マルタイの女のレビュー・感想・評価
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若き西村雅彦さんが準主役級の活躍
この映画、レビューの評価はあまり良くないのだけれど、私は十分に面白かったです。
伊丹十三さんが、自分の襲撃事件の自身の体験を脚本に反映しているから、かなりリアルに感じます。
若き西村雅彦さんが真面目で優秀な刑事役。準主役級の活躍で、ハマリ役でした。
主役の宮本信子さんが、クライマックスの襲撃事件で命拾いした後、銀座を走る車のサンルーフを開けて、上半身を晒しながら「私は今生きているー!バンザーイ」と喜び叫ぶ場面は、襲撃を受けた伊丹監督の実感が反映していると思いました。
カルト的な集団による理不尽で執拗な暴力の怖さも、かなり厳しく描いていましたね。
つまらなさにショック
伊丹十三もこんな駄作を作ってたんだなと。マルサの女」を初めとする傑作を愛する身としては非常に残念だった。劇場公開時に見逃してたのだが、見ないままでいればよかったと後悔した。
ギャグ&シリアスのギャグが全然面白くない。滑ってる。満員に近い劇場でもクスリとするこえすら上がらない。
元来ギャグ&シリアスはバランスが難しい。この映画の場合はつまらないギャグによってシリアスシーンの緊張感を削いでいる。
また無駄なシーンも多い。「夢オチ」のシーンとか。あるいは犯人の逮捕シーン&自供シーン、あれは必要か? この映画は「マルタイの女」だろ。犯人の苦悩とか関係あるか? ラストのあれも気が利いてると思ったんだろうか。超絶的にダサいだけだ。
無駄なシーンが多いため敵からの攻撃が遅すぎる。しかもだ、「その攻撃有効か」というのが頻発してる。最後のほうで車に乗った女優を襲うところ、あれなんであのまま犯人グループは帰っちゃうの? 崖から突き落とせばいいじゃん。刑事は倒れてるし。意味がわからん。
細かいこと言うと「非番の刑事が拳銃持ってるか?」とか「護送車の窓がそんなんで割れるか?」とかあれこれ出てくる。伊丹十三と言えばディテールのこだわりに定評がある人だと思ったが。
伊丹監督らしく自身の経験をユーモラスにエンターテイメント作品に昇華させているのは流石です。
2月21日(金)からTOHOシネマズ日比谷さんで開催されている「日本映画専門チャンネル presents 伊丹十三 4K映画祭」(監督作品を毎週1作品、計10作品上映)も遂にラスト!そして完走!最後の作品は『マルタイの女』。
『マルタイの女』(1997/131分)
伊丹十三監督10作品目にして遺作。
『ミンボーの女』(1992)公開直後に同作を快く思わない組関係者に襲撃された際に自らが警察の警護対象者(=マルタイ)になった経験から着想された作品。
すでに海外ではケビン・コスナー主演『ボディガード』(1992)、クリント・イーストウッド主演『ザ・シークレット・サービス』(1993)などの傑作が公開されていましたが、伊丹監督らしく自身の経験をユーモラスにエンターテイメント作品に昇華させているのは流石です。
主人公・磯野ビワコ(演:宮本信子氏)の命を狙う側に当時社会問題なっていた新興宗教を選ぶところが社会派監督の真価を発揮、実に攻めていますね。
本作では三谷幸喜氏が初期段階に脚本に参加。
伊丹組の常連に加えて三谷組の常連、西村雅彦氏、近藤芳正氏らが新たにキャスティングされているのも新鮮ですが、伊丹監督からちょうどバトンを受け継ぐかたちで同年『ラヂオの時間』(1997)で三谷氏が監督デビューしたのは運命的なものを感じますね。
残念ながら本作が監督の遺作。
監督デビューの『お葬式』(1984年)から本作までの約10年は、バブル景気前の高揚感にはじまり、狂乱のバブル好景気に踊り、バブルが弾けて急速に日本が停滞した超激動期。
常に独自の感性で「お葬式」「グルメ(ラーメン)」「マルサ」など先見性、メッセージ性がある題材を時代の空気に合わせて選好、演出方法など試行錯誤しながら、年に1本ペースで製作、いずれもがヒット若しくは世間の興味を引いていたのは、尊敬の念を覚えます。
もし監督が今でもご存命でしたら果たしてどんな作品を撮り続けていたでしょうか。
数多の社会問題に鋭く迫りつつ、娯楽作品として分かりやすく表現、耳目を集めて作品を通じて世の中が良い方向に向かうことが多々あったかもしれませんね。
