マルサの女2のレビュー・感想・評価
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続編的な映画を夢見ても叶わないことが残念
テレビで観たことがあるけれど、初めて劇場で観ました。
改めて名作だと思いました。
コメディ映画としては、前作の「マルサの女」の方が完成度は高いとは思う。
この映画では、途中で主役の宮本信子さんが長時間消えてしまうし、伊丹十三監督の軽妙さが途中で薄くなってしまうのが不思議。
クライマックスも、主人公視点ではスカッとしたものがなく、消化不良で終わってしまう。
しかし、フィクションとは言え、バブル経済の最盛期に、バブルのカラクリや裏側や闇を突っ込んで描いている。また、オウム真理教の事件よりもかなり前に、宗教法人の擬似権力性と金の問題と暴力を結びつけて描いている。
現代的視点で観れば、その2つの点だけでも、映画のテーマや構造的には非常に優れていると思います。
中途半端な終わり方を考えても、伊丹十三監督は、後日に「マルサの女3」的な映画を製作して、この映画で描いた色々な社会的問題を、映画として全て回収するつもりだったように感じました。
何故にそれをしなかったのかは分からないし、結局、それを夢見ても叶わないことが非常に残念だけれども。
と言うわけで、コメディ映画として期待して観ると少し肩透かしになるけれど、時代の鏡としての視点で観ると、非常に良く出来ている名作だと思います。
三國連太郎氏演じる鬼沢鉄平、完全に本作の主役でしたね。 意気軒高とバブルの波に乗るが、最後は黒幕たちの捨て駒になる男の栄枯盛衰、悲哀が滲み出ていました。
2月21日(金)からTOHOシネマズ日比谷さんで開催されている「日本映画専門チャンネル presents 伊丹十三 4K映画祭」(監督作品を毎週1作品、計10作品上映)も早いもので4週目。本日は『マルサの女2』(1988)。
『マルサの女2』(1988/127分)
前作『マルサの女』(1987)から1年後の公開。
伊丹監督曰く「前作はマルサの入門」と語るように本作では、バブル最盛期で狂乱する東京で、汚職政治家、地上げ屋、新興宗教、建設業者、商社、銀行の魑魅魍魎が跋扈する悪くてセコイ奴らのオールスターをリアルに、かつコミカルに描いています。
中でも彼らが冒頭で高級タラバガニを下品に食べるシーンが、彼らの本質や性格を一発で表現、食のシーンにこだわる監督の真骨頂、お見事です。
本作では『悪い奴ほどよく眠る』のように最終的には諸悪の根源を絶つことができず、スカッとカタルシスを感じることはできませんが、その後リクルート事件(1988)やサリン事件(1994)が発生、本作と現実が地続きのように感じますね。
前作に引き続き国税局査察部(マルサ)のメンバーも魅力的ですが、若き東大出身大蔵省キャリア官僚を演じた益岡徹氏の若々しい演技も良いですね。
特に三國連太郎氏演じる鬼沢鉄平、完全に本作の主役でしたね。
意気軒高とバブルの波に乗るが、最後は黒幕たちの捨て駒になる男の栄枯盛衰、悲哀が滲み出ていました。
この当時の三國氏は『利休』(1989)『息子』(1991)『ひかりごけ』(1992)『夏の庭 The Friends』(1994)など名作に出演、円熟味を増した演技でまさに怪優でしたね。
板倉亮子の存在感が薄くないか?
