「面白かった」水のないプール ツネさんの映画レビュー(感想・評価)
面白かった
・破天荒なイメージが強い内田裕也が鬱屈を抱えた陰気な中年を演じるのがピタッとはまっているっていうのが、まず何とも言えない魅力を感じて、始終サスペンスがあって良かった。
・時代のアイテムが良かった。切符を切る仕事、クロロホルム、しゃぼん玉、ジンジャエールという言葉を久しぶりに聞いた。手作りのマスクも良かったし、一軒家の女性の部屋の間取りとか、昭和の感じも良かった。
・実際に窓からクロロホルムを注射器で噴射したらどれぐらいの感じになるんだろうと興味深かった。よく、ハンカチに湿らせた程度では眠らないらしいし、耐性ができるとかどうとかあったような気がしたので。また、カエルを人形ケースを遣って実験してるのが良かった。
・内田裕也が一軒家のウェイトレスの家から事に及んだ翌朝に、吉野家でさわやかな朝だねぇといったのが良かった。やっぱりやめときゃ良かったとかって思うのかなと思ったけど、そんな事なかった。あそこであぁ普通の人じゃなくて本物だったんだと思えた。自分の存在に気づいてほしいと思われる朝食の準備とかが余計に狂気じみてて良かった。最終的にポラロイドカメラで撮影してたのを職場で観てるのも凄い。時代なんだけど既婚者っていうのも。
・これをしたから金を得られるから計画を立ててっていう利益を得ようとかそういう意図のない今感じる閉塞感をどうすればいいのか、あぁこれだ、っていう感情の赴くままの行動っていうのは理解できないけど何かわかるなぁって思えてよかった。映画ならではの喜びという感じがした。
・水のないプールとそこにいつもいるしゃぼん玉を吹いている女の存在がありえなぁーって思ったけど、その組み合わせが本筋と関係ないのかあったのかと考えさせられた。
・最終的にウェイトレスの女が起訴を取り下げると警察に申し出た時、そんな事あるのかと思ったけど、改めて考えると変な人ばかりの映画だったんだからあるか、と思った。他の人に起訴されなかったのかなとか、細かい事を考えているのが馬鹿馬鹿しくなる傑作だった。当面、頭から離れなさそう。