作品は死なず
奇妙に感じた
伊丹十三という監督は常に悪の権力に対して怒りをぶつけるというか、こいつらは こんな悪いことをしているぞ、それに対抗するにはこうだ!・・って映画を作ってきた。マルサの女もミンボーの女も大病人も。しかしこの作品はどうだ?ストーリーのほとんどが西村を使ったギャグ。芸能界の裏話に費やされている。新興宗教じゃなくてもヤクザでも何でも会社でもやるだろうって一般的な悪を描いてしまっている。これは監督が本当に作りたかった作品ではなく、不本意な作品ではないか?という印象を受けた。彼が本当にやりたかったのはやはり 新興宗教 ならではの悪・・ 無理な勧誘、洗脳、無理な献金、脱会させない・・そして新興宗教と政治家、警察とのつながりを暴く、さらには どうやって脱会させるか、どうやってそいつらを追い詰めるか・・というようなことをやりたかったんじゃないだろうか?そしてそれを描こうとして企画してるうちに あの事件が・・あれを自殺だと信じているファンは皆無であろう・・・なんてことを思った。
この作品が映画として面白いのは 中盤まで。裁判シーンに向かっていくところから急につまんなくなった。
俳優陣の名演ぶり
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女優の宮本が殺人現場をたまたま目撃し、裁判で証言する事になる。
事件の犯人はカルト教団で、宮本は命を狙われかねないので、
刑事の西村らが警護として常に行動を共にする。
そんな中でも教団の刺客は次々に放たれ、宮本は愛犬を殺される。
宮本自身も何度か殺されかけるのだが、西村らの必死の警護により助かる。
さらに不倫をしている事をつかまれ、教団から直接交渉されたりもする。
さすがに怖くなり証言をやめようかと考え始めた宮本だったが、
教団の弁護士にプライドを傷つけられ、逆に意地になって腹が据わる。
証言の日、護送の警察車両を教団のメンバーが襲い火炎瓶が投げ込まれるが、
それでも西村らの必死の対応により助かり、証言台に立つ。
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女シリーズの最後の作品。
ここ1ヶ月ほどで続けざまに見て来たが、どれも面白かった。
宮本を初めとし、役者がいつも大体同じなので、
すっかり贔屓の劇団の舞台を見ているような感覚になって来た。
そして各名優達の演じるキャラも毎回変わるので、その対比も面白い。
この作品では宮本に加え、西村の役が際立っていた。
刑事魂を持ち、不器用ながらも忠実に仕事をこなす男。
そして舞台に上がるハメになったり、どこか三枚目的な雰囲気もある男。
難しい役どころだとは思うが、素晴らしい演技力だと思った。
それから新興宗教は明らかにオウムを意識していた。
しかもオウムってセリフが出て来るシーンもあった。
こうして腫れ物に触る部分が、伊丹監督の魅力だなあ。
なお証言の時まで警護が必要な人の事を、マルタイというらしい。
ラーメンのメーカーではない(場)
社会風刺の効いた伊丹テイスト満載のコメディ
もう何作も作品を撮っているとその監督のテイストが出てくる。北野武作品も然りですが、俳優陣も常連さんが増えてきてなんとかファミリーと呼ばれたり、伊丹十三作品にも、明らかな常連さんがいらっしゃる。
伊丹作品はほとんど見ているが、どれも飽きのこないストーリー展開で、役者の表情もとても豊かで、宗教や暴力団など際どいテーマを扱っていても、シリアスさを感じさせず、痛快な社会風刺コメディへと昇華させている。本当に唯一無二の監督さんでした。
本作は、今まで観た伊丹作品より風刺にもあまりキレはなく、コメディタッチな場面もあまりくすりとはしなかった。
字幕と共に場面転換されるなど、ストーリーに引き込まれはするけど、伊丹作品に顔馴染みの俳優さんたちばかりだと、時々他の作品との違いが見分けられず、本作全体の印象が薄まってしまうという感想を抱いてしまう。
しかし、伊丹十三の創作意欲、創造力はとても独創的でもっと撮り続けて欲しかったし、まだまだ彼の映画を観たかった。
気骨のエンタメ
日本映画専門チャンネルで鑑賞(4Kデジタルリマスター版)。
実体験を優れたエンターテインメントに昇華してしまう伊丹十三監督の手腕には唸るしかない。映画人の鑑だな、と…