かくして世に脱税のタネは尽きまじ
国税庁査察官が主人公の大ヒット脱税ハードボイルドの第二弾は、宗教法人と政治資金をテーマなのは面白いけど、その分ハードルが上がってスッキリしない終わりでした。お話しそのものはテンポよく、政治家がからんだ地上げと利権と脱税のつながりを実にうまく説明している脚本が巧みです。グロとエロ描写は監督の好みだけど、ストーリーの焦点が宗教法人を隠れみのにする脱税プランナーなんで、ハードボイルドよりもピカレスクロマン的な感じです。後半からマルサチームが大活躍するけど、巨悪は逃げ切ったみたいだし、脱税プランナーの狂気の哄笑が続くエンディングもイマイチ腹落ちしません。パート3につなげるつもりだったかもね。役者では、脱税王の三国連太郎の妖気漂う、だけど生理的にちょっと受け付けないほどの怪演ぶりでした。津川雅彦は、出番は少ないけど泣き落とし尋問術の語り口がうますぎて笑っちゃいました。
やはりいい味がある
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宗教団体からの莫大な資金をバックに、地上げで目茶苦茶してる三国がいた。
マルサの女宮本がソイツらを捜査するため、宗教団体に偽装入信する。
そして夜中に部屋を抜け出して秘密の入り口を発見、後日査察に入る。
確保後、取調室で取り調べていた三国がスナイパーに狙撃される。
間一髪それを救った宮本、そして三国は全てを話し始めた。
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女シリーズはやっぱり面白かった。
しかし伊丹監督の作品は独特の味があっていいよな。
って、おれは志村か(場)。いいよなおじさんか(場)
チャレンジャー
タイムリーに、かつ皆がなんとなく思っていても、なかなか風刺にできないテーマに、真っ向から焦点をあてた作品。
時代だなあ。
そして、伊丹監督だからこそできた作品。
ただ、ただ、圧倒される。
国家公務員が格好良く見えてしまった。
下手なスパイものより、ドキドキハラハラ。
鬼籍に入られた方や、今の映画やドラマであまりお見掛けしない方も(私が見かけていないだけか?)たくさん出ていて懐かしい。
加藤治子さんや三國さん、上田さんにぞくぞくするなど、芸達者がたくさん出ていて、興奮する。
監督も含めて、それぞれの役者や各スタッフが、お互いを活かしながら、ご自分のキャラ・持ち分をのびのびと楽しんで務めていらっしゃるのではないかと思ってしまう、それぞれのはまりの良さ。
(加藤治子さんはTVドラマで、品の良いおっとりして慈愛に満ちたお母さま役のイメージを持っていたから、この毒々しさにあてられてしまった)
(上田さんも、小市民のイメージがあったから…)
(三國さんはこういう役をさせたらもう圧巻。憎々しくって、ふてぶてしくって、恐ろしくって、コメディアンで、これだけエネルギッシュなのに空虚…)
他にも他にも。
皆、役者ですね。
古い映画なので、細かいところでいえば、金庫室へ至る階段等、失笑を誘う設定はある。
けれど、全体的に見れば、
この緊張感とデフォルメ・笑いのバランス。
聖と俗の顔の使い分け。
しかも、舞台(セット)の中で繰り広げられる作りのもの世界のようでいて、すぐ隣で起こっている現実感も失われていない。
バブル。
理不尽な社会の仕組みに虚しさと憤りを感じると同時に、
人は何のためにどう生きるのか、
なんてことを改めて考えてしまった。
(前作未鑑賞)
バブル狂騒の喜劇で且つ悲劇。大好きだ。
天の道教団
お金に執着する日本人の醜さを風刺する伊丹十三監督の映画手腕
ヒット映画2作目の難しさ
国税庁査察部の面々が、地上げの黒幕となった宗教法人に迫る物語。
邦画私的評価の1位「マルサの女」の続編です。ただし、本作の評価は4にしました。
理由はただ1点。カタルシスを得にくいラストだったこと。これに尽きます。
映画全体としては、前作に引き続き高評価です。地上げの様子、脱税のテクニック等をテンポ良く織り交ぜクライマックスに雪崩込みます。第2弾ということもあり、敵役が無理に巨大化した印象を受けました。宗教法人、暴力団、地上げ屋。
ただ、カタルシスを得られないラストの為、巨大な敵の不愉快さだけが残り、とても後味が悪くなりました。
伊丹監督。少し拘り過ぎましたかね?
日本の闇の自画像
"マルサの女" シリーズ第2作。
レンタルDVDで鑑賞。
宗教法人を隠れ蓑に悪質な地上げと巧妙な脱税を働く鬼沢一家と、その裏で蠢く権力者たちに立ち向かう国税局査察部、通称マルサの活躍を描いた社会派エンターテインメント。
お馴染み「マルサカット」を振り乱しながら、板倉亮子(宮本信子)は今日も行く。あの手この手を使って大型脱税のカラクリに迫っていきました。しかし、地上げ屋と政治家が複雑に入り組んだ巨悪の全貌は、一筋縄では掴むことが出来ず…
様々な妨害と権力に阻まれ、手掛かりを掴んだと思ったら後一歩のところで参考人が消されてしまう…。当の鬼沢(三國連太郎)さえ、ヤバくなったら切り捨てられる蜥蜴の尻尾でしかなかっただなんて…。日本の闇とはあな恐ろしや!
まさかのラストに呆然。フェンス越しに地鎮祭を見ながら歯噛みする板倉の表情がなんとも言えぬ余韻でした。
※修正(2023/03/01)
●バブルの遺産。
『マルサの女2』
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