「共感対象不在」ミスター・ミセス・ミス・ロンリー odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
共感対象不在
ATGらしい、着想にしても撮影にしてもユニークさを第一とする作風が鼻をつく。サスペンス風でもコメディ風でもあるが中途半端、強いて言えば残念な人達の不条理演劇というところか。
それにしても主人公の心情を手書きの文字で伝える演出には戸惑う、小説様式の借景であれば映画人の自己否定、自虐性にも思える。
若干21歳の女優が原案、脚本、製作、主演まで、そこまで突き動かしたものは何だろう。本編よりも製作に至る真相の方が興味深い。
原田さんという女優は若くして名だたる監督たちに可愛がられ育てられたのだが必然性のない露出(興業的には保険だが)に躊躇しないことが女優魂と植えつけられたのだろうか、太宰や三島文学にも感化されたというが性に憑かれたオスたちの詭弁の産物にも思える。そんな大人たちの俗物性を見抜いたのか、彼女が外見や所作ではなく内面的な才能の自己実現にベクトルが傾いたとしても不思議ではない。
映画の出来としては灯火に寄りつく虫の生態観察日記の様で珍しさはあるがどうにも感情移入できず戸惑いしか残らなかった。
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