テンポ良く編まれた物語は、サスペンスとしてもコメディーとしても面白く、伊丹節全開の演出に引き込まれました。
最後のビワコのセリフは伊丹監督の気骨を代弁しているようで、本作公開後に亡くなられたのが本当に残念でならない。
カルト教団“真理の羊”
拳銃で撃たれたときのドギツイ描写にはびっくり。血の噴出し方も異常なのだが、映画・演劇をモチーフにしているため仕方がないのかもしれない。
『ボディガード』のパクリっぽいところや、所々色んな映画の影響を受けていそうな作品。カルト教団は完全にオウム真理教をヒントにしているのですが、台詞の中に「オウム真理教の麻原云々」とあり、一緒じゃないとアピールしている辺り、『ミンボーの女』でヤクザに狙われたという反省があるのかもしれない。
証言を断念させるためビワコの不倫をマスコミに流すと脅されても動じなかったところでは、ちょっと感動。不倫相手の津川雅彦がまた美味しいところをかっさらっていく・・・保身よりも正義を選ぶなんてのは素晴らしいけど、実際にはそんな男はいないでしょうね。それよりも、カルト弁護士(江守徹)が現れるのなら、テープレコーダーくらい用意してもらいたいもんだ。
ラストで裁判所に向かうビワコと刑事二人。山本太郎たちがバイクで追跡するシーンはちょっとやりすぎ。そんなの無理でしょうに。
途中、中だるみがあったのも残念。もうちょっとコンパクトにしてあったら良かったなぁ~
とても面白い
見せ場満載で次々面白い。これまでと違って宮本信子が制度や運命に翻弄される側だった。おっぱい丸出しのコスチュームが、偽物だけどそれでも目のやり場に困る。
西村雅彦が逮捕術でエジプトの兵の格好で敵を撃退するところが面白かった。確かにオウム暗殺説があったけど、そうなっても仕方がないほど痛烈に批判的に悪として描いている。
天才の男
思い出しレビュー8本目。
『マルタイの女』
女優のビワコは殺人事件を目撃、裁判で証言する事を発表する。事件の裏には宗教団体が絡み、ビワコを守る為、二人の刑事が護衛に就く…。
警察用語で、護衛対象及び対象者の事を指す“マルタイ”。
『ミンボーの女』公開時、暴力団に襲撃された伊丹十三監督が“マルタイ”となり、その経験がベース。
また、伊丹監督の遺作としても知られている。
伊丹監督のいわゆる“○○の女シリーズ”では比較的人気が低い気もするが、知られざる世界を勉強になるほど分かり易く、テンポのいいユーモアや宗教団体など社会的問題も併せ、本作も見事なエンターテイメント。
今じゃ2時間のTVドラマでも耳にするが、“マルタイ”という言葉を初めて知った。多分、本作を機に知られたんじゃないかな。
マルサ、ミンボー、マルタイ…、ホントいつもいつも印象的な題材やタイトルを残す。
伊丹監督初の殺人事件モノだが、サスペンスというよりむしろ、マルタイ対象者のビワコと護衛の刑事二人のやり取りがほぼメインと言っていい。
大女優オーラのちょっと高慢なビワコ。
そんはビワコのファンである近松。
堅物真面目な立花。
やはり、立花を演じた西村雅彦がいい。
今泉くんの時とは180度違う堅物刑事。が、かえってそれが笑いを誘う、さすがの個性派。ビワコからの突然の指名で舞台に立つ事になるガチガチの表情と演技と雄叫びは爆笑モノ。
はっきり言って、ビワコとは度々衝突。
でも時には身体を張って守る。カッコいいぜ、今泉くん!(←違う!)
証言すると発表してから、問題の宗教団体からあからさまな嫌がらせ。
愛犬が殺され、不倫してた事まで暴露され…。
周囲からバッシングの嵐。
当然仕事も減っていき…。
勇気を持って正しい事をしようとしてるのに、何でこんな辛い目に遭わなきゃいけない…?
宗教団体のモデルはまず間違いなくアレで、実際にも、いやもっと、陰湿な事をしてたかと思うとゾッとする。
ビワコと刑事二人の友情。
劇中でビワコが主演した舞台劇の迫真さ。
クライマックスの意表を付くカー・アクション。
果たしてビワコは、無事証言出来るのか…?
オチもユニーク。
ホント、伊丹十三は日本映画稀代の天才監督の一人だよ。
何で彼が自ら命を絶たなければならなかった?
今だって、伊丹監督の作品を見ていたかった。
いまいち
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