劇場公開日 1987年2月27日

「山崎努と宮本信子・2人のキャラクターの濃さ」マルサの女 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0山崎努と宮本信子・2人のキャラクターの濃さ

2023年6月2日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悪人の戯画化に特別な才能のある伊丹十三監督。
アクの強さでは天下一品!!
人間の本性を暴く(性悪説?)の伊丹十三監督。
人間の醜い面を殊更に強調することにより、権藤(山崎努)は、
強烈でアクが強いキャラクターになりました。

対する彼を取り締まる国税局査察部(通称マルサ)に勤める
板倉亮子(宮本信子)は公務員の職務に熱心な普通の女性。
普通だけど《普通の普通》とは一色も二色も違う。
その仕事熱心さの情熱と、権藤の金を隠して脱税する執念。
2人はある意味で似た者同士なのかも!!
だから権藤は板倉に親近感を覚える・・・その熱意が好き・・なのです。

伊丹十三監督の作品は普通の監督が題材にする
「恋愛」「冒険」「ミステリー」「コメディ」のどのジャンルにも入らない。
強いてジャンルにも嵌めれば、「ブラック・コメディ」か?
「世相滅多切りコメディ映画」
でしょうか!?
世間に起こる「事件」や「世相」
たしかに「世相」を取り上げた作品が多いと思う。

この「マルサの女」を撮ることで、
人は金の亡者となり、なぜ儲けた金から税金を払うことを嫌うのか?
権藤の税金逃れは半ばゲームのように複雑化をしていき、
こんな苦労をする位なら、正直に納税した方が得策だと思えてくる。
伊丹十三は国税庁査察官に興味があったのだと思う。
彼の好奇心は無限で、誰にも止められない。

身体を2つに折る位に歪めて歩く。
確か愛人の前では脚の上げ下げや、蹴る動作をしていた。
(詐病なら身体障害者への差別とも取れるくらい酷いと言えば酷い)
愛人への扱いも(女優への扱いも、)
今現在ならハラスメントと断定されるかも知れない。

だがしかし、このヤバさが伊丹十三作品の魅力のひとつなのだ。
サービス精神、
スパイスのかけ過ぎ、
やり過ぎ!!

そしてもうひとつ。
奥さまの宮本信子を魅力的に撮ることは、驚く程だ。
マルサの板倉亮子は輝いている。
仕事に燃え、生き甲斐を感じ、猛進する。
宮本信子は伊丹十三の好きな《一番の素材》なのだ。
見抜いた伊丹十三も凄いが、七変化を演じた宮本信子も凄い。

伊丹十三没後25年。
伊丹十三作品の4Kデジタルリマスター版が制作されて、、
日本映画専門チャンネルで放映されました。

キャッチコピーは、
「日本映画に伊丹十三が足りなすぎる!!」

彼の実現しなかった次回作は、日本で有名な宗教法人を題材にしたもの、
だったそうです。

琥珀糖
LaLaさんのコメント
2023年6月4日

琥珀糖さん
「マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー」に
共感&コメントをありがとうございました。
楽しい作品でしたね。レビューはされていないのですね?

「マルサの女」懐かしいです。
観ましたがレビューしていなくて(^^ゞ
琥珀糖さん 印象的なレビューでした。
宮本信子さん好きなんです。
伊丹監督作品、確かにアクが強いですね(^^)/
そう、もう25年経つのですね。

LaLa