し読みとくと
ボーイフレンドはラストで「もし、上手くいけばすぐに帰ってこれる」と希望的な発言をしていますが、実際は「かなり厳しく何年もかかる」という事も話しています。
そして、テーマ曲であるカントリーロードの歌詞は「故郷には帰らない」という言葉で締め括られます。
つまりはお爺さんや男爵、細工時計のストーリーのように
しずく達の若い恋は時と共に消えていってしまうという事が読み解けます。
私はこの映画は非常に奥が深く、楽しく、伏線の張りかたもスマートでとても好きです。
あの頃、必ず添い遂げると決意していた恋は大人となった今では「若気の至り」「良い思い出」となっている方は多いと思いますが、この映画はまさにその若かりし時を思い出させる映画だと思います。